2010年8月28日土曜日

映画『ブラッド・フィースト 血の祝祭日2』 ・・・殺人ケータリングと夢のランジェリーパーティーです

●原題:Blood Feast 2: All U Can Eat
●ジャンル:ホラー/コメディ
●上映時間:92min
●製作年:2002年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ハーシェル・ゴードン・ルイス
◆出演:ジョン・マッコネル、マーク・マクラクラン、メリッサ・モーガン、トニ・ワイン、J・P・デラウセイ、クリス・マウアー、クリスティ・ブラウン、クリスティーナ・クェンカ、ミシェル・ミラー、クリスティ・ポリト、ジル・ラオ、シンディ・ローバル、ベロニカ・ラッセル、ジョン・ウォーターズ、その他大勢

 気が付いたらもうちょっとで9月なんですね。夏もそろそろ終わりでしょうか。ラッキー。まだまだ暑いですけどね。さて、今回は101本目ということで、調子こいて夢の国製作の犬作品にしようかと思いましたが、止めました。ということで今回も暑い時の必需品、ホラー作品です。スプラッタでもありますが、前回と同様、怖くなるというより、変な汗が流れるだけの珍作品かもしれません。’60年代のスプラッタ元祖の続編になります。

【ストーリー】
 アメリカのある町。料理人のファドは祖父が経営していた店を相続しケータリング(仕出)を始めようとするが、店内に放置されていたエジプトの女神像に取り憑かれ殺人鬼に豹変してしまう。実はかつてエジプト料理を出していた祖父も同じ運命を辿っていたのだ。そうとは知らず、町に来たばかりのランプリー家は、娘の結婚パーティ用にとファドに料理の注文をしてしまう。ウハウハなファドは町の娘を捕らえてはその血肉を使って料理の準備を開始。過去の経緯からも警察はいち早くファドをマークするが、なかなか証拠を掴むことができず、遂に結婚パーティの日を迎えることになってしまう・・・。



【感想と雑談】
 スプラッター作品の第一号と言われる『血の祝祭日』('63)。これを世に出したハーシェル・ゴードン・ルイス監督が、再びメガホンを取り、続編としてパワーアップさせてしまったのが本作です。ひょっとすると猛烈な若年ファンが、やる気ない監督を駆り立てプロデュースし、再びやらかそうとしたのかもしれません。この辺よくわかりませんが、見事に当時のテイスト漲る作品となっています。それにしても何歳なんだよ監督。因みに’03年の東京ファンタ映画祭で上映されたそうです。

 80年代のスプラッタ全盛期に突然リリースされた監督作品には驚愕しまくりでしたが、実際に観てみればこれほどショボい作品はないだろうという感想でした。私が観たのは『血の祝祭日』、『2000人の狂人』('64)、『ゴアゴアガールズ』('72)くらいなんですが、どれもこれも血ノリや動物の内臓を品無くブチ撒け、パーツ化する人体はもろマネキンという、見せ方に洗練の欠片も無く、ストーリーも有るのか無いのかよくわからない作品でした。

 しかし、こういうのを60年代から出したというのは凄いこと。当時はドライブインシアターで大当たりだったとか。タブーなんだけど皆が心底見てみたい要求にバッチリ応える偉業だったんですな。


(なにも知らず料理を注文するランプリー家のザマス。そして夫ダディと娘ティファニー)

 そういうDNAが受け継がれている本作はそれだけでも注目なんですが、これの吹替えを担当したのがまた大問題。あのジェイ・ブイ・ディーなんです。またかよ。相変わらず必殺の吹替でキメまくりです。但し、今回はオリジナルからしてパワー全開なので、いつものアドリブ連射は大人しめ。オリジナルの脱力感を更に煽る訛りと大袈裟な口調で攻めてる感じです。これが何度も観ていくうちに大ハマリ。ハーシェル・ゴードン・ルイス監督とジェイ・ブイ・ディー。最強タッグといえましょう。これも実に見事な作品に昇華しています。

 開始早々、浮浪者二人が店裏で動物の死体を拾い上げます。その時の会話。

 浮浪者1 「毛深いネズミだな、今晩のメシだずぇ」
 浮浪者2 「ネコの毛を剥げ、オレは火を起こす」

 拾い上げた動物どっちだよ。

 この後、店から漏れた赤い光を浴びた二人は、笑いながら首を切り、内臓を引きずり出し、自滅します。そしてオープニングタイトル。イカした主題歌をバックにファドが店に登場。この後、メタボで大食漢のルーミス刑事と関西弁のマイク刑事、そしてランプリー家の恐妻(ザマス)が絡み合い、女の子らが様々な手法で調理されていきます。


(初っ端の犠牲者。左手がえらいことになってますが、この後もっとえらいことに)

 スプラッタ描写については、相変わらず演出で盛り上げようとかせず、人体を切り開きグリグリする様をドアップの固定視点で延々追ってるだけです。スプラッタもある意味爽快感が得られるものですが、ここでのグチャグチャ粘性タップリの様はそんなスプラッタからは随分とかけ離れたものを感じます。長時間見てるとおかしくなりそうですが、うまくギリギリの範囲で収まってる感じです。

 スプラッタも映画手法に上手く乗せて盛り上げるのが常套ですが、この監督は見たいところだけ見せればいいじゃんという単純構造なんですね。元々、映画に対しては金儲けの一つとしか捉えていなかったようで、手法を凝らすことなく投げやり感が溢れています。よく考えれば映画史の始まりも単純な欲望に応えるだけの娯楽だったはず。人間に怖いもの見たさという心理がある以上、そんな監督を無視することはできないと思います。

 本作では、そんな監督センスにギャグを盛り込んだりしてますが、普段の生活背景に得体の知れない要素を配置して笑いを誘うようなことをしています。これが一見「は?」なノリなんですが、とてもシュールな要素もあって、後でジワジワとくる仕掛け。

 例えば、ランプリー家の夫ダディの運命。恐妻ザマスによって事故死するのですが、なんとその後の至る所でダディの死体が横たわっているんです。どこに横たわろうが、全員が普通に跨いだりして石のごとく相手にしません。オブジェと化しラストまでその調子。笑うしかないです。こういうセンスが総合的な破壊力を生んでいてクセになってしまいます。


(これが至高の宴、ランジェリーパーティーです)

 中盤でランプリー家の結婚を祝うランジェリーパーティーが開催されるのですが、恐らく本作のエロス担当になってるのかもしれません。まあ、女の子らが他愛のない会話で盛り上がり、ケーキをパクつくだけのダラダラしたものです。必然性は全く無いのですが、この時の吹替によって大変な見せ場になってしまいました。全員が頭頂部を抜けるような声を出し、しかもあまり会話にもなっていないパーティー。一部抜粋してみましょう。

「ねぇえ、昨日買った新型ブラよ、見て見てぇ」
「凄いステキ、綺麗なオッパイ」
「あらぁー、グラァっときちゃうわ、バッチリよぉ」
「ホントぉ?、でもお尻がおっきく見えない?」
「大丈夫、フレンチカットだからぁ、チョォー足なが効果ありよぉ。アタシのも同じスタイルよぉ」
「アタシのは、すっごく大胆な感じよぉ。大胆でしょぉ?」
「わかんないわぁ、多分ね。カワイイわぁ、どこのお店ぇ?」
「小さなブティックよ、んーふふ、んーふふふ、ふぅーんふぅーん」
「どーかしら?」
「チョォー、チョォー、ステキよぉ、マジカワイイわぁ」

 こんな調子です。

 ただ意外にも、この手にしてはキュートな女の子が勢揃い。お得感満載です。トップレスになった時のオッパイ加減がやたらナチュラルなんですが、これを見てあのピカソトリガー・シリーズが人造人間揃いというのを実感しました。


(オブジェ化した正装ダディを発見。しかし、出席者らには見えない存在のようです)

 女の子の様々なパーツが使われた料理は大好評で、ランプリー家の恐妻ザマスも太鼓判。結婚パーティでは見事な盛り付けで出席者も大満足。そんな出席者の一人である神父を、あの悪趣味の帝王ジョン・ウォーターズが演じています。新郎新婦を祝福した後、男色家らしく出会った男どもを誘いまくります。

 双子の男の子らに至っては、神父「地獄を知ってるかい?私といれば大丈夫だ」、双子「わかったよーん、わかったよーん」。子供なのに何故かオッサン声で吹替パワー炸裂。しかし、いい仕事してますねウォーターズ。サイテー映画で類は友を呼ぶってやつでしょうか。

 何の捻りもない展開なので、ラストは予想通りの結末を迎えます。でもこういう作品にまともなラストを期待してはいけません。殺人鬼ファドや関西弁マイク刑事の運命よりも、このラストにおいて常にメシのことしか頭にない大食漢ルーミス刑事や、オブジェ化したダディの死体に思いを馳せるのが、正しい見方なんだと思います。って、無理やりか。いつものことです。


(双子に話しかける我らがジョン・ウォーターズ神父。画が引き締まりますね)

監督の過去作品も吹替えしたら大化けしそうな予感。観てみたい(笑)。

【出典】『ブラッド・フィースト 血の祝祭日2』/ジェイ・ブイ・ディー

にほんブログ村 映画ブログへにほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログパーツ

6 件のコメント:

  1. こんばんは。
    ナチュラルなトップレスで暑気払いですね?
    血飛沫は苦手ですが、こういうのなら大丈夫な気がしてしまう記事ですね♪

    返信削除
  2. 毎回、期待を裏切らない、作品のレビュー!
    いいですねぇ~。

    オブジェ化した正装ダディを発見。しかし、出席者らには見えない存在ってのがおもしろい。

    1作目含めて、観てみたい。探してみます!

    応援ぽち!

    返信削除
  3. こんばんは。

    ブラを取ればナチュラル・・ そうですか~^ ^ それを確認しながらシュールなギャグに浸ってみたい気もします。 ジョン・ウォーターズが出たりもしてるんですね。

    遊んだ吹替というのは新ジャンルかもしれませんね。


    ガツンと応援!!

    返信削除
  4. >berry様
    こんばんは!

    トップレスがナチュラルすぎました。最近ボール玉サイズが普通になってましたが、これを観て改めましたよ。あと何も起きない平和すぎるパーティーは見ていてホッとします(笑)。
    吹替えで随分楽しくなってるとは思いますが、血はたっぷりというかベタベタダラダラなんで、そこんとこヨロシクです♪

    応援コメントありがとうございました♪

    返信削除
  5. >とら様
    こんばんは!

    期待を裏切らない、そういって頂けると嬉しいです。もっと更新が早ければいいんですが(笑;)。

    オブジェ化ダディですね。初めて見た時は目が点だったんですが、見終わってからジワジワ笑いがこみ上げてきて大変でした(笑)。神がかりなところもありますんで、見つけたら是非ご覧になって下さい。勿論、吹替えでね!(笑)。

    応援コメント、ありがとうございました♪

    返信削除
  6. >kiona様
    こんばんは!

    出てくる女の子、みなキレイだなと思っていたら、どうやらプレイメイトやモデルを揃えてたみたいです。なのにナチュラルオッパイ?な気もしますが、改造チックなやつよりホッとしますね(笑)。

    こういう作品に、思い切り変態役で出演してくれるジョン・ウォーターズは凄くいい人だと思います^^もっと活躍して欲しかったですけどね。
    なんか最近、遊びの吹替えばっか観てる気がします(笑)。

    応援コメント、ありがとうございました♪

    返信削除