2010年9月20日月曜日

映画『ピカソ・トリガー リーサル・エンジェルス』 ・・・第6弾 薄着の金髪美女とボディビルダーが懲りずに旧日本軍の金塊探し

●原題:L.E.T.H.A.L. Ladies: Return to Savage Beach
●ジャンル:アクション/スリラー
●上映時間:98min
●製作年:1998年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:アンディ・シダリス
◆出演:ジュリー・ストレイン、ロドリゴ・オブレゴン、ジュリー・K・スミス、シェア・マークス、マーカス・バグウェル、クリスチャン・レテリエ、キャリー・ウェストコット、ポール・ローガン、ジェラルド・オカムラ(笑)、その他大勢

 すっかり秋めいてきました。熱帯夜からも開放されて涼しさ満点ですね。いいぞ秋!まあ、あっと言う間に冬になるんでしょうけどね:-p
 そういえば、前回のAtomik Harmonik。あれから毎日聴いているのですが、なんだか身体が軽くなった気がします。やっぱり音楽っていいですよね。
  さて、今回はシリーズもののアレです。例のやつ。遂に最後の6作目に辿り付くことができました。足掛け2年2ヶ月・・・ふぅ。相変わらずのバカンス要素に過ぎ去った夏を思い起こすのも一興でしょう。もういいからと思われても投下しますよ。

【ストーリー】
 アメリカのダラス。安全と秩序を守る組織リーサル・フォースの本部からある極秘情報が盗み出される。それは、旧日本軍がフィリピンから没収した金塊を隠したとされる無人島を示す地図であった。かつてその無人島に遭難した元エージェントらによって、金塊は無事フィリピンに返還され事件は解決していたはずだったが、その後に再び金塊が無人島に運ばれ隠されていることが判明する。犯人はフィリピン人のマルチネスだ。アメリカに散らばるエージェントらは、金塊を狙うマルチネスに立ち向かう為、リーサル・フォースのハワイ支部に集結し作戦を練ることにするが・・・。



【感想と雑談】
 再生した瞬間、アンディ・シダリス御大が元気よく登場します。もうニヤけるしかありません。この日本向けに撮ったであろう特典映像は、ピカソトリガーに新たな楽しみを与えてくれたと言っても過言ではないでしょう。6作品も観てきた人なら誰でもわかります(そんな人どれだけいるんだ)。

 今回も女優ジュリー・ストレインが登場し惜しみなくオッパイをドーンとやりますが、あまりの至近距離に御大も目が眩みます。お決まりの日本向けチラシの紹介では、配給会社がやってしまったのか、ジュリー・ストレインが一切写ってないデザイン。

 ジュリー 「私が日本人似だから金髪の子を選んだのね」
 御大 「そう、ジュリーはよく日本人に間違われるんだ」

 間違われないだろ。

 「ピカソ・トリガー」シリーズは、あくまでも配給会社がタイトル化しただけであって、正式なシリーズではないと思います。だいたいピカソ・トリガーって1作目での悪人のコードネームですからね。別にエージェントや組織を指してる訳じゃないんです。

 まあでも、1、2作目で同じエージェントらが活躍し、その2作目が今回の6作目に繋がってたり、3作目以降のキャラが最後まで継続していることを考えると、これら6作品をシリーズとして捉えてもいいのかなと思ってます。といいますか、どの作品もほぼ一緒なので、いくらでも後付けでシリーズ化しても問題無しです(笑)。御大はどう思ってたのかな。



 一応、最終回ですからね、ここで久々にピカソトリガー(というか御大の全作品)の5大要素を、再確認しておきましょう。

 1.大柄で巨乳の金髪ギャル
 2.大柄でバズーカを持つボディビルダー
 3.爆発するヘリコプター
 4.爆発するジープ
 5.ハワイかラスベガスかダラスでのロケ

 これでバッチリ、ぐっと幅が広がるものと思います。たぶん。

 開始早々、ハワイロケです。久しぶりですね。国の安全と秩序を守るリーサル・フォースのハワイ支部が、いきなり常夏コテージというのが笑えます。ここがまたラジオ局になっていて、DJの女エージェントがアメリカ本土のエージェントらに暗号放送を流します。

「こちらKSXYからお送りするのは、愛とセックスと恋についての占いよ」

一般リスナーも聴いてるので、隠語を交えて流します。こういう暗号放送は実際にあったりするのでちょっと興味深いです。こんなホットな暗号放送をダラスで聞き入る男女のエージェントは、勿論ピカソトリガーならではの裸です。今回気合入れすぎたのか、女エージェントがボカシ入りとなりました。


(遊んでる風にしか見えない、リーサル・フォースのハワイ支部)

 序盤、ハワイ支部からの指令を聞いたダラスのエージェントらはテロリストの殲滅に向かいます。ここで大河を舞台にしたモーターボートとジェットスキーのチェイスシーン。陸地に着くと敵は何故か爆薬ケースを盾にし、エージェントらに銃で応戦。狙えってことだよな。女エージェントは期待に応え、ボウガンを爆薬ケースにぶち込み、敵を大爆破。底抜けにヘッポコなところがピカソ・トリガーです。 

 2作目の『~サベージ・ビーチ』でフィリピンに返還されたはずの金塊が、ある悪人によってちゃっかり無人島に戻され、今回それを再び奪いに行くところにエージェントが絡んでいきます。本筋はこんな感じですが、なんかですね、台詞だけで説明するシーンがダラダラ続くので、ちょっと油断すると訳がわからなくなるのですね。

 でも集中してスジがわかったとしても、何にもならないところがピカソ・トリガーなので、細かいところは気にしないことにします。晴天、バカンス、金髪オッパイ、銃撃戦、爆発、これだけ楽しめればOKなんです。

 そういえば途中、悪人が使う潜水艦が登場するんですね。それに載って例の無人島に向かうんですが、それがどう見ても観光用の潜水艦なんです。で、悪人の女がスイッチを適当に押すと、一応潜水を始めるのですが、速度遅すぎて全然前に進まない。その一方で、ブラック・ウィロウが乗るヨットが優雅に無人島に向かってる。

 またその一方で、女エージェントが水上セスナでブイーンと無人島に向かってる。なんでも「ハワイから無人島まで12時間かかるわ」とのこと。飛行機で12時間かかる距離を、観光用の潜水艦とヨットで移動というのは無理があると思うのですが、なぜか全員がほぼ同時に無人島に到着してしまいます。どこを通ってきたんだよ。考証など気にしないピカソト・リガーです。 


(敵の観光船と潜水艦です。景観がとってもハワイ)

 リーサル・フォースの司令官ブラック・ウィロウを演じるのは我らがジュリー・ストレイン(笑)。ハワイ支部ではシビアな表情でDJに指令を出しますが、その格好は殆ど裸のビキニ姿です。途中、部下が誘拐され、深刻な顔をしたと思ったら「ところで、散歩でもしない?」と側近のボデービルダーに色目を使います。その後、バカンスな散歩を済ませ、プールで熱い行為に走る司令官ブラック・ウィロウ。誘拐された部下の立場は。

 悪人マルチネスを演じるのはロドリゴ・オブレゴン。この人、全6作通して出演されてるのですね。顔付きがゴツイので悪役中心なんだと思いますが、まさにピカソトリガーといえばこの人という存在になっています。今回は、ラストにどんでん返しが待っていて、なかなか奥深い役どころであったと思います。

 エージェントのフーを演じるジェラルド・オカムラですが、あまりお笑い担当に徹していないのが残念でした。いきなり変な日本語の掛け声で登場するのは良かったですが、前作のオッパイビンタ直撃みたいなインパクトはなかったです。

 小柄ですが巨乳に間違いない2人のエージェント、コブラとタイガーを演じるのは前作から引き続きジュリー・K・スミスとシェア・マークス。しかしとにかく凄い。二人とも身体細いのに、あのサイズはいったいナニ?重さもありそうで、ちゃんと支えてあげないと大変なことになりそう。島上陸時のスタイルに世の男性諸氏も大満足。たぶん。


(もう何も言うことはありません。とにかく頑張って欲しいです)

 無人島には悪の手下も到着し、エージェントらは激しく応戦します。その手下らは忍者のくせに、拳銃を使います。なぜ手裏剣を使わない。そこにラジコン爆弾担当のコブラが、ラジコン戦車を忍者に向け発進させます。仁王立ちの忍者の真下で停止するラジコン戦車。何故か微動だにしない忍者は木っ端微塵になるのでした。ピカソ・トリガーは爆発そのもが大事なので、それに至る過程は気にしません。

 クライマックスは、掘り起こした木箱を開けた途端、金塊と一緒に収まっていた爆弾がカウントダウン。「1分以内に起爆装置にコインをはめれ」と音声がせかしますが、それを囲むエージェントらは焦ってるのか焦ってないのかよくわからない状態。コインがはまらないので「ヤスリで削れ」と言うと、万能ナイフを取り出しゴシゴシ削リ出す女エージェント。あと20秒くらいしかないのに奇跡のカウントダウン。間に合いました。よかったです。

 ざっと、こんな感じでしょうか。これで一通り「ピカソ・トリガー」シリーズの記事が出来上がりました。全作品が例の5ヶ条をベースに作られているので、確かにどれも似たような出来でした(『~ダラスコネクション』('94)はちょっと別格)。そういうことからか、御大の上辺だけを述べてる評価が多く感じます。

 ですが、DVD特典をじっくり観てみると、低い予算でいかに工夫を凝らすかを懸命に述べているし、家族ぐるみでエロス好きながらも一貫した姿勢で映画を作ろうとする思いが伝わってきて、ちょっとは見る目を持った方がいいんじゃないかと思うようになりました。正直、好感が持てましたし、なんだか愛着も沸いてきました。あれだけ同じことを延々繰り返すってのも、ある意味凄いことですよね。御大はギャグやネタにしている訳ではなく、純粋に自分が好きで皆に楽しんでもらいたい作品を薦めてきただけだと思うのです。

 ここまで読んで頂いて、ちょっとでも興味が沸きましたら、ぜひ手を伸ばしてみて下さい。間違いなく1時間半を無駄にします。が、そんな中に少しでも萌える要素があったなら優勝です。金髪グラマー、大型拳銃、タンクトップ、安い爆発などなど、アイテムはテンコ盛りです。息子ドリュー・シダリスが監督した4作目『~ダラス・コネクション』辺りがいいでしょう。ダメージは少ない方だと思います。(←薦めるなよ)


(ラストは勿論、全員カンパーイ♪でバッサリ暗転。あれ?フーがいない)

 よろしければ他のシリーズ作品もどうぞ。

 第1弾:『ピカソ・トリガー 殺しのコードネーム』('88)
 第2弾:『ピカソ・トリガー サベージ・ビーチ』('89)
 第3弾:『ピカソ・トリガー エネミー・ゴールド指令』('93)
 第4弾:『ピカソ・トリガー ダラス・コネクション』('94)
 第5弾:『ピカソ・トリガー デイ・オブ・ザ・ウォリアー』('96)

「ピカソ・トリガー」シリーズ完結。


<オマケ>
 シリーズ全作のIMDb評価(2015年1月27日時点)をまとめてみました。


 第1弾が高評価になるのはわかります。しかし、失速するはずのシリーズ中盤でまた盛り返しているという。きっと、御大の息子ドリュー・シダリス監督の功績でありましょう。
 という訳で、みんなも第4弾『ダラスコネクション』だけは観ようぜ(笑)。


(C) MMII MALIBU BAY FILMS. ALL RIGHTS RESERVED.
【出典】『ピカソ・トリガー リーサル・エンジェルス』/ワーナー・ホーム・ビデオ

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2010年9月12日日曜日

Atomik Harmonik ・・・スロベニアといえばこれです

 今回は音楽ネタです。
 スロベニアの音楽ユニット、Atomik Harmonik。

 だいぶ前ですが、キャンディストライパーって一体ナニ、という疑問から辿り着いてしまった曲『Turbo Polka』。これのPVが夢の世界すぎて、しばらくは”もうスロベニアしかない”と勝手に決め付けていた訳ですが、熱もやや冷めてしまったここ最近、またそれに輪をかけるようなPVを発見してしまい再燃焼。ここに紹介する次第であります。また始まったか・・・とお思いでしょうが、今回も懲りずに見守って頂ければと思います(笑)。
 
 Atomik Harmonik のコンセプトは、ヨーロッパのボヘミア地方に伝わる民族音楽Polkaということで、その曲調はとても軽快で牧歌的、そしてビジュアル的には目に染みるほどの眩しさという斬新な組合せ。総合的にハッピーな気分にしてくれる大変素晴らしいもの。メンバーは、男性ボーカル1人、女性ボーカル2人、アコーディオン1人、の4人構成のようです。
 
 PVはどれもこれも趣向を凝らしていますが、まず目に止まるのが女性ボーカルの美貌&ゴージャスさです。よくぞここまで育った!と叫ばずにはいられない容姿に、世の男性諸氏は滅亡寸前です。そして、イケメンとは言い難い男性ボーカルがいつもモテモテの役という、いつか夢は叶うぜな展開を見せてくれます。言葉は勿論わかりませんが、きっと見たまんまのことを歌ってるのでしょう。終始明るくて、とにかくハッピーになれます。一部悶々とするかもしれませんけどね。
 
 スロベニアは近年に社会主義連邦から独立した国の一つですが、元々西側寄りのところや国民気質もあって早くから情勢は安定したんだとか。こんな素敵な音楽が生まれるのも頷けますね。2004年に結成され現在も活動されてる模様ですが、残念ながら日本ではリリースされていないようで、ネットでもあまり情報がヒットしません。周辺諸国では人気があるようですが、かつてのヨーロッパ系のアバやアラベスクみたいに日本で流行ることはないんでしょうかね。スロベニアに行ってみたい今日この頃です。
 
 とにかく素晴らしいとしか言いようのないPV揃いです。・・・もしご覧頂けるようでしたらやや重めですので、一旦ポーズして読込みを進めてから、再生されることをお薦めします。

<2010/9/14 追記>
 後で知ったのですが、Atomik Harmonikは「Turbo Folk」というジャンルになるんだそうです。調べてみると、旧ユーゴスラビア一帯から生まれた比較的新しい音楽のようですが、「Folk=民族」を「ターボ」するってことで、なるほど新しくて激しい民族音楽が期待できる訳です。で、試しにYoutubeで検索してみました。そしたらクロアチアの女性歌手がヒットしたのですが、思ってたよりもアクが強くてヘビーな感じ。でも何度か聴く度にハマッていく予感。旧ユーゴの各国では様々な民族音楽がアレンジされてるってことか。このクロアチアの例からすると、東にいくほど濃い楽曲になっていくんじゃないでしょうか。スロベニアは旧ユーゴの最西端の国なので、Atomik Harmonikは「Turbo Folk」の中では最も明るい音作りをしてるユニットなのでは、と思ったりしてます。


『Brizgalna Brizga』('04)
 意味は「シリンジスプラッシュ」(なにそれ)。ファーストヒット曲のライブです。自分も拡声器持って乱入したくなるほど楽しそう。因みにこれをカバーしたのが『Turbo Polka』になります。ほんとスロベニアっていい国だなあ。素晴らしいです。


『Goveja župca』('06)
 意味は「牛肉スープ」? 出てくる男性連中が羨ましすぎるPVです。そんなに揺らさないで欲しい・・・と日記に書いておきました。素晴らしいです。


『Choco La』('??)
 チョコって色んな効能があるんだよな。思わず身体が熱くなります(笑)。割と最近のPVのようですが、女性ボーカルの1人に異変が起きてるのが気がかり。チョコの食いすぎ?それとも始まってる?素晴らしいです。


『Polkaholik』('06)
 懲りずに追加します(笑)。コントみたいに女性が入り乱れる様が、これまた楽しくて仕方ありません。お色気はデフォルト状態ですが、金髪フェチ、胸フェチ、花嫁フェチ、ナースフェチ、腋フェチにも満足頂ける(たぶん)オマケ付きのお得なPV。何度も観たくなる中毒性あり(自分だけ)。ところで、女性ボーカルの片割れはまた変わってないか。ウェルカムだけども。高画質アップぷりーず。誰も観てくれなくてもOK、これは自分専用の作業用PVなのです。素晴らしいです。


ところでキャンディストライパーってナニ?
 キャンディストライパー(Candy Striper)とは、女の子による病院内のボランティア活動だそうで、制服のピンクのストライプ模様がキャンディ柄に見えるところから命名されたらしいです。

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2010年9月5日日曜日

映画『ラスト、コーション』 ・・・工作員になって異性を騙すともの凄いダッシュが拝めます

●原題:Lust, Caution(色,戒)
●ジャンル:ドラマ/ロマンス/スリラー/戦争
●上映時間:157min
●製作年:2007年
●製作国:アメリカ/中国/台湾/香港
●言語:中国語/日本語/英語
●カラー:カラー
◆監督:アン・リー
◆出演:トニー・レオン、タン・ウェイ、ジョアン・チェン、
ワン・リーホン、トゥオ・ツォンファ、その他大勢
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 まだまだ暑いです。なので、今回もまたホラーかと思いきや、全然違いました。日中戦争を背景にした人間ドラマです。しかも、大半がロマンス要素です。なんですが、いつもとはベクトル正反対ながらも、インパクトはかなりありました。ということで、変な汗をかくところは今回も一緒かもしれません。

【ストーリー】
 1938年。日中戦争まっただ中の中国から香港に逃れていた女子学生ワンは、あるきっかけで抗日思想を掲げる学生劇団に入団する。団長のクァンは、日本界隈の汪兆銘政権下で抗日家を排除し続ける特務機関員を暗殺しようと目論んでいた。工作員に抜擢されたワンは、富豪夫人に成りすまし、特務機関員のトップであるイーへの接触に成功する。しかし、イーと合体を繰り返すうちに、ワンの心には工作員と敵の関係を越えた感情が芽生えてしまう・・・。


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【感想と雑談】
 久々に観たアジア系の作品です。なんか、あまりに激しい性描写のせいで、各国では厳しい上映制限が設けられたらしいです。まあ、激しい描写とか言ってもポルノではないので、ギリギリセーフで映るはずはないのですが、ここはインパクトを頂き幅を広げ放題、と思い手を伸ばした次第です。

 ところで、このタイトルの意味、てっきり”最後の警告”あたりでOKだと思ってたんですが、全然違いましたね。この”ラスト”は色欲とか色情の意味になるんだそうです。因みに、中国語タイトルは『色,戒』。エロス厳禁でしょうか。それは困ります。しかし、綴りをよく見れば違いはわかりますが、カタカナ表記でラストって書かれたら、やっぱ前者と思い込んでしまいます。まあ、LustでもLastでも、内容からして意味は通じるような気はしますが。

 激しい性描写なんて観るのはいいけど、撮る対象としてはとても難しい部類に入るんじゃないでしょうか。監督は誰なんだ?と思っていたら、これがアン・リーだったのですね。過去にアクションやSFヒーローものも撮ってるので注目の的だったのですが、実は監督に対して恥ずかしい思い出があるのです。その名前の響きからして、普通に女流監督だと思っていたのです。アンですからね、アン。周りに豪語してました。「女流監督がスゲーよ」。そしたら後日に写真で見た姿、コーヒーカップを落としそうになりました。力いっぱいオッサンだったのです。改名して欲しいと思いました。


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(どー見てもオッサンなアン・リー監督です)

 アン・リー監督の作品は観てきた限り、どれも人間性を掘り下げた作風であるなと思います。『グリーン・デスティニー』('00)や『ハルク』('03)なんてアクションファンタジーものも撮ってますが、基本的には人間ドラマ重視の展開をしてますね。『グリーン・デスティニー』は中国の時代劇アクションで、やんちゃなチャン・ツィイーと大人の間を置くチョウ・ユンファとミシェル・ヨーの関係。動と静の対比が素晴らしいです。

 『ハルク』はかったるいと不評を聞きますが、監督自らモーションキャプチャしたハルクの一挙一動には凄く拘りがあって大好きです。『アイスストーム』('97)なんてアメリカの片田舎を描いた作品もありましたが、これには強烈な印象が残っています。一見平和な2つの家庭に嵐のごとくドロドロな異変が起きるという、有名な役者勢揃いも手伝ってのインパクト。究極の人間ドラマです。監督が持つアジア人としての繊細さが、欧米系においても一種独特な作りに結びついてるのかなと思います。

 さて、今回のエロス厳禁ですね。前述の通り、人間性に集中しがちなストーリーから狭苦しいものを想像してましたが、そんなことなかったです。主人公の純真な女子学生が抗日運動に傾倒し工作員として活動していく様をサスペンス交え活発的に描いてましたし、当時の上海の町並みもスケール感満載だったりと、結構エンタテイメント。特務機関員イーが日本軍に関わりある人物というのが、我々日本人からして気になる存在というのもあったと思います。

 ところで、イーの豪邸では、ジョアン・チェン演じるイー夫人が友人らとしょっちゅうマージャンをやってるのですが、これを見て思い出したのが『酔拳2』。『酔拳2』では、アニタ・ムイ演じるジャッキーの母親が同じく友人らとマージャンをしていて、旦那が帰ってくると速攻で整体術をやってるフリをするという、てっきり狙い所なんだと思っていたのです。が、本作を観て夫人同士のマージャン三昧は日常茶飯事であることがわかりました。勉強になりますね。イーが帰宅した瞬間、ジョアン・チェンも慌てふためき大暴走すれば楽しいのですが、残念ながら本作ではそういうイベントは起きません。


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 本作の売りである、特務機関員イーと女子学生工作員ワンの激しい関係。いつ命を狙われてもおかしくないイーはとても用心深く、初めはワンの誘いに簡単には乗ってきません。悶々とする中、突然イーが上海へ転勤することになり、暗殺未遂でガックシの抗日劇団ですが、その数年後に新たな抗日組織のスカウトによって元劇団員らに再びチャンスが訪れます。再度アタックしてきたワンに、イーは遂に大爆発。後先考えずに本能でワンの衣服を引き千切りベッドに押し倒します。

 確かに激しい性描写です。花瓶とか柱で隠すようなことはしません。二人の合体している様子をかなり堂々と捉えていて、ヘアもはっきりと映っていますが、肝心の部分は当然ながら見えません。だたし、影で暗くなってるところもあります。なので、明度を上手く調整すればひょっとすると?!かもしれません(笑)。

 女子学生工作員ワンを演じるのはタン・ウェイ。彼女の華奢な体型からすると、富豪夫人を演じるには幼すぎるんではないかと思えました(でもこの時28歳。見えないって)。その代りではないですが、まだ処女だったワンを工作員にする為に劇団員と愛のない初体験から特訓をする描写がなんともいえない後味を残します。

 貫禄ジョアン・チェンを妖艶な工作員役に持ってきた方がいいんじゃないかとも思いましたが、イーが女房よりはずっと若い女がいいという男の平均的本能を爆発させるあたり、それはそれで自然体でよかったと思います。このジョアン・チェン、『ツインピークス』('90)、『ハンテッド』('95)の頃よりずっと歳を取ってしまいましたが、綺麗な女性に変わりはなかったと思います。一応。


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 特務機関員イーを演じるのはトニー・レオン。香港の俳優といえばよく聞く名前ですね。でも代表作が何なのかよくわかりません。とにかくいぶし銀漂ってます。本作では終始ポーカーフェイスで合体の時だけ激しくグラインドな役ですが、ある場面だけもの凄い全身躍動を見せてくれます。トニー猛ダッシュ。一体どーいうことなのかは、観てのお楽しみです。

 何度も合体していくうちに本心から打ち解けるようになったイーは、ワンにある豪快なプレゼントをします。ワンは手玉に取るようになったイーに暗殺のチャンスが訪れたことを実感しますが、一方で芽生えた感情との葛藤に苦しみだします。このプレゼントのやりとりがワンとイーの最大の見せ場となり、その後はラストに向かって淡々と進んでいくだけとなります。さて、二人にはどんな運命が待っているのでしょうか。

 なんだか激しく合体するだけの作品に思われるかもしれませんが、実際は監督の丁寧な演出が冴え渡る見所満載の作品だと思います。少なくとも損はしないと思います。アン・リー監督は次作として『テイキング ウッドストック』('09)という伝説のウッドストック音楽祭の舞台裏を描いた作品を撮ってるんですね。ここでも一家族に焦点を当てた人間ドラマにしているのだとか。今後は、またアクションとかファンタジーものを撮ってもらいたいですね。


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2010年8月28日土曜日

映画『ブラッド・フィースト 血の祝祭日2』 ・・・殺人ケータリングと夢のランジェリーパーティーです

●原題:Blood Feast 2: All U Can Eat
●ジャンル:ホラー/コメディ
●上映時間:92min
●製作年:2002年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ハーシェル・ゴードン・ルイス
◆出演:ジョン・マッコネル、マーク・マクラクラン、メリッサ・モーガン、トニ・ワイン、J・P・デラウセイ、クリス・マウアー、クリスティ・ブラウン、クリスティーナ・クェンカ、ミシェル・ミラー、クリスティ・ポリト、ジル・ラオ、シンディ・ローバル、ベロニカ・ラッセル、ジョン・ウォーターズ、その他大勢

 気が付いたらもうちょっとで9月なんですね。夏もそろそろ終わりでしょうか。ラッキー。まだまだ暑いですけどね。さて、今回は101本目ということで、調子こいて夢の国製作の犬作品にしようかと思いましたが、止めました。ということで今回も暑い時の必需品、ホラー作品です。スプラッタでもありますが、前回と同様、怖くなるというより、変な汗が流れるだけの珍作品かもしれません。’60年代のスプラッタ元祖の続編になります。

【ストーリー】
 アメリカのある町。料理人のファドは祖父が経営していた店を相続しケータリング(仕出)を始めようとするが、店内に放置されていたエジプトの女神像に取り憑かれ殺人鬼に豹変してしまう。実はかつてエジプト料理を出していた祖父も同じ運命を辿っていたのだ。そうとは知らず、町に来たばかりのランプリー家は、娘の結婚パーティ用にとファドに料理の注文をしてしまう。ウハウハなファドは町の娘を捕らえてはその血肉を使って料理の準備を開始。過去の経緯からも警察はいち早くファドをマークするが、なかなか証拠を掴むことができず、遂に結婚パーティの日を迎えることになってしまう・・・。



【感想と雑談】
 スプラッター作品の第一号と言われる『血の祝祭日』('63)。これを世に出したハーシェル・ゴードン・ルイス監督が、再びメガホンを取り、続編としてパワーアップさせてしまったのが本作です。ひょっとすると猛烈な若年ファンが、やる気ない監督を駆り立てプロデュースし、再びやらかそうとしたのかもしれません。この辺よくわかりませんが、見事に当時のテイスト漲る作品となっています。それにしても何歳なんだよ監督。因みに’03年の東京ファンタ映画祭で上映されたそうです。

 80年代のスプラッタ全盛期に突然リリースされた監督作品には驚愕しまくりでしたが、実際に観てみればこれほどショボい作品はないだろうという感想でした。私が観たのは『血の祝祭日』、『2000人の狂人』('64)、『ゴアゴアガールズ』('72)くらいなんですが、どれもこれも血ノリや動物の内臓を品無くブチ撒け、パーツ化する人体はもろマネキンという、見せ方に洗練の欠片も無く、ストーリーも有るのか無いのかよくわからない作品でした。

 しかし、こういうのを60年代から出したというのは凄いこと。当時はドライブインシアターで大当たりだったとか。タブーなんだけど皆が心底見てみたい要求にバッチリ応える偉業だったんですな。


(なにも知らず料理を注文するランプリー家のザマス。そして夫ダディと娘ティファニー)

 そういうDNAが受け継がれている本作はそれだけでも注目なんですが、これの吹替えを担当したのがまた大問題。あのジェイ・ブイ・ディーなんです。またかよ。相変わらず必殺の吹替でキメまくりです。但し、今回はオリジナルからしてパワー全開なので、いつものアドリブ連射は大人しめ。オリジナルの脱力感を更に煽る訛りと大袈裟な口調で攻めてる感じです。これが何度も観ていくうちに大ハマリ。ハーシェル・ゴードン・ルイス監督とジェイ・ブイ・ディー。最強タッグといえましょう。これも実に見事な作品に昇華しています。

 開始早々、浮浪者二人が店裏で動物の死体を拾い上げます。その時の会話。

 浮浪者1 「毛深いネズミだな、今晩のメシだずぇ」
 浮浪者2 「ネコの毛を剥げ、オレは火を起こす」

 拾い上げた動物どっちだよ。

 この後、店から漏れた赤い光を浴びた二人は、笑いながら首を切り、内臓を引きずり出し、自滅します。そしてオープニングタイトル。イカした主題歌をバックにファドが店に登場。この後、メタボで大食漢のルーミス刑事と関西弁のマイク刑事、そしてランプリー家の恐妻(ザマス)が絡み合い、女の子らが様々な手法で調理されていきます。


(初っ端の犠牲者。左手がえらいことになってますが、この後もっとえらいことに)

 スプラッタ描写については、相変わらず演出で盛り上げようとかせず、人体を切り開きグリグリする様をドアップの固定視点で延々追ってるだけです。スプラッタもある意味爽快感が得られるものですが、ここでのグチャグチャ粘性タップリの様はそんなスプラッタからは随分とかけ離れたものを感じます。長時間見てるとおかしくなりそうですが、うまくギリギリの範囲で収まってる感じです。

 スプラッタも映画手法に上手く乗せて盛り上げるのが常套ですが、この監督は見たいところだけ見せればいいじゃんという単純構造なんですね。元々、映画に対しては金儲けの一つとしか捉えていなかったようで、手法を凝らすことなく投げやり感が溢れています。よく考えれば映画史の始まりも単純な欲望に応えるだけの娯楽だったはず。人間に怖いもの見たさという心理がある以上、そんな監督を無視することはできないと思います。

 本作では、そんな監督センスにギャグを盛り込んだりしてますが、普段の生活背景に得体の知れない要素を配置して笑いを誘うようなことをしています。これが一見「は?」なノリなんですが、とてもシュールな要素もあって、後でジワジワとくる仕掛け。

 例えば、ランプリー家の夫ダディの運命。恐妻ザマスによって事故死するのですが、なんとその後の至る所でダディの死体が横たわっているんです。どこに横たわろうが、全員が普通に跨いだりして石のごとく相手にしません。オブジェと化しラストまでその調子。笑うしかないです。こういうセンスが総合的な破壊力を生んでいてクセになってしまいます。


(これが至高の宴、ランジェリーパーティーです)

 中盤でランプリー家の結婚を祝うランジェリーパーティーが開催されるのですが、恐らく本作のエロス担当になってるのかもしれません。まあ、女の子らが他愛のない会話で盛り上がり、ケーキをパクつくだけのダラダラしたものです。必然性は全く無いのですが、この時の吹替によって大変な見せ場になってしまいました。全員が頭頂部を抜けるような声を出し、しかもあまり会話にもなっていないパーティー。一部抜粋してみましょう。

「ねぇえ、昨日買った新型ブラよ、見て見てぇ」
「凄いステキ、綺麗なオッパイ」
「あらぁー、グラァっときちゃうわ、バッチリよぉ」
「ホントぉ?、でもお尻がおっきく見えない?」
「大丈夫、フレンチカットだからぁ、チョォー足なが効果ありよぉ。アタシのも同じスタイルよぉ」
「アタシのは、すっごく大胆な感じよぉ。大胆でしょぉ?」
「わかんないわぁ、多分ね。カワイイわぁ、どこのお店ぇ?」
「小さなブティックよ、んーふふ、んーふふふ、ふぅーんふぅーん」
「どーかしら?」
「チョォー、チョォー、ステキよぉ、マジカワイイわぁ」

 こんな調子です。

 ただ意外にも、この手にしてはキュートな女の子が勢揃い。お得感満載です。トップレスになった時のオッパイ加減がやたらナチュラルなんですが、これを見てあのピカソトリガー・シリーズが人造人間揃いというのを実感しました。


(オブジェ化した正装ダディを発見。しかし、出席者らには見えない存在のようです)

 女の子の様々なパーツが使われた料理は大好評で、ランプリー家の恐妻ザマスも太鼓判。結婚パーティでは見事な盛り付けで出席者も大満足。そんな出席者の一人である神父を、あの悪趣味の帝王ジョン・ウォーターズが演じています。新郎新婦を祝福した後、男色家らしく出会った男どもを誘いまくります。

 双子の男の子らに至っては、神父「地獄を知ってるかい?私といれば大丈夫だ」、双子「わかったよーん、わかったよーん」。子供なのに何故かオッサン声で吹替パワー炸裂。しかし、いい仕事してますねウォーターズ。サイテー映画で類は友を呼ぶってやつでしょうか。

 何の捻りもない展開なので、ラストは予想通りの結末を迎えます。でもこういう作品にまともなラストを期待してはいけません。殺人鬼ファドや関西弁マイク刑事の運命よりも、このラストにおいて常にメシのことしか頭にない大食漢ルーミス刑事や、オブジェ化したダディの死体に思いを馳せるのが、正しい見方なんだと思います。って、無理やりか。いつものことです。


(双子に話しかける我らがジョン・ウォーターズ神父。画が引き締まりますね)

監督の過去作品も吹替えしたら大化けしそうな予感。観てみたい(笑)。

【出典】『ブラッド・フィースト 血の祝祭日2』/ジェイ・ブイ・ディー

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2010年7月19日月曜日

映画『レモ/第一の挑戦』 ・・・早すぎたマトリックスと自由の女神の改修見学ツアーです

●原題:Remo Williams: The Adventure Begins
●ジャンル:アクション/アドベンチャー/コメディ/犯罪/スリラー
●上映時間:121min
●製作年:1985年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ガイ・ハミルトン
◆出演:フレッド・ウォード、ジョエル・グレイ、ケイト・マルグレー、ウィルフォード・ブリムリー、チャールズ・シオッフィ、その他大勢

 ほぼ梅雨明けしたようですね。暑いです。夏本番突入ですな。今年は泳ぎに行けるかな?というか泳ぎに行きたいと思うようになれるかな(爆)。できるだけアウトドアを目指したいものです。
さて、今回はまた古くて、知られてるのか知られてないのかイマイチ不明な作品です。でもね、油断するときっとやられる楽しいアクション作品なんですよ。これが。

【ストーリー】
 現代のアメリカ。熱血漢のブサイク警官マキンは犯罪撲滅に忙しい毎日を送っていた。そんなある日、マキンは何者かによってパトカーごと海に落とされてしまう。それは政府公認の秘密組織による偽装事故であった。病院で目覚めたマキンは整形された上にレモと命名され、世の悪を抹消するエージェントに仕立て上げられる。組織のひとり、韓国武術マスタのチュンに弟子入りしたレモは組織に不満を漏らしながらも成長を続け、遂に軍事産業を牛耳る悪徳企業の討伐に向かうことになる・・・。



【感想と雑談】
 これ初めて観た時はビックリしました。どこかヘンテコなんだけど、この気合の入れ具合は一体なに?スゲーぞ!!そして、何度も観ていくうちに「これは大傑作」という評価が確定しました。政府もほんの一部しか認識していない秘密組織が登場し、世にはびこる悪を退治する必殺仕事人な設定なんですが、至る所でのアイデアやユーモア、そして体を張りまくったこれぞアクションな展開が楽しくて仕方ありません。

 元々ブサイク顔の警察官が組織によって整形を施され、主人公の顔になるという設定ですので、演じるフレッド・ウォードにはブサイクメイクを施し、それを取ることで整形後の顔を表現しています。ブサイク、ブサイク煩いんですが、実は本編では短い夜の場面だけなので、その顔をはっきりと拝むことはできません。といいますか、気が付いたらフレッド・ウォードの顔になっていたという具合です。本当に整形したのかよ?と思ったりもしますが、些細なことなのでスルーしてもいいでしょう。

 このフレッド・ウォードは既に中年の領域に入っていて、観ている側は初め不安になります。が、心配は一切不要です。怒涛の展開にそんなことすぐさま吹き飛んでしまうからです。メインの敵となるのは兵器開発を一手に担う悪徳企業。レモは独自に捜査を行なう善良な軍人を裏でサポートしつつ、最終的に社長とその手下を始末することになります。こういう大筋に、とんでもない設定や見せ方が乗っかってくる訳ですが、それまでのアメリカ発でこんな要素が詰め込まれた作品ってあったのでしょうか。



 さっそく組織のボスから、ある要人の暗殺を命じられるレモ。向かった先には小柄のアジア系老人がいました。実はこの老人、組織が雇う韓国武術シナンジュのマスター・チュンであり、レモの適正を試す為に待ち構えていた訳です。そうとは知らないレモは容赦なく攻撃します。ここで衝撃の銃弾避けが披露されます。

 レモがどんなに拳銃を撃ちまくっても、一発もチュンに当てることができません。撃つと同時にチュンは素早い動きで銃弾を避けます。マトリックスなんぞ目じゃないです。やがて間近に迫ったチュンは拳銃を奪うとレモを片手で倒してしまいます。実にエキセントリックです。この二人によるドタバタは、驚きと同時に楽しさ満点です。因みにチュンは”カンフー、空手、忍術は影の存在。韓国シナンジュこそ太陽”とか抜かすのですが、ここはエンタテイメントと割り切って楽しむべきです。

 サイレントアサシンに育てるべく、まずチュンはやたらレモを高所に連れていき、恐怖心を取り除く特訓を行ないます。なんと観覧車を使った特訓です。ここでゴンドラに乗るのはチュンのみ。レモはゴンドラの床下にぶら下がります(笑)。今なら容易にデジタル合成を使うでしょう。でも当時はそんなに技術はありません。光学合成は使えましたがリアリティに欠けます。ということで、レモ演じるフレッド・ウォードをホントにゴンドラ床下にぶら下げてしまいました。ゴンドラが頂上に達する辺りでは、なんと屋根の上に立たせてしまいます。あのー、フレッドさんの背景が普通に絶景になってますけど・・・。大丈夫?



 高所の特訓はこれだけではありません。本作の銃弾避けに続く名場面、自由の女神を使った特訓です。撮影当時がちょうど改修工事の時期だったようですね。女神像をスッポリと覆うように足場が組まれてます。レモはその足場を利用して松明の先端に行き、直立不動の姿勢で高所に佇みます。ここでもフレッドさんの背景は観覧車の時以上に絶景です。

 と、ここで、悪徳企業が放った刺客3人が登場。本作で一番のアクション場面でございましょう。どう見ても特撮ではなく、本当に足場をロケ地として撮影していて、足場にぶら下がったり飛び移ったりします。役者だけでなくスタッフらも非常に危険な状況にあるのではないか、と心配せずにはいられない緊張感が充満しています。ここでも殆どがフレッドさん本人が演じているのですが、凄まじい役者根性ですよね。ハリウッドの撮影は安全面には大変厳しいと聞きますが、それでもあの場所で撮影ってのは誰でも躊躇するんじゃないでしょうか。

 レモが自由の女神を上から下に移動しながら刺客を仕留めていく間、チュンはのんびり海を眺めていたりします。しかし、レモをこっそり背後から狙撃しようとする刺客を見つけるや、颯爽とサイレントアサシンを発動。気が付いたらチュンの足下に刺客が転がっていました。秒殺すぎます。ここでのチュンはカッコよすぎ。



 一通り特訓を終えたレモは、軍の上層部と密談中の社長軍団を仕留める為、山間部にある軍事演習場に向かいます。途中、悪徳企業を捜査中のフレミング少佐やチュンとも合流。その後、乗ったトラックが斜面を転がり落ちるは、演習用の砲撃ターゲットにされるわで、大変な目に合いますが、なんとか社長を追い詰め対峙することに成功します。この時、レモに銃を向ける社長。ここでレモが取る行動とは・・・そうシナンジュ大爆発。チュンの奥義を体得したレモは、果たして社長を仕留めることができるのか?カッコいいぜレモ!ちょっと笑っちゃうけどね(笑)。

 初めは犬猿の仲だったレモとチュンの関係も、やがて親子のような絆で結ばれるようになります。この二人は作品の肝といってもいいでしょう。チュンの謎めいた生活様式に戸惑いながらも順応していくレモ。そんな二人がアパートの厨房で交わす会話は独特のリズムとユーモアがあって楽しいです。チュンを演じるのはジョエル・グレイ。思い切り白人さんなんですが、メイクが結構きまっているので、つい最近まで純粋にアジア人が演じていると思っていました。名前からわかるってのにね(笑;)。

 原作は『デストロイヤー』という人気シリーズ小説とのことですが、映画化は思わせぶりのタイトル付けといて結局これでお仕舞いとなってる模様です。続編かリメイクでもやってくれないかな。今ならネタ不足だろうし、アメコミ映画に便乗して一発出すこと出来るんじゃないかな。第二の挑戦をお願いします(笑)。

 25年も前の作品ですが、未だ衝撃度が衰えることのない傑作です。特に高所のアクションが好きで、ご覧になっていない方は是非どうぞ。あまりレンタルには置かれていない気配ですが、もし見かけられたら手に取ってみて下さい♪

<追記 2010/8/1>
 TSUTAYAで、いつの間にか名作100選みたいな企画やってて、本作が大量に置かれてました。みな半信半疑なのか殆ど手付かずでしたが(笑;)。しかし、前から旧作として置いてあったっけ?どうなんだ?もっと早くアピールすれよな。



(c)1985 Orion Pictures Corporation. All Rights Reserved.
【出典】『レモ/第一の挑戦』/ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン

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2010年7月4日日曜日

サッパリ感溢れるデビッド・ボウイがやってしまってます


 7月になってしまいました。まだ梅雨ですが、すっかり暑くなってますね。なので暑気払いに映画ネタを一発・・・といきたいところですが、ここは久々に音楽ネタでいきたいと思います(笑)。

 昔からよく聴いてるデビッド・ボウイなんですが、YouTubeで珍しいライブ動画を見つけてしまいました。好きな曲の上位に入る『Station To Station』なんですが、発表当時の’76年頃のライブを拝めるという嬉しい動画。それまでギトギト(それはそれで魅力大)だったのが、洗い落としたかのようにサッパリ感溢れるキャラになって登場するのにウットリ。

 で、珍しいと思ったのが、このライブでボウイがなんと歌詞を間違えてしまうところ。初めて見ましたよボウイが間違えるところなんて。ハッと気づいて「やってもうた」な顔で笑い出すとこ、なんだかお茶目で可愛いくもあります(笑)。他にも色々とライブ動画を観ておりますが、歌詞間違えるって無かったんじゃないですかね。まあ、抑揚なく歌詞を繰り返すところなんで、結構間違いやすいのかも。例えるならジッタリン・ジンの『プレゼント』をスローにしたような曲。違うか。

 因みにこの曲、2部構成による10分程の大作になっていて、前半は列車が重苦しく走るような様、後半は晴れ渡った中を疾走していくような様を歌い上げてます。この前半から後半に転調するところが気持ち良すぎて堪りません。スタジオ録音の原曲版もいいですが、様々なアレンジの入るライブ版もいいですよね。特に今回のようなハプニングも起きたりするし(笑)。いいぞ!ボウイ!!

『Station To Station』('76年)
 ちょっとボケて残念な動画ですが、3:25からボウイのやっちまったタイム突入です。フレーズを1個飛ばした模様(笑)。しかしカッコ良すぎるよなこの頃のボウイ。映画『地球に落ちてきた男』('75)ではエイリアン役が妖艶すぎて男でもやられる始末。それにしてもこのライブ、コーラスの声でけーよ(笑)。

 動画が埋め込み禁止となりましたので、よろしければコチラのリンクからどうぞ♪
 ⇒ http://youtu.be/JwbxckoDgUA

『Look Back in Anger』('79年)  
 せっかくなんで好きな曲もう1本挙げときますね。’70年代後半のボウイめっちゃカッコええ!と思うんですが、皆さんはどう思われるで しょうか?ただの昔の優男って感じでしょうか。今見ても、もの凄くカリスマ性のある顔付きしてると思うんですよね。瞳孔が左右アンバランスなのもその一因でしょう。線はごっつ細いんですが(笑)。



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