2010年9月5日日曜日

映画『ラスト、コーション』 ・・・工作員になって異性を騙すともの凄いダッシュが拝めます

●原題:Lust, Caution(色,戒)
●ジャンル:ドラマ/ロマンス/スリラー/戦争
●上映時間:157min
●製作年:2007年
●製作国:アメリカ/中国/台湾/香港
●言語:中国語/日本語/英語
●カラー:カラー
◆監督:アン・リー
◆出演:トニー・レオン、タン・ウェイ、ジョアン・チェン、
ワン・リーホン、トゥオ・ツォンファ、その他大勢
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 まだまだ暑いです。なので、今回もまたホラーかと思いきや、全然違いました。日中戦争を背景にした人間ドラマです。しかも、大半がロマンス要素です。なんですが、いつもとはベクトル正反対ながらも、インパクトはかなりありました。ということで、変な汗をかくところは今回も一緒かもしれません。

【ストーリー】
 1938年。日中戦争まっただ中の中国から香港に逃れていた女子学生ワンは、あるきっかけで抗日思想を掲げる学生劇団に入団する。団長のクァンは、日本界隈の汪兆銘政権下で抗日家を排除し続ける特務機関員を暗殺しようと目論んでいた。工作員に抜擢されたワンは、富豪夫人に成りすまし、特務機関員のトップであるイーへの接触に成功する。しかし、イーと合体を繰り返すうちに、ワンの心には工作員と敵の関係を越えた感情が芽生えてしまう・・・。


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【感想と雑談】
 久々に観たアジア系の作品です。なんか、あまりに激しい性描写のせいで、各国では厳しい上映制限が設けられたらしいです。まあ、激しい描写とか言ってもポルノではないので、ギリギリセーフで映るはずはないのですが、ここはインパクトを頂き幅を広げ放題、と思い手を伸ばした次第です。

 ところで、このタイトルの意味、てっきり”最後の警告”あたりでOKだと思ってたんですが、全然違いましたね。この”ラスト”は色欲とか色情の意味になるんだそうです。因みに、中国語タイトルは『色,戒』。エロス厳禁でしょうか。それは困ります。しかし、綴りをよく見れば違いはわかりますが、カタカナ表記でラストって書かれたら、やっぱ前者と思い込んでしまいます。まあ、LustでもLastでも、内容からして意味は通じるような気はしますが。

 激しい性描写なんて観るのはいいけど、撮る対象としてはとても難しい部類に入るんじゃないでしょうか。監督は誰なんだ?と思っていたら、これがアン・リーだったのですね。過去にアクションやSFヒーローものも撮ってるので注目の的だったのですが、実は監督に対して恥ずかしい思い出があるのです。その名前の響きからして、普通に女流監督だと思っていたのです。アンですからね、アン。周りに豪語してました。「女流監督がスゲーよ」。そしたら後日に写真で見た姿、コーヒーカップを落としそうになりました。力いっぱいオッサンだったのです。改名して欲しいと思いました。


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(どー見てもオッサンなアン・リー監督です)

 アン・リー監督の作品は観てきた限り、どれも人間性を掘り下げた作風であるなと思います。『グリーン・デスティニー』('00)や『ハルク』('03)なんてアクションファンタジーものも撮ってますが、基本的には人間ドラマ重視の展開をしてますね。『グリーン・デスティニー』は中国の時代劇アクションで、やんちゃなチャン・ツィイーと大人の間を置くチョウ・ユンファとミシェル・ヨーの関係。動と静の対比が素晴らしいです。

 『ハルク』はかったるいと不評を聞きますが、監督自らモーションキャプチャしたハルクの一挙一動には凄く拘りがあって大好きです。『アイスストーム』('97)なんてアメリカの片田舎を描いた作品もありましたが、これには強烈な印象が残っています。一見平和な2つの家庭に嵐のごとくドロドロな異変が起きるという、有名な役者勢揃いも手伝ってのインパクト。究極の人間ドラマです。監督が持つアジア人としての繊細さが、欧米系においても一種独特な作りに結びついてるのかなと思います。

 さて、今回のエロス厳禁ですね。前述の通り、人間性に集中しがちなストーリーから狭苦しいものを想像してましたが、そんなことなかったです。主人公の純真な女子学生が抗日運動に傾倒し工作員として活動していく様をサスペンス交え活発的に描いてましたし、当時の上海の町並みもスケール感満載だったりと、結構エンタテイメント。特務機関員イーが日本軍に関わりある人物というのが、我々日本人からして気になる存在というのもあったと思います。

 ところで、イーの豪邸では、ジョアン・チェン演じるイー夫人が友人らとしょっちゅうマージャンをやってるのですが、これを見て思い出したのが『酔拳2』。『酔拳2』では、アニタ・ムイ演じるジャッキーの母親が同じく友人らとマージャンをしていて、旦那が帰ってくると速攻で整体術をやってるフリをするという、てっきり狙い所なんだと思っていたのです。が、本作を観て夫人同士のマージャン三昧は日常茶飯事であることがわかりました。勉強になりますね。イーが帰宅した瞬間、ジョアン・チェンも慌てふためき大暴走すれば楽しいのですが、残念ながら本作ではそういうイベントは起きません。


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 本作の売りである、特務機関員イーと女子学生工作員ワンの激しい関係。いつ命を狙われてもおかしくないイーはとても用心深く、初めはワンの誘いに簡単には乗ってきません。悶々とする中、突然イーが上海へ転勤することになり、暗殺未遂でガックシの抗日劇団ですが、その数年後に新たな抗日組織のスカウトによって元劇団員らに再びチャンスが訪れます。再度アタックしてきたワンに、イーは遂に大爆発。後先考えずに本能でワンの衣服を引き千切りベッドに押し倒します。

 確かに激しい性描写です。花瓶とか柱で隠すようなことはしません。二人の合体している様子をかなり堂々と捉えていて、ヘアもはっきりと映っていますが、肝心の部分は当然ながら見えません。だたし、影で暗くなってるところもあります。なので、明度を上手く調整すればひょっとすると?!かもしれません(笑)。

 女子学生工作員ワンを演じるのはタン・ウェイ。彼女の華奢な体型からすると、富豪夫人を演じるには幼すぎるんではないかと思えました(でもこの時28歳。見えないって)。その代りではないですが、まだ処女だったワンを工作員にする為に劇団員と愛のない初体験から特訓をする描写がなんともいえない後味を残します。

 貫禄ジョアン・チェンを妖艶な工作員役に持ってきた方がいいんじゃないかとも思いましたが、イーが女房よりはずっと若い女がいいという男の平均的本能を爆発させるあたり、それはそれで自然体でよかったと思います。このジョアン・チェン、『ツインピークス』('90)、『ハンテッド』('95)の頃よりずっと歳を取ってしまいましたが、綺麗な女性に変わりはなかったと思います。一応。


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 特務機関員イーを演じるのはトニー・レオン。香港の俳優といえばよく聞く名前ですね。でも代表作が何なのかよくわかりません。とにかくいぶし銀漂ってます。本作では終始ポーカーフェイスで合体の時だけ激しくグラインドな役ですが、ある場面だけもの凄い全身躍動を見せてくれます。トニー猛ダッシュ。一体どーいうことなのかは、観てのお楽しみです。

 何度も合体していくうちに本心から打ち解けるようになったイーは、ワンにある豪快なプレゼントをします。ワンは手玉に取るようになったイーに暗殺のチャンスが訪れたことを実感しますが、一方で芽生えた感情との葛藤に苦しみだします。このプレゼントのやりとりがワンとイーの最大の見せ場となり、その後はラストに向かって淡々と進んでいくだけとなります。さて、二人にはどんな運命が待っているのでしょうか。

 なんだか激しく合体するだけの作品に思われるかもしれませんが、実際は監督の丁寧な演出が冴え渡る見所満載の作品だと思います。少なくとも損はしないと思います。アン・リー監督は次作として『テイキング ウッドストック』('09)という伝説のウッドストック音楽祭の舞台裏を描いた作品を撮ってるんですね。ここでも一家族に焦点を当てた人間ドラマにしているのだとか。今後は、またアクションとかファンタジーものを撮ってもらいたいですね。


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4 件のコメント:

  1. 待ってました!
    丁寧なレビュー。この映画は映画館で観ました。何年前になるんんだろう。
    忘れていた部分を思い出しましたよ。
    でも、彼女28歳(当時)なんだ。若いですよね。

    私は女性なので、性特訓で処女喪失する場面に苦笑いしたことを覚えています。

    落ち着いてもう一度じっくり猛ダッシュを観たくなりました。

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  2. こんばんは。
    アンで間違えましたか^ ^ ありますよね、たまに。 ジェシーとかボビーとか、日本名でも ひろみ とか。 しかしこのオッサンとの落差は激しかったことでしょう^ ^

    本作は見たはずだけど、ほとんど思い出せず。 。 昔は激しい性描写で話題づくりをする映画もありましたが、最近はその向きにはアダルトビデオがあるので映画にエロを期待しなくなっている気もします。 そういう意味では懐かしい感覚で宣伝された作品かもしれません。

    ただときどき、AV以上に凄い映画があるのも事実で、映画よAVに負けるな、といいたいですね^ ^

    イージーにアイディアを盗まれてる場合もあります。 「フローズン・タイム」 という映画で、時間を止めて、いろいろイタズラをする男が出てきましたが、あれが今密かにアダルト界で流行ってるようですし。

    自分も もうすぐ、きわどい新作をアップする予定です。 乞うご期待。

    ガツンと応援!!

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  3. >berry様
    こんばんは!

    うははは、こんな記事になってしまいました。「色戒」大ファンに見つかったら怒られちゃうかな(笑)。
    そうそう、やられましたよ、彼女28歳なんだそーです。回想シーンなんか10代にも見える初々しさなんですね。トニーのグラインドに見事やられるところは、ちょっと痛々しかったけど勉強にはなりました(なんの)。

    鼻息抑えてもう一度、トニー猛ダッシュをご覧になって下さい。イケてると思います。

    応援コメント、ありがとうございました♪

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  4. >kiona様
    こんばんは!

    やられましたよ、アンに(笑)。私以外にもやられた人いるんじゃないでしょうか。
    こういうメジャーな作品の場合、どんだけ際どい描写でもダイレクトなことはしないと思うので、観方によっては悶々するだけな気がします(笑;)。まあそれでも映画としての芸術性とか追求されちゃんですよね。見世物の原点に戻って素直にエロだけ追っかければいいんですよ(笑)。

    しかし時間を止めて色んなイタズラですか。夢が詰まってますね。昔のカトちゃんケンちゃんでも、そんなコントやってたなあ^^
    そのアダルト版がどんなのかとても気になりますよ~。

    際どい新作アップ楽しみにしてます!
    応援コメント、ありがとうございました♪

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