2008年12月30日火曜日

映画『ゾンビ・ソルジャー』 ・・・傭兵部隊とナチスドイツのゾンビ兵士が対決するんだそうです

●原題:Outpost
●ジャンル:アクション/ホラー
●上映時間:90min
●製作年:2007年
●製作国:イギリス
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:スティーブ・バーカー
◆出演:レイ・スティーブンソン、ジュリアン・ワダム、リチャード・ブレイク、ポール・ブレア、ブレット・ファンシー、イノク・フォレスト、ジュリアン・リベット、マイケル・スマイリー、その他大勢(ゾンビ兵士)

 どうも!ご無沙汰しておりますm(_ _)m
 クリスマス前からちょっとバタバタしてしまい、勢いをなくしておりました(笑;)。今年はこれで終わりかなと思っていましたが、『ラスベガスをぶっつぶせ』と『ゾンビ・ソルジャー』をハシゴしまして、せっかくなので『ゾンビ・ソルジャー』を今年最後の記事にすることにしました(笑)。

【ストーリー】
 東ヨーロッパ。7人からなる傭兵部隊がある男を山中まで護衛する。男の目的は紛争地帯に発見された鉱物資源の調査だ。その土地を買い占めた企業から雇われたのだという。辿り着いた場所は山中にある古い地下施設。どこが鉱物資源よと首を傾げる傭兵らを尻目にズンズン突き進む男。奥の部屋で妙な装置を発見する男だが、その表情は既にその存在を知っていたかのようだ。やがて、ある部屋からカギ十字の紋章が発見され、そこがかつて第二次大戦中のナチスドイツ軍の施設だったことが判明する。男の本当の目的はナチスドイツが発明したある装置を回収することだったのだ。それは不死のゾンビ兵士を作り上げる究極の装置であった。傭兵部隊はヤバイ空気を感じ始め早々に去ろうとするが、突然目の前に現れた無数の人影に驚愕する。それはナチスの軍服に身を包んだゾンビ兵士軍団だった・・・。

【感想と雑談】
 久々の冒険鑑賞であるが、今回も残念な結果となってしまった。

 出だしはいい感じである。どんよりした曇り空の下、傭兵部隊と男を乗せたオンボロトラックが、山道を進んでいく。荷台に乗せられた傭兵らは全員一癖も二癖もあるような連中だ。その中のリーダー格は更に百戦錬磨のオーラが出ていて申し分ない。軽口叩いてくる部下には無言で睨み返す。

 トラックを降りてからは暫く森林地帯を徒歩で移動するのだが、彼らの装備がまたよさげだ。ロシア系と黒人系の傭兵はAK47で、その他白人系の傭兵はH&KG36で固めている。彼らの趣味なのか。個人的には好きな銃器だったりする(笑)。

 そんなこんなで、地下施設に辿り着いた一行は、そこを舞台にゾンビ兵士らと対決するのだ。

 ゾンビ兵士は神出鬼没なところがあり、地下施設内で現れたかと思ったら突然消えたりする。普通のゾンビではないらしい。またゾンビ兵士の製造装置について、迷宮アドベンチャーゲーム『ミスト』シリーズに出てきそうなデザインセンスでなかなかよろしいのだが、大仕掛けなカラクリがある訳でもなくハリボテ然としているのがちょっと寂しい。


 ゾンビ兵士らが大々的に登場するシーンが、なんだか昔観たバラエティ番組のようだった。あれはガッツ石松家に宇宙人グレイ型を仕向けるという企画で、初めは雄グレイ単体がガッツ石松に「遊ぼうよガッツ」と呼びかける。次に雌グレイを引き連れ「彼女ができたよガッツ」と呼びかけ、最後には子グレイを引き連れ「子供ができたよガッツ」と呼びかける。

 イタズラされていることより、夜中にグレイがしつこく呼んでくることに腹が立ったガッツ石松はついに表に飛び出す、という素敵な企画だったのだが、この時の焚かれたスモークと投光機によるバックライトを背にしたグレイの姿が、本作のゾンビ兵士の大々的登場シーンに被った訳である。森の中でスモークにバックライトか。そういう演出担当のゾンビ兵士がいるのか。別に笑えるシーンではないのだが、バラエティ番組を想像させてしまうようではアウトだ。スモークと投光機は使いようである。

 この後、地下施設から大戦当時のナチスによるゾンビ兵士計画を綴った記録フィルムが発見されるのだが、その中のアニメーションによるゾンビ兵士らの行進の模様。その滑らかさは手描きでなく明らかにCGであったりする(笑)。また、記録によればゾンビ兵士らをドイツからアメリカまで徒歩で移動させホワイトハウスを攻撃するという計画だったらしい。

 徒歩で移動か。いったいどれくらいかかるんだ?大西洋横断の海中移動だろ。サメにやられないのか。もしこの計画が実行されていたとなると、終戦後の好景気で調子こいてるアメリカにゾンビ兵士らが到着し一発大逆転となったかもしれない。これはこれで面白そうだ。これってなんとなく『カリブゾンビ』を思い出す。同じくナチスドイツが開発した水中型ゾンビ兵士が現代に蘇るという内容だ。観てないけど(爆)。


 ゾンビといえば人体損壊が最大の見せ場なのだが、残念ながらそれは皆無に等しかった。あくまでも戦闘用に不死の肉体を持つ兵士が目的だった訳で、いくらオカルト好きナチスも見境なく人肉をむさぼるゾンビは作らなかったようである。装置によって強烈な磁場を作りだし、アインシュタインの訳のわからない理論の成立によって発生したパワーを浴びた一般兵士らが、ゾンビ兵士となったのだ。

 計画は終戦によって中途半端なところで終わってしまったので、ゾンビ兵士らは地下施設の周辺をさ迷い、訪れる人間を襲うだけの存在となってしまった。その襲い方が、銃撃戦の最中に傭兵を一人誘拐し(どうやって)ライフルの薬莢で体中をグリグリしたり、背後から忍び寄って傭兵をめった刺しにしたり、地下施設に突然現れ傭兵の頭をぎゅうっと壁に押し当てるとどっかに消えたりする。なかなかセコいゾンビ兵士だ。

 ゾンビというより、終始無言の顔色悪いドイツ軍兵士が団体で歩いてくるようなものだった。影のある画(フィルムにあえて銀成分を残す「銀残し」手法かも)が非常に思わせぶりだし、クライマックスはゾンビ兵士らを無力化するのに装置付近ギリギリまでおびき寄せるという粋な展開を見せるのだが、最後の最後にカタルシスは吹き飛ぶし、男の「オマエ何やっとんねん!!」と思わせる最終行動にも目が点になるという、最終的にダメダメ結果の残念な作品なのでした。

もっと弾けて欲しい。


 今年から始めたブログですが、無事に年内は続けることができました。皆様からは沢山の応援を頂きまして、本当にありがとうございました。励みになりました。来年も激動の年になりそうですが、なんとか頑張ってみたいと思います。来年も変らずアホ記事を書き続けたいと思いますので、よろしければ暇つぶしにご利用下さい(笑)。
 今年もお世話になりました。それでは皆様、よいお年をお迎え下さい♪♪

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2008年12月21日日曜日

映画『薔薇の名前』 ・・・ショーン・コネリーとクリスチャン・スレーターが修道院で大活躍するんだそうです

●原題:Der Name der Rose
●ジャンル:ドラマ/ミステリー/スリラー/犯罪
●上映時間:130min
●製作年:1986年
●製作国:フランス/イタリア/ドイツ
●言語:英語/ラテン語
●カラー:カラー
◆監督:ジャン・ジャック・アノー
◆出演:ショーン・コネリー、クリスチャン・スレーター、ロン・パールマン、F・マーレイ・エイブラハム、ミシェル・ロンスデール、その他大勢

 だいぶ前にビデオで観ている作品ですが、謎解きとショーン・コネリーが面白かった!という思い出しかない作品です。調べてみると評判はかなり良いようです。これはいかんということで、今回DVDで観直すことにしました。

【ストーリー】
 中世1327年の北イタリア。山頂に構えるある修道院に2人の人物が到着する。修道士ウィリアムと修道士見習いのアドソだ。清貧論争という対立を起こしていたフランシスコ会と教皇庁側の2派が、この修道院で決着すべく会談することになり、その調停役としてウィリアムが呼ばれたのだ。理論的で優れた知性を持つウィリアムは信頼のできる男であった。
 しかし到着して間もない頃、ある写字生が謎の自殺を遂げたことを修道院長から知らされるウィリアム。窓も無い塔から投身したという有り得ない状況から悪魔の仕業という噂が広まっており、このままでは会談に影響しかねないと修道院長はウィリアムに真相の解明を依頼する。
 始めは断るウィリアムも、修道院に漂う不穏な空気を感じ始め、アドソと共に得意の推理力を働かせ捜査に入る。やがて図書館の翻訳担当と副司書が立て続けに遺体となって発見され、その指先と舌の先には必ず黒インクが染み付いていることが確認される。ウィリアム達は事件のカギが図書館に存在する写本であることを付き止めるのだが・・・・・・。



【感想と雑談】
 原作はイタリアの哲学者ウンベルト・エーコによる同名小説だ。ベストセラーらしいのだが、自分はこれっぽっちも知らなかった。哲学者が書いたものだから、やたら難解なのかといえばそうでもなく、純粋にミステリー小説として楽しめるらしい。本作を観る限りでは、重厚で史実を絡めながらも堅苦しい訳ではなく、知性を持った修道士が修道院で起きる怪死事件を解明するという、意外にエンターテイメントで面白い作品だと思う。かなり端折っているはずなので、合わせて原作を読めば更に楽しめそうである。

 冒頭、荒涼とした山道を修道士ウィリアムと見習いアドソが馬に乗って登場。こんな場所に一人放たれたら5分と持たないような冷たい空気漂う場所だ。丘の上まで来た二人を手前にずっと先に見える山。その山頂にそびえ立つ修道院。ガラスペインティングという手法で撮られた作品中唯一の特撮場面だ。いい感じである。

 修道院の麓まで来ると、下から見上げる塔や外壁がかなりの巨大感を持って映し出されるのだが、これらが全てセットというのが信じられない。てっきり昔から実在する施設を使っているのかと思った。二人が到着すると、巨大な門が開き、中から修道士らが水瓶を持ってお出迎えする。その場で手を洗い清める2人を見つめる修道士らの表情が危ない。

 修道院ってこういうところなのか、それとも何かを企み隠し持っているのか。敷地内に入るとこれまた広大なのだが、勿論これらも全てセットだ。教会堂や先の塔が威厳を持って存在している。空気も冷たくどんよりしている。こういう本物志向っていいと思う。

 鋭い洞察力を持ち理論的に物事を判断できる修道士ウィリアムがとにかく頼もしい。これを渋みの増した初老のショーン・コネリーが演じているのだから説得力がある。頼もしすぎる。不気味な修道院の中であっても一緒にいれば怖いもの無しだ。彼は正式にはバスカヴィルのウィリアムと名乗っているのだが、これって姓と名みたいなものか。

 それよりも、このバスカヴィルってシャーロック・ホームズの名作とされる「バスカヴィル家の犬」を連想させるものだそうで、まさにウィリアムがシャーロック・ホームズさながらの活躍をするという訳だ。勿論、自分は「バスカヴィル家の犬」なんてのもこれっぽっちも知らなかった(爆)。

 修道士見習いアドソを演じるのは当時15歳のクリスチャン・スレーター。これがデビュー作だ。見習い役ということで、頭頂部だけを剃って挑んでいる。非常に初々しいのだが、どこを見ているのかよく判らない空ろな表情。事件を追う途中でウィリアムと分かれたアドソは、厨房に隠れていた麓の村に住む娘とやってしまう。

 ここで、おや?と思うことが。以前、ビデオで観た時は二人の手前に花瓶が置いてあったはずなのだが、まったく出てこないのだ。どうやら、当時の表現の問題から検閲が入り、肝心な部分を隠す為の物体をはめ込まれていたらしい。昔の洋ピン映画か。というか、こんなことどーでもいいですね。

 話し戻って、後に大反省するアドソを温かく受け止めるウィリアムがまたいい。イカすぜコネリー。監督のジャン・ジャック・アノーはスレーターのことをえらく気に入ってたらしいです。・・・ん?まさか名前がクリスチャンだから??そんなベタなはずは。

 そうそう、あのロン・パールマンも出ているのだ。奇怪な風貌と言動から異端審問会にかけられる不運な修道士役で、元々それっぽいところに更に特殊メイクでパワーアップしてるものだからまさにドンピシャである。本作のせいで怪物役者として名が通るようになったと本人はボヤいていたらしい(笑)。彼を初めて知ったのが本作。好きな役者である。

 製作はドイツ人のベルント・アイヒンガー、監督はフランス人のジャン・ジャク・アノーで、ロケ地はイタリア。言語は世界配給に向け英語になっているが完璧ヨーロッパ映画だ。禁じられた笑いを写本に求めると罰を受けるという謎のシステムを探偵修道士が解いていくのが本筋で、ミステリーの王道を行く内容かもしれないが、その周りを史実通りのアイテムが固めている為、予備知識が無いと混乱の元となるかもしれない。自分は完璧にそうだった(汗;)。なので、清貧論争や異端審問辺りをおさらいしてみた。そしたらちょっとは理解ができ幅が出たような気がする。楽しめるかどうかは知識次第か(汗)。原作にチャレンジしてみようかな。

 最初に観た時は、本筋もわからないまま殺人のトリックやショーン・コネリーの印象のみで面白いと決め付けていたようだ。(←ダメな自分 笑;)

 偶然にもクリスマス時期にキリスト教絡みの作品を紹介してしまった。ホントに。でも中身はクリスマス気分を逆走させるようなものなので(笑)。



【出典】『薔薇の名前』/ワーナー・ホーム・ビデオ
© 1986 NEUE CONSTANTIN FILM PRODUKTION GmbH. All Rights Reserved.

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2008年12月13日土曜日

映画『デスレース』 ・・・ジョアン・アレン最強伝説

●原題:DEATH RACE
●ジャンル:アクション/SF/スリラー
●上映時間:105min
●製作年:2008年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ポール・W・S・アンダーソン
◆出演:ジェイソン・ステイサム、ジョアン・アレン、タイリース・ギブソン、ナタリー・マルティネス、イアン・マクシェーン、その他大勢
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 年末のこの時期は、忘年会の時期でもあります。暴飲暴食には気を付けるようにしましょう。あと飲酒運転、これは絶対にダメ。これが守れない人はターミナル・アイランドに送られてデスレースの餌食になります。マシンガン・ジョーにギタギタにされます(笑)。

【ストーリー】
 2014年。世界情勢が悪化し刑務所の運用が民間企業に委託されるようになったアメリカ。孤島の刑務所ターミナル・アイランドでは、定期的にデスレースが開催され、世界中から人気を集めていた。デスレースを仕切るのは女所長のヘネシー。レースのネット配信による収益が全てという冷徹女だ。
 ある日、製鉄所をクビになったジェンセンは自宅で何者かに襲われる。気が付けば傍らには息絶えた妻がいた。逮捕されたジェンセンは妻殺害の罪を着せられターミナル・アイランドに投獄される。それはヘネシーの仕業だった。人気ドライバーのフランケンがデスレース中に事故死したが、世界中のファンに気付かれる前に代役を立てようと、元優秀ドライバーのジェンセンに目を付けたのだ。フランケンは元々覆面ドライバーだったので運転が上手いヤツなら誰でもいいのだ。
 初めは抵抗するジェンセンも、デスレースに勝利すれば釈放となることを条件にフランケンの代役を飲むことにする。デスレースに出場するのは囚人らによる複数のチーム。どいつもこいつも物騒なデスカーを用意し殺気立たせていた。特にマシンガン・ジョーはフランケンをライバル視しており鼻息も荒い。遂にスタートするデスレース。果たしてジェンセンはターミナル・アイランドから無事に出ることができるのか・・・。



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【感想と雑談】
 言うまでもなく’75年製作の『デスレース2000』(旧『デスレース2000年』)のリメイクである。予告編の動画を観た時に不安を感じたものの、ちょっとは勢いがあるんじゃないか?ということで、気持ち期待して観に行った。

 そしたら、勢いがありすぎた

 なんだこれは。凄く面白いじゃないか。参った!
オリジナルは70年代のヘナチョコさとレースの不謹慎さが合体した素敵な作品だった。大統領が敷く独裁政治によって毎年デスレースが開催され、キバが生えたデスカーが公道の一般人を轢いては点数を競ったり、シルベスタ・スタローン演じるマシンガン・ジョーがブーイング嵐の観客に向かってマシンガンを掃射したり、テレビ局がバラエティ的に大放送したりと、これらを能天気に描いていて大バカのマックス値。 リメイクの本作ではこれらの設定はほぼ書き換えられていたが(というかこの設定は実現無理)、ネジが数本どころか全部飛んでしまったんじゃないかと思わせる大バカぶりは、方角を180度変えた形で健在であった。


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 オリジナルのアメリカ大陸横断レースに対して、本作ではターミナル・アイランドという閉じた空間でのレースとなっているが、やることは本質的に変っていない。走行中に敵のデスカーをドライバー共々仕留めながら1位を争うのが基本だが、別にドライバーが外に出れば直接轢き殺したって構わないのだ。オリジナル要素としての刑務所なので、出てくるドライバーやピットのクルーは全員囚人からなる。主人公ジェンセンが扮するフランケン(シュタイン)とマシンガン・ジョーだけが、オリジナルから引き継いでるキャラだ。役者も変ってだいぶ容姿は違うのだが、両者とも性格がオリジナルと似ている。

 ジェイソン・ステイサム演じる主人公ジェンセンは冷静沈着で男気あるドライバー。フランケンに扮する時は鉄仮面を被るのだが、両耳部分からボルトが飛び出ていないのは残念。ナビゲーターのオネーチャンにはちゃっかり素顔を見せる。途中、デスカー工房で、ジェンセンは敵対するチームと喧嘩をするのだが、万力に相手の頭をブチ当てるなどして非常に痛そう。工具類が置いてある場所では喧嘩しない方がいいと思う。

 タイリース・ギブソン演じるマシンガン・ジョーはいつもハイテンションでフランケン打倒を考えている黒人だ。オリジナルではただの抜け作(若かりし頃のスタローン顔を想像方)だったのに比べると、かなりマトモで話しも通じるのだが、レース中にナビゲーターがヘマをすると、すぐブチ切れ走行中に突き落としてしまう。ナビゲーターを使い捨てにする恐ろしい男ではある。

 登場するデスカーが素晴らしい。どれもこれも分厚い鉄板で補強し、ボンネットには50口径マシンガンやミサイル砲を搭載、後部には妨害用の撒きビシ、煙幕、オイルなど特殊装備が満載。全体的にグレー色で統一され重量感タップリだ。因みに、オリジナルのデスカーはそれにバカを上乗せしたようで、ドラゴンや牛の顔を模したり、ロケットを背負ったりと、70年代ならではのテイストが炸裂。旧マシンガン・ジョーのデスカーには巨大な剣が装備され、これで通行人の股間をグサーとやったりして、強そうというより笑える装備であった。相当バカ。しかし、アメリカ中がこんな車が人を轢くのを観て喜んだり、轢かれた人の親族がテレビに出演すれば祝福されたりと、異様なパワー漲るオリジナルではあった。


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 本作の要であるデスレースのシーンでは燃えてしまった。スタート直後は特殊装備が一切使えないのだが、これはヘネシーのルールによるものだ。レースが2周目に入ったところで、ヘネシーがコース上の仕掛けを作動させる。それは路面に点在するマンホールの蓋状スイッチを踏むことで、スイッチに刻印されたシンボルと同じ装備がロック解除され使用可能になるのだ。攻撃装備が解除されれば、銃火器が薬莢をバラ撒き前方のデスカーを掃射しまくる。

 しかし着弾も凄まじいのだが、墓石と呼ばれる後部のブ厚い装甲版が蜂の巣になるのを簡単には許さない。防御装備が解除されれば、オイルを撒き、後続車をスピンさせる。マリオカートか。これはオリジナルのアホなマンホールネタにインスパイアされているに違いない。たぶん。とにかくド派手なレースだ。

 本作で最もぶっ飛んだキャラは、悪役の女所長ヘネシーである。オリジナルの大統領キャラとは比べ物にならない。最初はおしとやかに登場するのだが、刑務所でやたらヘコヘコされるところを見ると、タダでは済まない女であるのがわかる。ジェンセンを静かに脅迫しデスレースに出場させたと思ったら、コントロールタワーでは目の色変えて、視聴率や収益のことで頭がスパークする。側近の刑務官から「所長、ネットの視聴者が5千万人を突破しました!」とか報告されると、とても嬉しそうにする。(5千万人からのアクセスってどんなだ)

 ヘネシーを演じるのは、ジョアン・アレン
これまで何本かの出演作を観てきたが、こんな作品でこんな役をやるなんて思ってもみなかった。『インディ・ジョーンズ/クリスタルスカルの王国』のケイト・ブランシェットを越えてしまった。最強女優だ。


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 デスレースも中盤に入ればフランケンやマシンガン・ジョーが熱いバトルを繰り広げ、他のデスカーらもとにかく場を盛り上げる。迫力あってとても楽しいレースだ。なのにヘネシーは何を思ったか、ある最強のデスカーを乱入させてしまう。ドレッドノート(”ド級”の語源になった昔の戦艦)と呼ばれる『マッドマックス2』に出てきたタンクローリーそっくりな重装備デスカーだ。重機関銃や火炎放射器を装備し、タイヤには鋭い突起物が付いていて物騒極まりない。

 せっかくいいレースをしていたのに、バカの大将みたいなドレッドノートがデスカーを蹴散らしていく。何故ここでこれを出す!?でも笑える!!この後、ドレッドノートは先のマンホールスイッチで大変な目に会ってしまい、ヘネシーは力いっぱい罵る。ドレッドノートに命を懸け自らデスレースをブチ壊すエレガントなヘネシーには笑ってしまった。最高だ、ジョアン・アレン。好きになった。

 すったもんだした挙句、フランケンとマシンガン・ジョーの2名だけが生き残り、最終レースに挑むことになる。ここからオリジナルとは全然違う方向へと進みラストを迎えるのだ。オリジナルのように殺伐としておらず、またヘネシーに対するオチもキッチリ用意してあって、ここでまた爆笑ポイントが訪れることになる。スッキリした。素敵だ、ジョアン・アレン。凄く好きになった。

 監督は『ソルジャー』『バイオハザード』『AVP』のポール・W・S・アンダーソン。今回もちょっとヌルめかな・・・と半分諦めていたのだが、ヌルいどころか火傷しそうになった。意外やこれまでのイメージが吹き飛んでしまった。話自体はこれまで同様にヒネリや抑揚も無く薄いものだったが、逆にこれが高いテンションを維持するのに非常にベターだったのかもしれない。ドライバーは血の気の多い連中ばっかだし、ヘネシーの悪役ぶりもストレート過ぎたりと、絵に描いたように単純。でもその単純さが勢いに乗っていて気持ちがいい。

 ヘタに凝ったドラマで奥深さを出そうものなら、魅力は間違いなく消し飛ぶに違いないのだ。このバランスによる異常なノリは、ポール・W・S・アンダーソンにしか出せないのかもしれない。はっきり言って勢いだけの作品だが、いいものはいい。これからも頑張って欲しいです。『デスレース2』を作るなら応援します。あと、ジョアン・アレンも。

 これからご覧になられる方は、エンドクレジットは最後まで観た方がいいです。ジョアン・アレンのオマケが待ち構えています(笑)。

 こちらに『デスレース2000』のショボイ記事があります。よろしければどうぞ(笑)。

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2008年12月7日日曜日

映画『吐きだめの悪魔』 ・・・熟成しすぎたウイスキーを飲むと大変なことになるんだそうです

●原題:STREET TRASH
●ジャンル:ホラー/スリラー/コメディ
●上映時間:102min
●製作年:1985年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ジム・ミューロー
◆出演:マイク・ラッケイ、ビル・チェビル、ジェーン・アラカワ、マーク・スフェラッツァ、トニー・ダロウ、ジェームズ・ロリンズ、その他大勢

 すっかり冬ですね。
 前回の『東京残酷警察』は久々に堪能した特殊メイク全開のファンタスティック作品でした。余韻も未だに残っています。ということで、今回もこの流れで一発秘蔵のファンタスティック作品を紹介したいと思います。・・・この記事、大丈夫か(笑;)。

【ストーリー】
 アメリカ。どっかの街。ある酒屋の地下室から60年前のウイスキーが大量に発見され店頭に置かれる。あまりの安売りに地元のホームレスには大人気なのだが、そのウイスキーを飲んだホームレスはことごとく身体が溶けて消滅してしまう。寝かせ過ぎて必殺の凶器と化したウイスキーだ。それは溶ける際の飛沫を浴びただけでも重症を負うほどの威力を持つ。最悪だ。
 一方、ホームレスが生活の場としている廃車工場では、戦争上がりのブロンソンが暴力を持って支配していた。一匹狼の刑事は、散々悪事を働くブロンソンをマークし一連のホームレス怪死事件を解決しようとするも、途中にマフィアの邪魔が入ったりと、なかなか先に進むことができない。
 その頃、ホームレスのフレッドは、偶然ウイスキーの威力を知り、いつも自分を苛めるホームレスに飲ませ復讐に成功する。そして酒屋に知らせに行くも時既に遅し。目の前にはウイスキーを飲んで溶け出している店主がいた。気を取り直し、ブロンソンを倒すべくウイスキーを片手に廃車工場へと向かうフレッドだったが・・・。


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【感想と雑談】
 昔、なんかの雑誌で「どこぞの映画祭で話題になった凄く汚い映画」という記事を読んで、とても気になってしまった。暫くするとレンタル屋に並び出したので、速攻で借りてみた。

 はっきりいって最強

 開始早々、主人公フレッドが酒屋に忍び込むと、店主から強烈な屁をかまされ追跡劇が始まる。逃げる途中で他のホームレスから金を奪ったり、自動車事故が起きたり、逃げ込んだアパートが火事になったりと、かなりドタバタ。追っ手が増えてしまったのでゴミ回収車に飛び込むフレッドだが、安心したのも束の間、プレス機が作動したので慌てて飛び降りてしまう。そして回収車に金を落としたことに気付き地団太を踏む。冒頭のクレジットにしてはかなり飛ばしまくりだ。重低音でシンプルなBGMがイカす。

 この作品、たしかに汚くて残酷

 当時のアメリカにあんなホームレスがホントにいたのかは不明だが、とにかく汚い身なりである。フィルタをかけずに現実と直面するような生々しい画になっていて、ホームレスが映っていなくても、常に重苦しい空気が流れている。アメリカ全土がこんなところなのかと思えてくる。


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 どのくらい汚くて残酷かというと、最初の被害者のホームレスの場合、廃屋の便器に座りウイスキーを飲んだ途端、原色の体液を噴出しながら下半身から溶けていき、しまいにはドロドロの便器に顔だけが浮かんで消滅する。また、ベランダで飲んだホームレスは溶け出しながらボタボタと原色の体液を落下させ、通行中のサラリーマンがそれを顔に食らって大変な目に会ったりする。更に、超メタボのホームレスは溶けない代わりに腹が膨張し大爆発する。そして原色の肉片を撒き散らす。

 血液以外にも、青や黄という有り得ない色を織り交ぜた体液がやたら湧き出る感じで、医学的には有り得ないが、汚いものは汚い。 あとシモネタとしても汚いものがある。

 一方で侮れないのが、ただ汚いばかりでなく、いくつかの人間ドラマが交差する感じで、夫々のエピソードが興味深かったりするところだ。

 ベトナム帰還兵のブロンソンは未だ戦場にいる妄想から凶暴化し、廃車工場を恐怖のどん底に陥れる。ホームレス怪死事件を追う刑事はブロンソンの存在に辿り着き、廃車工場で対決することになる。ホームレスの黒人はスーパーでもの凄い万引きを決行し、パーティーを開催する。主人公フレッドの弟はアジア系の事務員女と仲がよく、工場長はそれが面白くない。

 と、こんな感じで複数のドラマが進行していくのだが、汚い画の割りには堂々と、そして流暢に撮られていて、どれも見応えがある。


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 印象深くて笑えるのが、ブロンソンがあるトラブルからホームレスのイチモツをぶった切り、それを投げ飛ばすと盛大にアメフトごっこが始まるエピソード。イチモツが空に舞う様をスローのアップで映すところが、とってもバカ。コミカルなBGMが拍車をかける。やっとこさ自分のイチモツを回収したホームレスは、スクールバスにしがみ付き病院に急行する。オイオイ。。。

 また、捜査がはかどらずイラついてる刑事にウイスキーの被害にあったサラリーマンの同僚女が「早く彼を助けて!」と言い寄るところ。後回しにしようとする刑事に同僚女がヒステリックに「なら私を犯してからにしたら!?」とか叫ぶと、すかさず刑事は「アンタの体じゃピクリとも来ねえぜ」と史上最強の台詞を吐く。それを聞いた野次馬の黒人2人がイエァ!と狂喜しハイタッチ。非常にカマしてくれる場面として印象深い。

 クライマックスでは凶暴化したブロンソンとフレッド兄弟が対決するのだが、肝心のウイスキーを浴びせるもそんなに効かず、結局バルブをブチ切った酸素ボンベをミサイルにし、ブロンソンの顔面に直撃させる。見事すっ飛んだ首が地面に着地したブロンソンは、その上を飛び越す事務員女のパンチラ(笑)を目で追いながら絶命する。全体的に特殊メイクは安めの印象だが、この時のブロンソンの造型はかなりくるものがある。ここだけは伝説と化している名場面だ。

 これらダイレクトに伝わる汚さと残酷さ以外にも特筆すべき要素がまだある。それはカメラワーク。ステディカム(カメラマンの細かい動きを吸収しブレを無くす装置)による流暢でスタイリッシュ、そして工夫を凝らしたカメラワークが、相当なインパクトを残す。ガレキの山となった廃屋をもの凄い勢いで突進し辿り着く先がホームレスが溶けてしまった便器だったり、酒屋の店主が溶け出せばその様を縦に360度回転させながら撮ったり、メガネをレンズ前に取り付けぶん回し、車のフロントガラスに叩き付けられるメガネ男の視点を表現したりと。下品な展開に上品なカメラワークというギャグなのかもしれない。とにかく寝ぼけ頭に一発食らうようなビジュアルインパクトなのだ。


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 監督のジム・ミューローは、映画学校の卒業作品として本作を製作したのだそうだ。それを考えると、かなりよく出来た作品なんじゃないかと思える。20代そこそこであれだけ描ききってるのだから大したものである。詳しい製作背景までは知らないのだが、ビンボー製作であったならホームレスの大半は本物を使ったのかもしれない(笑)。例のウイスキーについては何も解決していないが、これはインパクトある映像作りの為に用意しただけで、細かい設定等どうでもよかったのだろう。

 後にステディカムのオペレーターとして『タイタニック』にまでクレジットされるようになったことを考えると、これまた感慨深いものがあるのだが、残念ながら監督作品はこの『吐きだめの悪魔』が最初で最後となってるらしい。

 ジム・ミューロー監督が何をどう思って撮ったかは知らないが、ナマの生活、ナマのアメリカが滲み出しているようで、これはこれで見る価値のある立派な作品なんじゃないかと思う。やたら上っ面だけのウソ臭い一般映画なんかよりもガツン!とくるのだ。

 『吐きだめの悪魔』はアメリカでは普通に人気があるそうで、豪華特典付きのDVDが発売されているそうだ。日本では残念ながら未発売となっている。なので、現在はレンタル屋にはDVDでは存在していない。あるとすればビデオだが、大方消えてしまってるか、運がよければ中古のワゴンセールに乗っかっているか。ビデオは持っているのだけど、デッキが壊れていて観ることできません~(;;)。


<2011/12/17 追記>
 最近知ったことですが、本作にカメラ担当の一人としてブライアン・シンガーが参加しておりました。これにはビックリ。
 サスペンスありファンタジーあり(笑)の本ゲロ映画が、『ユージュアル・サスペクツ』や『X-メン』もろもろに影響を及ぼしていた訳か?そういえば『X-メン』にもオッサンがデローッと溶けるシーンがあったあった。たぶん関係ないだろうけど。
 とにかく、『吐きだめの悪魔』が後のヒットメーカー輩出装置になっているのは大変興味深いことです。


【Street Trash - Trailer】(後半がバッチいです)


【Street Trash - Toilet meltdown】(かなりバッチいですが名場面です 笑;)


YouTubeでは名場面がいくつかアップされているので、興味があれば検索して観てみて下さい。

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2008年12月3日水曜日

映画『東京残酷警察』 ・・・近未来の東京が大変なことになってます

●原題:東京残酷警察
●ジャンル:アクション/ホラー
●上映時間:109min
●製作年:2008年
●製作国:アメリカ/日本
●言語:日本語
●カラー:カラー
◆監督:西村喜廣
◆出演:しいなえいひ、板尾創路、紅井ユキヒデ、堀部圭亮、
坂口拓、菅田俊、その他大勢
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 どうも!お久しぶりです!^^
 久々の映画記事となります。今回は久々に邦画ですが、この冬を吹き飛ばす程の凄い作品です。イベント上映だったので、ちょっとレポートっぽくなってるかな(笑;)

【ストーリー】
 近未来の日本。民営化された警察はここ数年出没している”エンジニア”に手を焼いていた。エンジニアとは肉体の一部を凶器に変化させ凶暴化した殺人ミュータントである。警察機動部隊の女性エース隊員ルカは、今日もビルに出現したエンジニアを討伐すべくロケットジャンプで屋上にひとっ飛びし、自慢の日本刀やチェーンソーでエンジニアをバラバラにする。
 ある日、エンジニア誕生の鍵を握る黒幕に遭遇したルカは、その黒幕が自分の忘れ去った過去に関与していることを知り愕然とする。そして全てを思い出したルカは本当の敵に戦いを挑むことになる・・・。


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【感想と雑談】
 これ、実はアメリカ資本によって海外向けに製作された邦画作品。とんでもない描写の連続にもう大変。なんとか国内の公開が実現されたものの、主要都市のミニシアター系のみで短期間公開。その分、凝縮された熱気が各地方を襲っている。因みに、このアメリカ資本による製作はシリーズ化されており、今回は第2弾となる。第1弾は『片腕マシンガール』という作品。これは未見で残念。

 10月の東京を皮切りに地方への公開が開始。この度の名古屋公開に行ってきた。

 アジア系シアターの老舗シネマスコーレでの「名古屋残酷警察」という全国的にも独自の企画で盛沢山の内容。ここが日本一名古屋のいいところだと思う(笑)。(他の地方でも何か特別企画やってるのかな)

 11月29日(土)~12月5日(金)の1週間、連日切替わりで前座に関連作品が組み込まれており、どれもが非常にそそるラインアップだ。チラシの料金欄に書かれた「(!)警察、警備会社にお勤めの方は、証明書掲示で1000円均一」が目に入り、時間待ちのドトールでコーヒーを吹く。センスのよさに脱帽。

 初日の前座は主演ルカ役しいなえいひの代表作『オーディション』('00)が上映された。三池崇史監督作品で、異常性格の女が求婚してきた会社社長をいたぶるというもの。しいなえいひ演じる女が針を刺しながら”キリキリキリキリキリ~”と抑揚もなく声を出すところが衝撃的(笑)。

 この後にメインの『東京残酷警察』が上映されるのだが、その前座の『オーディション』から西村喜廣監督としいなえいひの舞台挨拶があった。前から2列目の席でかなり近くで見れました。よかった~♪

 話しによれば今回の『オーディション』は初回以降初の公開だそうで、その間フィルムが行方不明になっていたそうだ。探しまくった結果ある配給会社が確保しているのを発見、無事公開に辿り着けたとのこと。しかし、当時は普通にビデオで観られた訳だが、DVDも現在は発売されていないのだそうな。知らなかった。海外では凄く人気があって、しいなえいひ自身も知らなかったそうだ。来年にDVDが超限定発売されるとか。そんなに貴重な作品だったんだ@@

 さて、今回メインの『東京残酷警察』

 整理券Noが座席数を越えてしまい、残念ながら立ち見となってしまったが、適度に観易く、また舞台挨拶も間近で見られるというナイスポジションであった。(『オーディション』とは入替制><)

 タイトルからもわかるように残酷さを前面に出した内容。アメリカ資本から「子供と犬猫を殺さなければ何をやってもいい」という条件でフル全開。一見のどかに始まるオープニングも人体が破裂することで怒涛のバイオレンス世界が開始される。ルカはエンジニアをチェーンソーで八つ裂きにし、刀で痴漢の両手をぶった切れば血の雨の中番傘を差し去っていく。民営化された警察の機動部隊は甲冑のようなデザインで武士道を思わせるスタイル。でも武器はアサルトライフル。エンジニアも腕をチェーンソーや巨大カッターにしたり、下半身を巨大なワニ口にしたりとタイプも様々だ。どれもこれも人体はパーツと化し大量の血が噴水となって舞い上がる。人体破壊がとにかく凄い。凄すぎる。


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 ここまでで何となくお判りになったかもしれないが、とっても行き過ぎててもう笑うしかない勢いなのである。

 特殊メイクも人体をリアルに現してはいるが、解剖学をすっ飛ばしたように砕け散ったりするし、血もブシューッな勢いで延々と噴出したりして、その量は人体が持つ血液標準量を遥かに越えている。

 これらの描写に原色っぽいデザインも手伝ったりして、目を背けたくなるような陰湿さはなかった。こんな状況にあの板尾創路が重要な役として登場。ノリが本人まんまなところがあって、シリアスかと思いきやお笑い要素も飛び出してくる。ウルトラセブンのパロディまでやったりしてこれまた楽しい。

 西村喜廣監督は何かと表現に煩い日本のシステムに昔から挑戦されてきたそうだ。「死んだヤツが生き返るような映画はクソ食らえ。死んだヤツは死んだままでいい」と吐き捨て反骨精神でやりたいことをやる。そんな潔くカッコいいスタンスのお人なのだ。なのに舞台挨拶ではフンドシ姿になって登場。こんなお茶目な監督(笑)。こういう人ほど、表面的な残酷さだけでは終わらせないセンスの持ち主なのだと思う。劇中に何度も登場する『ロボコップ』みたいな風刺や批判を込めた過激テレビCMには大笑いしてしまった(笑)。

 CG全盛の昨今にこれら特殊メイクの造形は昔のファンタスティック映画ファンには堪らないものがあると思う。生の存在感と迫力。しかも追求されるのはリアリティではなく娯楽そのもの。残酷さを通り越して別次元に昇華した立派なエンターテイメント作品だ。

 海外ではいくつもの映画祭で賞を獲得しているものの、残念ながら国内ではまだ冷遇されまくりのジャンル。皆が観るべきとは思わないけど、もう少しは見る目を持って欲しいと思う。

 今回の日本公開は理解あるミニシアター系の劇場が支えてくれたものだ。逆にこうでないと味わえない熱気があったし、楽しくて素晴らしいイベントであったと思う。上映後のしいなえいひの1曲披露にフンドシ西村監督のトークショー(笑)。これってライブハウスに近いノリですね。全国どこでもこういう体験ができる訳ではないのだけど、これから少しずつでも浸透していけばいいなと思う。

 最後に『東京残酷警察』で機動隊長を演じられた俳優さんであり、ブロガーさんでもあるYukihide Benny様のブログ「★Yukihide Benny's World★邦画天国」を紹介させて頂きます。すぐ上の写真のお方です。関連情報が満載となっていますので、ぜひ覗いてみてください♪お世話になってます^^


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