2008年7月23日水曜日

映画『ソイレント・グリーン』 ・・・未来の加工食品がとんでもないことになっています

●原題:Soylent Green
●ジャンル:ドラマ/ミステリー/SF/スリラー
●上映時間:97min
●製作年:1973年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:リチャード・フライシャー
◆出演:チャールトン・ヘストン、エドワード・G・ロビンソン、その他大勢
◎評価:★★★★★★★☆☆☆

 ごっついトラックが前面に付いたパワーショベルで大量の人間すくい上げ、その前をチャールトン・ヘストンが逃げ惑うという強烈なイラスト。結構古いけど何かと耳にするSF映画。

【ストーリー】
 西暦2022年。地球は人口が爆発的に増加した上に温暖化が進み、極度の二極化と食料不足という最悪の状況を迎えていた。特権階級のみが贅沢な食材が得られ、一般人はソイレント社が開発した加工食品ソイレント・グリーンが配給されるのみ。
ある日、ソイレント社の重役が殺害される。事件を担当することになったソーン刑事は陰謀絡みの殺人事件であることを確信し、同居人の知恵袋のソル老人の協力を得て捜査に乗り出す・・・・・・。


ソイレント・グリーンの配給量を巡って大暴動が発生。パワーショベルで群集をかっさらっていくトラック登場。

【感想と雑談】
 かなり驚きの世界である。

 ハリイ・ハリスンというSF作家による作品『人間がいっぱい』をベースにしているそうなのだが、正に今現在ドンピシャな設定になってるのが凄い。当時は未来に対する警鐘も込められていたかと思うのだが、現在の環境汚染や格差問題が深刻になっている時代にはグサリとくる内容だ。

 いきなり西暦2022年という時代設定がリアルすぎる。科学の発展の代償として温暖化や公害化が進み、動植物も絶滅の危機に陥り、街には失業者が溢れかえっている・・・。現実が抱えている未来像と変わりはないじゃないか。ホントに2022年を迎えるとこれと同じことが起こりそうだ。

 本作は、刑事と老人が食糧難から開発された加工食品ソイレント・グリーンに関する陰謀を暴くまでが描かれる。これは食料品の偽装問題も先取りしてるのか?!

 チャールトン・ヘストン演じるソーン刑事と、エドワード・G・ロビンソン演じるソル老人は過酷な生活を強いられている。なんとかボロ家には住めているが、年中暑くて敵わんとグチを溢してばかりだ。しかし、まだ恵まれている。外に出れば玄関前の階段には大勢のホームレスが蹲っているのだ。大広場では加工食品のソイレント・グリーンが僅かずつ配給されている。とんでもない世界だ。因みにソイレント・グリーンは、緑色で四角形のプラスチック板みたいな形状をしている。ちっとも美味そうに見えない。

 捜査の為、犯行現場の屋敷に訪れたソーン刑事は、食料品や酒を漁り、袋に詰めて家に持ち帰る。警察の職権乱用だが、こんな時代マジメに捜査する方が不自然に見える。それほど深刻なのである。そしてその後、帰宅してからソル老人と至福の時を過ごすのだ。レタスやリンゴを本当に美味しそうに食べる2人。肉料理に至っては死にそうになるくらいだ。

 やがて貧困層による暴動が発生しソーン刑事は対応に追われることになる。出動するトラック部隊(パッケージイラストは完全釣りです)。その一方で、ソル老人は遂にソイレント・グリーンの驚愕の事実を知ることになるが、世の中に絶望したのか自らホームへと向かってしまう。ホームとは人口抑制の制度によって高齢者を安楽死させる施設のことだ。

 ホームでは薬物を投与され、ある式典の中で死を迎えることになる。この様子は目を見張るものがある。それはソル老人を囲むように、まだ美しかった頃の大自然の映像とクラシック音楽を流すという式典。この死と引き換えることで体験できる様はかなりの見せ場だ。

 ちなみにソル老人を演じたエドワード・G・ロビンソンは本作が遺作となったそうだ。なんとも感慨深い名シーンとなってしまった。

 駆け付けたソーン刑事は辛うじてソル老人からメッセージを受け取り、その後に遺体を積んだトラックに密かに便乗し処理場へと向う。そこでソーン刑事は驚愕の事実を目の当たりにするのだ。

 既にネタはバレバレになっているだろうし、肝心なクライマックスも昔風の淡々とした展開で盛上がりに欠けるし、画面の暗転も急激にやってくる。物足りない締めくくりに感じる。

 でもこの作品はそんなネタに及ぶまでに酷くなってしまった環境を、今現在に照らし合わせて観ることに価値があるのではないかと思う。嫌な未来像だけど、現実は近付いているから。

 そういえば、チャールトン・ヘストンも亡くなってしまった。昔のスペクタクル映画のヒーローといえばの存在だったけど、本作では等身大のややアンチヒーローな役を演じていた。


オープニングでは人類が長年犯してきた環境破壊の様子を短いカットの繰り返しで映していく。悲しいことに山手線の猛烈ラッシュの様子も挿入されているのだ。


ボロ家に住むソーン刑事とソル老人。2人とも顔や首筋に汗滲ませたりして、何も言わなくても暑苦しさが伝わってくる。ソル老人は自家発電のため自転車を漕ぎまくる。


犯行現場は特権階級の屋敷。クーラーが効いていて食料も酒も何でもあるぞ。でも一番身に染みるのはバスルームで好きなだけ水が浴びれることだ。


安楽死施設ホームでの壁一面に映し出される大自然の様子。それまで荒んで息苦しかったのとは正反対に透き通った美しい映像が流れまくる。感動。

© 1973 Supplementary Material Compliation
【出典】『ソイレン・トグリーン』/ワーナー・ホーム・ビデオ

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14 件のコメント:

  1. はじめまして。
    大の映画ファンとして
    このブログを尊敬します!!
    わたしの知らない映画を
    詳細に紹介してくださって
    びっくりです

    なんとも笑えない映画ですよね…

    またちょこちょこみにきますね
    あ、わたしのブログにリンク貼らせてくださいませ!!

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  2. >ごんたん様
    こんにちは。はじめまして。
    コメントありがとうございます!
    たまにはこういうシリアスな映画も
    いいものですね。
    ポリシーもない状態でメチャクチャに
    なってますけど、こんなアホなブログで
    よろしければ(笑。
    これからもよろしくお願い致します。

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  3. うわ~、なんだか凄そうな映画ですね。たぶん未見です。今度借りてみます。チャールトン・ヘストンって、ほんとはどっちなんでしょうね?ヒーローだったの、「ベン・ハー」くらいしか記憶がなくて、最近はマイケル・ムーアにさんざんいじめられてた印象が強くて…
    ご冥福をお祈りします
    応援凸

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  4. 「ソイレントグリーン」とはかなり懐かしくシブいところを攻めてきますね。
    敬服しました。
    昔観た映画でも観直してみると以前とかなり印象が変わっていることもよくあります。
    時間を見つけてもう一度観てみたい気になりました。
    応援ポチ!!

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  5. >whitedog様
    ホント凄いですこれ。
    この夏、蒸し暑い部屋でこれを観ると、
    そらもう映画の世界と同化できます(笑;。
    ヘストン、ムーアに責められてましたね。
    ヨボヨボだったのでちょっと可愛そうに
    なりましたけど。
    ベンハーは最高でしたね。あの辺りでは
    十戒なんてのも良かったです。パニック
    ものも幾つかありましたね。
    クライシス2050に出た時は・・・(笑;
    応援どうもです♪

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  6. >快福や様
    こんにちは。コメントありがとうございます!
    さすがご存知でしたか(笑;。
    これは昔、東京12チャンネルの昼のロード
    ショー(?)で流れたのが印象に残ってたの
    ですよ。
    今回初めてノーカットで観ました。
    古いのですが、今観ても斬新で良い作品だと
    思いますよ。
    応援どうもです♪

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  7. 私も見たことありますが、今の時代を正確に予想した怖い映画です。
    娯楽性を極力廃して絶望的な未来をリアルに描いたらしいですが、もうちょっと予算をかければ良いのになと思ってしまうのは私だけかな?

    応援ポチ。

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  8. >dai様
    おお、ご覧になってましたか!
    なんだか凄い映画を観てしまったと、
    後からジワジワきてます。
    2022年なんてもうすぐですよね。
    同じくヘストンのオメガマンも最近
    リメイクされたので、ひょっとすると
    これもターゲットにされているかも
    ですね。
    話題がタイムリーすぎて危険かな(笑;
    応援どうもです♪

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  9. 昔のSFは暗かった〜&悲観してた。

    スターウォーズ以降、SFはスペースオペラになってしまうわけですが、やはりSFには未来を悲観しておいてもらいたいです。だってアカルイミライなんてつまらないじゃないですか^ ^(?)

    アホなコメント失礼しました。。

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  10. >kiona様
    コメントありがとうございます!
    ニューシネマ時代のガサガサで悲惨なSFでしたね。
    私も昔のSFを好んでよく観てましたが、最近にはない
    重みや魅力が全開だった気がします。
    今が悲惨なのでもう作りようがないのかもしれませんね(笑;。
    数少ないBlogger派ですね。これからもよろしくお願いします♪

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  11. 観ましたよ。嫌な未来像ですが、なんだかこんな世界に向かってそうで…
    いいなと思ったのは"家具"つきの家くらいかな?(笑)
    この作品もリメイク候補かもしれませんね。
    応援凸

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  12. >whitedog様
    観ましたか!さすがですね!
    ホント嫌な未来ですけど、もしそうなったとしたらぜひ家具つきの家はゲットしたいものですね。観た人にしか意味がわからないという(笑;。
    なんでもチャールトン・ヘストンが映画化を推したとか推さないとか。嫌な未来を当てたということではヘストンいい仕事しましたね。
    応援どうもです♪

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  13. BSの映画チャンネルでやるみたいですね。

    この頃のSFって科学万能じゃ無くって
    シニカルに未来を描いた物が多い気がします。
    オメガマンがリメイクされたから
    ソイレントグリーンもリメイクされても良いかも。
    遊星からの物体Xもリメイクというか
    前回の前の時間帯の話が映画化されましたからね。

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  14. >匿名様
    コメントありがとうございます。

    70年代のSFは名作多いですからね、リメイクのターゲットにされているかもしれません。オリジナルの気だるい空気が魅力なところもありますんで、よく考えてリメイクして欲しいですけどね。

    プロメテウスも、エイリアンの前日譚ですよね。最近流行ってるのかな??

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