2008年10月26日日曜日

映画『スキャナーズ』 ・・・こんな超能力が欲しいような欲しくないような

●原題:Scanners
●ジャンル:ホラー/SF/スリラー
●上映時間:103min
●製作年:1980年
●製作国:カナダ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:デビッド・クローネンバーグ
◆出演: スティーヴン・ラック、ジェニファー・オニール、マイケル・アイアンサイド、パトリック・マクグーハン、ローレンス・デイン、その他大勢
Flixster - Share Movies

 ちょっと色々と重なりまして、久々に映画ネタを更新することができました(笑;)。ハロウィンということでこんな作品を挙げてしまいました。SFホラーというよりSF変態ものに近いかもしれませんが、前回記事の【Atomik Harmonik - Turbo Polka】をBGMに読んで頂ければ多少はまろやかになるかと(^ω^)ノ

【ストーリー】
 カナダ。スキャナー(超能力者)による警備事業を売りにするコンセック社。ある日のこと公開実験中に凶悪スキャナーのレボックに襲撃され大事なスキャナーの頭部を木っ端微塵にされる。危機を感じたコンセック社のルース博士はレボックを倒すため秘密裏にスキャナーのベイルを出動させる。女性スキャナーのキムを仲間にし行く先々で攻撃を食らうが、なんとか撃退しながらレボックに迫るベイル。やがてエフェメロルという医薬品がベロックとコンセック社のライプ計画に結びついていることを突き止めたベイルは、その後に衝撃の事実を知ることとなる・・・・・・。

Flixster - Share Movies
【感想と雑談】
 たしかデビッド・クローネンバーグ監督の名前が初めて知れ渡った作品であったと思うがそのインパクトは今観ても健在。テーマはスキャナーと呼ばれる超能力者同士の戦いであるが、今時のヒーローもののようなカッコよさとか爽快感は皆無で、地味め(オッサン寄)なスキャナーらが苦悩しながらも淡々と活躍する様を描く。

 善スキャナーのベイル(スティーブン・ラック)とキム(ジェニファー・オニール)が、悪スキャナーのレボック(マイケル・アイアンサイド)の陰謀に立ち向かうのだが、どこにいっても閑散とした寒々しい風景がまとわり付いてるし、出てくる人物全員が晴れない表情をしている。こんな中での超能力合戦だ。

 利用されるのは遠隔で相手をスキャン(走査)し精神的にも肉体的にも変化を与える能力。スキャンをする側もされる側もごっつ表情や動作を激しくさせ攻防する。スキャンする際に相手の心の声がエフェクトかけすぎの歪んだ呻き声になっているのが不気味だ。能力がハイレベルになるほど肉体に与えるダメージもデカくなる。ベイルやレボック級になると鼻血が出ました程度では済まないようだ。

 有名な頭部を破裂させるシーン。以前にも同様の描写はあったが、本作での見せ方は強烈すぎ。堅物のスーツマンらが集うシーンで突然あんな様を見せられたらビックラものである。この後に『レイダース/失われたアーク』でナチス3悪人の頭部破壊を担当するクリス・ワラスが様々なパターンで試行錯誤したらしく、結果ダミーに仕込んだショットガンで頭部を下からブッ放したテイクが採用されている。散弾が内から破裂させる様が非常に生々しい。ダミーの頭部も凄くよく出来ていてCGでは味わえない職人業が光っている。当時の雑誌等では別テイク(たぶん爆薬で破裂)の写真も利用されていたようだ。

 当初このシーンは冒頭に置かれていたそうだが、テスト試写かなんかでいきなりのショックに失神者が出た為、ちょっと間を置いて後の方に持ってきているのだそう。しかし、これはどこに持ってきてもショックなシーンだと思うのだけど、どうなのだろう。
写真のリンク→コチラ(ちょっとエグイですよ)

 とにかくあの精神や肉体に対し偏執的なデビッド・クローネンバーグ監督なので、爽やかなんてことはありえない作品。スキャナーの存在は歪んだ精神力が肉体的に変化をもたらす究極のイメージという感じです。

 冒頭フードコートで悪口を言ってしまいベイルにスキャンされる老女は突然苦しみ出し床上でのた打ち回る。この時に短いスカートが更にめくれ上がってしまい、限界ギリギリ生足ドッキリとなるのだが、よく考えれば老女なのである。まさに歪んだ性的趣味が垣間見られるところか(笑)。カナダは内向的な気質が反映しているようで、ぱっと見同じに見えるアメリカとは映画の作りも違うようですね。

面白いのはスキャンは人間だけでなくコンピュータに対しても有効なところ。その際にコンデンサやらトランジスタやらが並ぶごっつい基板を舐めるように撮ったイメージが挿入される。時代である。また防御する側が急遽プログラムを破壊することで神経系が融合しているスキャナーにダメージを与えようとするのも面白いが、結局スキャナーの気合一発でサーバーが爆発。研究員が吹っ飛んでしまう。

 マイケル・アイアンサイドも本作から出てきたと思うが、声が既に重低音の渋さときていて存在感バッチリだ。素顔だけでも迫力あるのにスキャンする際に顔演技をかます姿。最強です。これに負けじとスティーブン・ラックもスキャナー演技でかます。ジェニファー・オニールは大人の美人でナイス。尋問する敵も彼女を見て「魅力的じゃねーかおい」と言い放つ。オッサンばかりの世界に嬉しい存在です。←写真がないのが残念(;;)

 最終的に医薬品エフェメロルが持つ副作用とそれを利用したライプ計画を巡りベイルとレボックは激突する。一応ベイルが勝利することになるが、その後二人にあることが起こり画面は暗転。これぞ肉体と精神の関係を究極に突きつめた結果になるのだろうか。とにかく後発のSFホラーに計り知れない影響を及ぼした作品であることは間違いないですね。

 エンドクレジットがコンピュータにスキャンする時のモニター画面のイメージまんまで粋。これにハワード・ショアの音楽が被さりますが、この絶望的な旋律がしばらく耳から離れません。



<オマケ>
 女性スキャナーのキムを演じるジェニファー・オニール様。他作品での美しいお姿です。かなりイケてます。


にほんブログ村 映画ブログへにほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ ←スキャナーといえば複合機だねと思われる方も一発応援クリックお願いします♪
ブログパーツ

10 件のコメント:

  1. クローネンバーグ&ハワード・ショア、この作品でコンビを組んでから、ほとんど一緒に作ってますね。リメイクの予定もあったようですが、延期になったのかな?頭部爆破シーンは今ならよりリアルなものになるんでしょうが、オリジナルの独特の雰囲気まで出るのかはちょっと疑問もありますが、観てみたい気もします。多分、レンタル版がないんですよね・・・ 面白いのに。

    マーズアタックは明日登場するかもしれません。おもしろいですよね。リーダーシップのある大統領もいいですが、徹底的におバカな大統領を観れるのも映画ならでは。現実がああだと困ったもんですけど。(笑)
    TBは、色々みたいですね。アメブロも出来ないとこもあるみたいで、相性の問題なのかな… とあきらめてます。最終的にはコメントにリンクさせていただいたりかな?
    いつも応援いただきありがとうございます。

    返信削除
  2. umetramanさん、こんばんは。
    この映画、確か特殊メイクが盛り上がるきっかけみたいになった映画じゃなかったですか?
    マイケル・アイアンサイドと頭部破壊はきっちり憶えてますので、やはり強烈な印象だったようです。その分映画全体の印象は薄れてるんですけど(^^;
    全体に顔芸の映画ですよね。それも物凄いテンションの。マイケル・アイアンサイド怖すぎ(笑
    実際の例が無いから、特殊メイクの手助けはあったとしても演技でスキャナーしてるっていう感じを出すのはやはり難しかったでしょうね。

    頭部破壊は爆発した後、顔の部分の皮が前垂れみたいに胸に垂れかかるのが少しの間だけど写ってるいて、なんとも嫌ったらしい感じを受けたのを憶えてます。あの頭部はumetramanさんが書かれてるように、作り物としてもよく出来てましたよね。この辺りの時代の手作り特殊効果って、わたしは大好きです。

    先ほどわたしの方にコメントを書いて頂いて、有難う御座いました。
    わたしも応援ポチしてきます♪

    返信削除
  3. >Whitedog様
    そうですね、このコンビの印象が強かったので、メジャー作品にハワード・ショアの名前を見つけた時はちょっと驚きでした。
    このコンビでのリメイクを観てみたいですね。やっぱり重たいのかなあ(笑)。特撮もCGでいくらでもリアルに出来きそうですが、どうしても軽くなりそうな気がします。これセル版は9000円近くするみたいですね。どんだけ高価!?
    あ、マーズアタック予定されてたのですね。失礼しました(笑;)。なかなか豪華な顔ぶれで好きな映画です。平気で死なせたりするのも潔かったりで。
    TB問題はこれから各ブログサイトに頑張ってもらいたいものですね。

    いつも応援コメントありがとうございます♪

    返信削除
  4. >薄荷グリーン様
     そうですね!特殊メイクの幕開けみたいな作品でしたよね。この後に監督も神格化しちゃって次のビデオドロームでは追っかけが大変だった思い出があります(笑)。そういえば色んなメイクアーティストが出てきましたよね。
     アイアンサイドは強烈すぎました。以降どんな映画で見かけてもスキャナーズを思い出すくらいですから(笑)。いい役者さんですね。
     頭部破裂の後って仰る通りに血糊と肉片で周りが大変になってると思うんです。でも次の引きの画になるとテーブル上が凄くキレイになってるんですよね(笑)。ダウトを探せじゃないのですが、観客ってこういうとこを気にすると思うので、ちょっと残念だなと思いました。でもあの澄ましたところにビチャーっとくる感覚はクローネンバーグならではですね(笑)。
     当時創刊されていたスターログというSF雑誌で、頭部破裂のメイキングが紹介されていたのですよ。瞬間を何コマかに分けて写真を並べていたのですが、立ち読みするには凶悪すぎる特集でした(笑)。凄かったです。

    いつも応援コメントありがとうございます♪

    返信削除
  5. スキャナーズ、思いだしましたw
    初めて見たとき、当時小学校3・4年生で衝撃的で寝る前に何回脳内リピートしたか。
    確か、2もあったような・・・・?

    返信削除
  6. >もじゃもじゃのっぽ様
    初めて観たのが小学校3・4年生の時!?
    それはまた強烈な思い出ですね(笑;)。
    まさか劇場で観たとか??脳内リピートしすぎて爆発しないように(笑)。
    これはシリーズ化されてますね。何作まで出てたかな。私も2までしか観ていないのですが、早くも失速もので、お約束の頭部破裂も安っぽかった気がします。

    応援コメントありがとうございました♪

    返信削除
  7. お久しぶりです。

    「スキャナーズ」ですか。懐かしいですね。
    ストーリーは思いっきり忘れてましたが、あの頭が「ポン!」って感じで吹っ飛ぶシーンは印象的で良く憶えてます。

    久々に見たくなりました、「ポン!」を(笑)

    応援ポチ

    返信削除
  8. >dai様
    どうも!お久しぶりです^^
    最近こういう懐かしい映画ばかり観てます。
    新作にはもう追いつけません(笑;)。
    この頃のクローネンバーグ作品は怪しさ満点で面白かったですね。やたら体が変形するようなのばっかりで(笑)。いい時代でした。

    応援コメントありがとうございました♪

    返信削除
  9. こんにちわ!

    あのシーン、エグイというより、なんか笑えてしまうんですよね。ある種、自分のなかの残虐性の指標のようです。

    このシーンから吉本の誰だったかな、忘れましたが "脳みそバーン!" のギャグが生まれたんでしょう、きっと。。

    応援バーン!

    返信削除
  10. >kiona様
    笑えましたか!?さすがです(笑)。
    クローネンバーグを笑って観られるなんて、最高じゃないですか~。
    なんとスキャナーズは吉本に影響を与えていたのですね。これは意外な接点です(笑)。

    応援コメントありがとうございまっす♪

    返信削除