2010年4月18日日曜日

映画『少女の髪どめ』 ・・・イランからのちょっといいお話だそうです

●原題:Baran
●ジャンル:ドラマ/ロマンス
●上映時間:94min
●製作年:2001年
●製作国:イラン
●言語:ダリー語/ペルシャ語
●カラー:カラー
◆監督:マジッド・マジディ
◆出演:ホセイン・アベディニ、モハマド・アミル・ナジ、ザーラ・バーラミ、アバス・ラヒミ、ゴラム・アリ・バクシ、その他大勢

 ここのところ、しょーもない作品続きでしたが、今回はちょっといい感じだと思います。珍しく中東アジアの作品ですが、普段のアホアホ記事を浄化してくれるでしょうか(笑;)。

【ストーリー】
 イランの工事現場。住み込みで給仕係として働いていた青年ラティフは、最近やってきたアフガニスタン難民の少年ラーマトに仕事を奪われ面白くなかった。更にラーマトは調理の腕がバツグンで現場に大人気というのが腹立たしい。ラティフはラーマトにプチ嫌がらせをする。ある日のこと、どこからか優しい鼻歌が聞こえてくるので、気になったラティフが辿ってみるとそこは給湯室。そっと覗いてみれば、そこには長い髪をとく少女の姿が。なんとラーマトであった。彼女は少年を装っていたのだ。ラティフは衝撃を覚えるもその日を境にラーマトを守ってやりたい思いが日に日に強まっていく。やがて当局に追われ現場から離れてしまうラーマトに、ラティフはいてもたってもいられなくなり・・・。



【感想と雑談】
 レンタル屋でふと目に止まった1本。監督が『運動靴と赤い金魚』のマジッド・マジディというのを知り「あ・・・」と思いました。『運動靴と赤い金魚』はだいぶ前にテレビの深夜帯で録画したものの、観る前にビデオテープが行方不明になってしまった(笑;)苦い経験があるんです。今回は珍しくイランの作品ですが、そういう経緯や何かビビビとくるものがあったので、ひとつ観ることにしました。

 世界情勢上イランは何かと耳にしている国でしたが、映画製作については殆ど予備知識がなく、いったいどんな作品なんだろうと思ってました。いやはや、これはやられました。別にアクションとかSFとか、そんな楽しければいい要素はこれっぽっちもないんですよ。イスラム圏内もあって馴染みのない空気に満たされていますが、根底にあるのは純粋な人間愛。愛といってもラブストーリーとかカタカナ表記で済ませるようなチョロイものではありません。舞台はアフガニスタン難民を不法と知りながらも雇い入れるイランの工事現場。金銭や異性のことで頭いっぱいの青年ラティフは、懸命に働く難民少女にショックを受け、「何とか救ってやりたい。でもどうすればいいのか」という人生初の悩みを抱えることになります。

 何百万人もの難民が必死になって生活している現実そのものを背景としているので、そう易々と万事解決な展開にはなりません。ひょんなことからバラン(ラーマトは偽名)を一人の少女として意識付いてしまい、複雑な思いでいっぱいになるラティフは、とにかく職場でのトラブルから彼女を守ろうとします。彼女に罵声を浴びせる作業員にラティフは食ってかかり、作業員が積み上げたレンガをキックで破壊したりします。もっとやれと思ってしまいます。が、ラティフは決して彼女の正体をバラすようなことはしません。バラせば彼女の境遇に悪影響を与えること必至だからです。かといって直接、彼女に何かをできる訳ではない。悶々としながらも彼女を見守り続けるラティフですが、気が付けばそれまでの浮つきがなくなって落ち着きが見え始めます。



 工事現場を離れたバランを難民コミュニティーで見つけても、ラティフは直接手助けもできずただ遠くから見守るだけ。極寒の中、川の激流から石を運ぶ過酷な仕事はバランだけでなく多くの難民女性らが担っています。青春真っ盛りのラティフとしては、彼女に淡い恋心を抱いたりもしたでしょうが、それを告白して何になるという残酷な現実が取り巻いています。

 ここでトドメの一撃を食らったラティフは、遂にある行動に移ります。それは自らの生活環境をも犠牲にする一大決心。イスラム教には困った者を救済する「喜捨(ザカート)」という教義があるそうです。そこまでやるんかと思ったりしますが、救済のレベルは別にしてこういう行為は人間として大事なことではあります。

 こう書くとなんだか観ていて辛くなるだけのようですが、実は淡々としながらもどこか優しい空気に包まれた作品であります。青年ラティフを演じるホセイン・アベニティが若かりし頃のフレディ・マーキュリーを思わせるという個人的楽しみもありました(笑)。しかし、あちらの男性陣は顔つきが濃いですな。女性陣はというと・・・バランくらいしか出てこないのですが、彼女を演じるザーラ・バーラミはハッとするくらいに可憐な少女。東アジア系に近い顔立ちです。

 また、その他で注目なのが現場監督のメマール。強面でいつも怒鳴り散らしていますが、ラティフの父親代わりにもなっていて、実はとても情に厚い監督さんです。イラン人を恥じるほどに難民のことを考えているし、バランの件を隠しながら相談事をぶつけてくるラティフには親身になって応えたりします。演じるモハマド・アミル・ナジはもの凄く濃い顔立ちなんですが(笑;)、とても味のある役者さんです。



 イラン映画ということで、手法としてはどうか?なんですが、これが意外やストーリーと双璧を成す程の出来。とてもしっかり撮られています。感心したのが、バランが少年ラーマトとして初登場するシーン。仲間と一緒に工事現場の建物を1階から3階まで上る様を1カットで収めています。建物は工事中の中途半端な状態なので、クレーン備え付けのカメラが吹き抜けから丸見えの各階を連続して捉えていきます。

 この長回しの中、多くの作業員らが働いているのですが、これが我々日本人からするととても違和感のあるシーンにもなってます。それは安全衛生。なんと各階と吹き抜けの間には何もない状態なのに作業員は誰一人命綱を装備していないのです。踏み外せば即転落の環境。実はバランがやってきたのも、元々働いていた父親が転落事故によって負傷したからなんですが、これが本当にイランの作業環境であるとすれば大変なこと。国の考え方もあるでしょうが、とにかく安全第一でいって欲しいと願うしかありません。

 ラストで遂に向かい合う二人。ここでバランが取る行動がちょっと意外でした。しかし、ラティフの思いなど知る由もなかったろうし、知ったとしてもそれが彼女の精一杯の愛情表現だったのかもしれません。この後の、ブルカ(イスラム女性が被るフード)越しに見つめるバランの瞳と、ラティフの満足げな微笑みが、実に印象的でした。マジッド・マジディ監督のメッセージにある「世界が戦争ではなく、愛によって支配される日を夢みよう」。無責任に声を上げて言うつもりはありませんが、思いやりの心だけは忘れないようにしたいです。

 ここまで読んで頂いて興味を覚えられた方には、ぜひ観て欲しいと思います。とてもいい作品だと思います。



【出典】『少女の髪どめ』/日本ヘラルド映画

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2010年4月4日日曜日

映画『ピカソ・トリガー ダラス・コネクション』 ・・・第4弾 薄着の金髪美女とボディビルダーがコンピュータチップを巡って大活躍

●原題:The Dallas Connection
●ジャンル:アクション/犯罪
●上映時間:94min
●製作年:1994年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ドリュー・シダリス
◆出演:ブルース・ペンホール、マーク・バリエール、ジュリー・ストレイン、ロドリゴ・オブレゴン、ジュリー・K・スミス、ウェンディ・ハミルトン、ジェラルド・オカムラ(笑)、その他大勢

 他に観る作品あるだろ?と思われること必至の今回(毎度ですか)。需要皆無のシリーズ作品がまたやって参りました。誰も読まないと分かっていても書かずにいられないこの使命感(笑)。以下に投下します。

【ストーリー】
 アメリカは南部のダラス。国際的な武器廃絶組織IWAR本部では、人工衛星上で地上探査システムを稼動させる計画を立てていた。このシステムは地中に隠された兵器類を容易に発見できるもので、主な目的はテロリスト活動の抑制だ。システムを開発した4名の科学者は3日後の稼動に向け、4つに分けた方程式をそれぞれコンピュータ・チップに記録し、IWAR本部に送付する。しかしその直後、3名の科学者が何者かによって殺害されてしまう。全員が殺害されればシステムの稼動は不可能となる。事態を重くみた連邦捜査局は、ダラス入りした残りの科学者アントニオ・モラレスの護衛に移るのであった。それが陰謀の始まりであることも知らずに・・・。



【感想と雑談】
 タイトル画面で[再生]をクリック。賢明な方ならもうお分かりでしょう。当たってます。

 「ハイ!アンディ・シダリスだ」

 本編の前に今日もアンディ・シダリス御大が豪勢な自宅(職場?)からご挨拶。そして来るか来るかと構えていると、やっぱりナイスボデーの女優ジュリー・ストレインが登場。もの凄い顔つきで世界中を威嚇・・・じゃなく圧倒するその存在感。

 そんな彼女にオッパイ攻撃を受けようとも、御大はお構いなしに作品の宣伝用パンフを見せびらかします。これがなんと日本向けに作られた日本語のパンフ。実は他のシリーズ作でも同様にアピールしてるんですが、ひょっとするとこの映像特典って日本向けなのかもしれません。ちょっと嬉しくなりました。

 この強制的なオープニングの宣伝は数分で終わってしまうのですが、この続きは映像特典からタップリと拝むことができます。ここでちょっと延長してみましょう。「ギャラリー」から[アンディ&ジュリー]という項目をポチッとしてみます。

 「ハイ!!ジュリー!!!」

 うわ、ビックリした。オープニングと同じシチュエーションで御大がいきなり叫びながら登場。ジュリーは既にスタンバってます。ここでは他の出演女優がジュリーの親友だとかプレイメイトだとか、シリーズのDVDボックスをプッシュしたりとか、更に具体的な宣伝が行なわれます。御大、歳の割りに実に精力的です。

 そしてこの後、あろうことかジュリーの妹リジー・ストレインが登場。まだ幼い体型ながらも、姉に続けとばかりにイケイケな個性をアピール。この姉にしてこの妹あり。御大が「いい体してっけど、リジーも脱ぐのかい?」とか言うと、ジュリーは「まだ幼いからダメ。アタシが代わりに脱ぐわ」と大迫力のオッパイをぶちまけます。こんなストレイン姉妹に挟まれた御大は実に幸せそうです。こういう職場っていいですよね。


(左が妹リジー、右が姉ジュリー。そして姉妹に挟まれ絶好調のアンディ・シダリス御大)

 さて、「どの作品も一緒に見える」がウリのはずのピカソトリガー・シリーズですが、今回は随分と違った印象を受ける作品となってます。なんていうんでしょうか、一言でいうと「映画してる」でしょうか(笑)。これは良かったです。無駄に溢れる裸体に爆発なんかは変わりないのですが、どこか一本スジが通っていて、メリハリを感じる出来になってるんですね。

 脚本・監督を前作「~エネミーゴールド指令」と同じく、御大の息子ドリュー・シダリスが担当しています。前作では御大のノリと大して変わらんなぁと思ってましたが、今回は「何があった?!」と思えるくらいの変化。メリハリのある演出、そしてミステリー風味の展開。

 開始早々、美女3人の殺し屋が華麗な手口で科学者を殺害します。

 フランスではベッドで科学者を非常に気持ちよく昇天させるブラック・ウィロウ(ジュリー・ストレイン笑)。
 南アフリカでは車中の科学者をラジコン爆弾で吹っ飛ばすコブラ(ジュリー・K・スミス)。
 中国ではゴルプ三昧の科学者をボール爆弾で木っ端微塵にするスコーピオン(ウェンディ・ハミルトン)。

 長身で女王様風味のブラック・ウィロウや、小柄ながら物凄いサイズのコブラも大変素晴らしいのですが、ここでは黒髪スレンダーなスコーピオンに軍配が上がりましょう。彼女は中国人のスケベ科学者と一緒にゴルフをするのですが、その時の格好がビキニ姿。斬新すぎるゴルフです。しかしまあ、ピカソトリガーらしくない華やかさといいますか、非常に垢抜けた印象を受ける女優さんです。皆さんも注目しましょう。あ、これもう16年前の作品になるんだ。今現在はどうなってるんだスコーピオン。


(無駄にエロくゴルフをするスコーピオン。健康的ではあります)

 なかなか掴みはOKなオープニングですが、その後も先に述べたようにメリハリある展開が続きます。いつものように連邦捜査官メンバーらは好き勝手にバカンスしていますが、ボスに呼ばれオフィスに集結すると空気がガラリと変わります。殆どがスーツ姿。一部カジュアルなヤツもいますがビキニやタンクトップ姿ではありません。

 これまでもスーツ姿は出てきてはいたのですが、作風からしてただの暑苦しい存在にしかすぎませんでした。今回はスーツ姿が普通に見えるくらいにピリリとした空気が漂ってるんです。中身のボデーがウズウズしているように見えなくもないのですが、なかなか感心できる場面であります。

 ボスと捜査官らはダラス空港まで科学者アントニオを迎えに行きます。このアントニオを演じるのはシリーズのお抱え俳優ロドリゴ・オブレゴン。彼もシリーズの顔になってます。前作での悪党サンチアゴ役のバタ臭さから一転して、ヒゲを剃り落としオメメぱっちりな優男顔に思わず笑ってしまいますが、これも本作を一味違うものにしている一要素となってる訳です。身辺警護に当たる女性捜査官の裸体を妄想するなど、まあ彼ならではの「ああ、やっぱり」な展開が後に待ってるんですが(笑)。

 犯罪組織の一風変わった殺し屋フーを演じるのはジェラルド・オカムラ。名前からして日系の俳優ですね。なかなか憎めない風貌のオッサンなんですが、皆さんどこかで目にされてると思いますよ。ジュリー・ストレインと並ぶと凸凹コンビになるので自動的にお笑い担当にもなってます。第2作目『~サベージ・ビーチ』で東洋人の殺し屋を演じたアル・レオンと同じ系列ですね。怪しいカンフー技で強いのか弱いのかイマイチ不明という(笑)。


(奥の殺し屋フーが放った銃弾が手前で着弾)

 シリーズ特有のマッチョ捜査官×2が、接近してきた殺し屋コブラとスコーピオンの罠にはまり、預かってたコンピュータチップをまんまと奪われてしまいます。その罠というのが、非常に情けないもので、鼻の下を伸ばした瞬間に電撃攻撃を食らったり毒を盛られたりと。何やってんだよと思いたいところですが、この色気とマッチョ野郎のヘッポコ具合こそシリーズの売りでもあるのでヨシとしなければなりません。

 ヘッポコといえば、先の殺し屋フーがトレーニング中のマッチョ捜査官に襲いかかります。その体格と年齢差からマッチョ捜査官が勝者になりそうですが、それで効いてるのかというヘッポコパンチでフーが勝者となります。こういうリアリティのなさもシリーズの醍醐味なんですね。

 後半になると、殺し屋一行とある人物の関係が明らかとなり、捜査官らが一網打尽にすべく総攻撃を開始します。恒例のマグナム大型拳銃に今回は自動小銃M16も加わり、男のメタファ全開となります。ここでの銃撃戦なんですが、これまた今までなかったような演出が冴えていて、えらく感心してしまいました。

 捜査官と殺し屋が森の中で撃ち合いするのですが、一つの画面に双方を配置して奥行きある構図で見せてくれるのです。奥から射出された弾丸が手前の樹木に着弾する様。カット割りを使わずに全体を見渡せる画作りって大変だと思うのですが、これをちゃんとやってくれてるんです。こういう銃撃戦は大好きです。結構、画作りがしっかりしていると思います。

 シリーズ5大要素にある「ジープを爆発させる」ですが、今回はちゃんと車が大爆発します。ボートの爆発も実際は爆薬だけ爆破したカットにすり替えているものの結構な迫力。ひょっとするとシリーズ中、もっとも費用がかかってるかもしれません。バカンス要素については、前作に続きダラスが舞台なんですが、シリアス気味のせいかあまり感じることはありませんでした。しかもなんと雨のシーンもあったりで、こういうのを「雨降って地固まる」って言うんですね(違)。


(手前のコブラによって奥のボートが大爆発)

 その他、空砲のマシンガンやラジコン爆弾を使った伏線なんかも今まで感じなかった「映画してる」要素になってます。ラストもフォーマルでシックな雰囲気でカンパーイ!そして暗転。シリーズは全て同じ印象・・・のはずでしたが、今回はやたら予想を裏切る出来になっていました。

 結構見応えある作品だと思います。監督のドリュー・シダリスは父親になかったカラーを出そうとしたに違いありません。5大要素の盛り込みを守りつつ、映画度と洗練度をアップさせている。女優のオッパイも形が良すぎる。素晴らしいじゃないですか。

 と、なんだかベタ褒めの感想になってしまいましたが、これはあくまでもシリーズ内の相対的な評価であって、決して誰が観ても楽しめる作品という訳ではありませんので(爆)。

 今回でシリーズ4作目となります。やっと折り返しました。残るはあと2作品。どんな出来が待ってるのでしょうか。乞うご期待です。最後まで付き合って下さる方いますか?わはは。

 よろしければ他のシリーズ作品もどうぞ。

 第1弾:『ピカソ・トリガー 殺しのコードネーム』('88)
 第2弾:『ピカソ・トリガー サベージ・ビーチ』('89)
 第3弾:『ピカソ・トリガー エネミー・ゴールド指令』('93)
 第5弾:『ピカソ・トリガー デイ・オブ・ザ・ウォリアー』('96)
 第6弾:『ピカソ・トリガー リーサル・エンジェルス』('98)


(フォーマルですが、やっぱりカンパーイ♪でその後バッサリ暗転)

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【出典】『ピカソ・トリガー ダラス・コネクション』/ワーナー・ホーム・ビデオ

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