2010年5月5日水曜日

映画『キルスティン・ダンストの大統領に気をつけろ!』 ・・・アメリカ大統領が女子高生にやられます+衝撃の秋葉原

●原題:Dick
●ジャンル:コメディ/犯罪
●上映時間:94min
●製作年:1999年
●製作国:アメリカ/カナダ/フランス
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:アンドリュー・フレミング
◆出演:キルスティン・ダンスト、ミシェル・ウィリアムズ、
ダン・ヘダヤ、ウィル・フェレル、テリー・ガー、その他大勢
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 どうもです。皆さんお元気でしょうか?今回はキルスティン・ダンストものです。タイトルからしてドーンと名前が入ってます。力入ってますね。これまた古い作品ですが、最後に衝撃のキルスティン+αを用意してますんで、ちょっとでも楽しんでもらえればと思います。

【ストーリー】
 ’72年のアメリカ。女子高生のベッツィーとアーリーンは、社会見学でホワイトハウスに訪問した際、ニクソン大統領から愛犬の散歩係を命じられてしまう。実はこの二人、たまたまウォーターゲート事件の現場に居合わせていたことから、大統領にマークされてしまったのだ。そんなことは露知らず、二人は青春を謳歌しながらもニクソン政権に深く関わっていく。。。


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【感想と雑談】
 ウォーターゲート事件の真相を掴んでいたのは実は二人の女子高生であった、というパラレルワールドな設定を当時のポップでサイケな文化を背景に楽しく描いています。この二人の女子高生ベッツィーとアーリーンを演じるのがキルスティン・ダンストとミシェル・ウィリアムズ。とにかく若い!はっちゃけてます。キルスティン・ダンストは美人でないとよく言われますが、ヨーロッパ系の顔立ちも相俟ってとても魅力ある女優さんだと思います。見事頭がスパークしている女子高生をとても可愛く演じています。

 一方のミシェル・ウィリアムズも見事な女子高生を演じていますが、キルスティンよりもやや落ち着いた設定になっています。実年齢でもミシェルの方がキルスティンより2つ年上なので風格にも現れている感じでしょうか。まあそれでもポッチャリしていて十分可愛いのですが。とにかく、今ではすっかり成長してしまったこの二人を素の女子高生として見られる本作は、実に味わい深いものがあるのです。

 ベッツィーとアーリーンがどのようにして事件に絡むのかというと、もうのっけから事件の舞台ウォーターゲート・ビルにアーリーンが住んでる設定になっていて(笑)、ある晩の出来事から二人の行動がリンクしていく訳です。ある晩の出来事とは勿論、5人の男による民主党オフィスへの侵入。これが即発覚した理由が、1F駐車場ドアにテープが貼られアンロック状態になっているのを警備員が発見したからですが、実はこれをやったのがベッツィーとアーリーン。なんと深夜にアイドル宛のファンレターを投函するのに駐車場をこっそり経由しなければならなかったから(笑)。

 この時、男達の仲間と鉢合わせするも、ただの泥棒と勘違いし一目散で逃げ切る二人は、後日に社会見学で訪問したホワイトハウスで、ニクソン大統領や高官達に完全マークされてしまいます。事件のことを闇に葬りたい大統領は、二人を監視する為に愛犬の散歩係を命じます。超感激の二人は、その後クッキーを焼いては訪問を重ね、犬の散歩に励みます。しかし、毎日のようにホワイトハウスに出入りする二人は、さすがに自分らが何かヤバイことに関わっているのではないかと気付き始めます。


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 結局、二人はワシントン・ポストに事件の真相を暴露し始め、遂には大統領が辞任に追いやられるという、事実通りの展開を迎えてしまいます。この一連の過程で、実際に公表されてきた当時の真相が、二人の行動によって上手くリンクしていくのが面白いです。ドアに貼られたテープ、盗聴テープの削除された18分間、ソ連との核軍縮、ヘリコプターに乗る際のピースサイン、なんてのが全て女子高生レベルの行動に起因していたのです(笑)。

 情報提供元として二人が「ディープスロート」と呼ばれるようになった経緯も傑作でした。また、当時のファッションや音楽をふんだんに取り入れてるのも良かったです。特に二人の衣装がコロコロ変わっていく辺り、可愛くてまるで着せ替え人形を見ているようでした。ラジオ会館な諸氏には堪えられない出来でございましょう(違)。

 ニクソン大統領を演じるのはダン・ヘダヤ。この人、いい顔付きしてますよね。必ず思い出すのが『コマンドー』の悪玉役なんですが、どうせならカリフォルニア州知事と対決すればいいのに、とか思ってしまうのは自分だけだと思います(当時はシュワ知事じゃないので意味無)。ワシントン・ポストの記者を演じるのはウィル・フェレル。もう一人の記者とコンビを組んでるのですが、これが事件を真面目に描いた『大統領の陰謀』('76)で同役を演じたロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンをパロってるのだとか。たしかに容姿や背丈が似ているか?(笑)。

 それと地味ーなところで、アーリーンの母親を演じるテリー・ガー。語呂良すぎる名前ですが、『未知との遭遇』('77)で冴えない主人公の妻役をやってたという、実は思い出深い女優さんです。

 本作は、ニクソン政権やウォーターゲート事件について予備知識のある人ほど楽しめるかと思います。私は正直詳しい方ではなかったので、後で調べてみて「なるほど!(笑)」と思えるところが多々ありました。まあそれでも面白かったし、着せ替え人形キルスティン・ダンストとミシェル・ウィリアムズをダラダラ見るだけでも十分価値のある作品だと思います。


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 さて、盛大な前振りはこのくらいにしておいて、本題に入ることにしましょう (゚д゚;)ぇ?

 ネットを徘徊していて、たまたま見つけた情報なんですが、なんとキルスティンてば、昨年('09)の夏に秋葉原に出現してたのですね!しかもその時の格好が、あるPV向けの撮影だとかで、ごっつハイパー状態。「Akihabara Majokko Princess」ということで、すなわちコスプレ姿なんです。

 秋葉原でアレな格好は珍しくないと思うのですが、彼女の場合体格が欧米系なので妙に浮いちゃってます(笑)。コミック系統の『スパイダーマン』出演繋がりで、いわゆるオタク文化に進出しちゃったのでしょうかね。しかしなんだよ、教えてくれたら会いに行ったのに!(笑) って、今頃知ったのって自分だけ?(汗;

 撮影時の様子を収めた動画ですが、遠巻きに眺めている群衆は彼女がキルスティン・ダンストってこと知ってるのかな。知ってないか。しかしいいなあ。でもまあ、この格好だと面と向かっても本人だと気付かないかもしれませんね。それにしても、あのキルスティン・ダンストが秋葉原でこんな格好してくれるなんて。まあ、ちょっとはオタク文化を理解してくれてるのなら嬉しいですけどね。ちなみにPVの監督、マックGなんだそうです。来てたのか秋葉原に。


『Kirsten Dunst - Turning Japanese』
 秋葉原と魔女っ子キルスティン・ダンスト(笑)の組合せが斬新すぎるPVです。なんだかんだいって最強です。曲もいいのですが、これキルスティン本人が歌ってるんでしょうかね。なんとなく本人でない気もしますが。ああ、ラジオ会館の前で踊っちゃってますな。それにしても、共演してるゾンビーズが羨ましすぎる(笑)。


 キルスティンは2008年にアルコール依存症に陥り入院されたそうですが、現在はよくなってるのでしょうか。なんとか無事に乗り切ってもらいたいものです。

<追記2011/1/10
 この曲、どこかで聴いたよなあと思ってましたが、案の定、映画でもよく流れてたりして、イギリスのバンドThe Vaporsによるオリジナル曲「Turning Japanese」('80)をカバーしたものでした。で、キルスティン本人が歌っているそうです♪しかし、そんなに古い曲だったとは。メロディがイケすぎですが、色褪せない曲とはこういうのを差すんでしょうかね。無数にカバーされているのも頷けます。

【出典】『キルスティン・ダンストの大統領に気をつけろ!』/ジェネオン エンタテインメント

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2010年4月18日日曜日

映画『少女の髪どめ』 ・・・イランからのちょっといいお話だそうです

●原題:Baran
●ジャンル:ドラマ/ロマンス
●上映時間:94min
●製作年:2001年
●製作国:イラン
●言語:ダリー語/ペルシャ語
●カラー:カラー
◆監督:マジッド・マジディ
◆出演:ホセイン・アベディニ、モハマド・アミル・ナジ、ザーラ・バーラミ、アバス・ラヒミ、ゴラム・アリ・バクシ、その他大勢

 ここのところ、しょーもない作品続きでしたが、今回はちょっといい感じだと思います。珍しく中東アジアの作品ですが、普段のアホアホ記事を浄化してくれるでしょうか(笑;)。

【ストーリー】
 イランの工事現場。住み込みで給仕係として働いていた青年ラティフは、最近やってきたアフガニスタン難民の少年ラーマトに仕事を奪われ面白くなかった。更にラーマトは調理の腕がバツグンで現場に大人気というのが腹立たしい。ラティフはラーマトにプチ嫌がらせをする。ある日のこと、どこからか優しい鼻歌が聞こえてくるので、気になったラティフが辿ってみるとそこは給湯室。そっと覗いてみれば、そこには長い髪をとく少女の姿が。なんとラーマトであった。彼女は少年を装っていたのだ。ラティフは衝撃を覚えるもその日を境にラーマトを守ってやりたい思いが日に日に強まっていく。やがて当局に追われ現場から離れてしまうラーマトに、ラティフはいてもたってもいられなくなり・・・。



【感想と雑談】
 レンタル屋でふと目に止まった1本。監督が『運動靴と赤い金魚』のマジッド・マジディというのを知り「あ・・・」と思いました。『運動靴と赤い金魚』はだいぶ前にテレビの深夜帯で録画したものの、観る前にビデオテープが行方不明になってしまった(笑;)苦い経験があるんです。今回は珍しくイランの作品ですが、そういう経緯や何かビビビとくるものがあったので、ひとつ観ることにしました。

 世界情勢上イランは何かと耳にしている国でしたが、映画製作については殆ど予備知識がなく、いったいどんな作品なんだろうと思ってました。いやはや、これはやられました。別にアクションとかSFとか、そんな楽しければいい要素はこれっぽっちもないんですよ。イスラム圏内もあって馴染みのない空気に満たされていますが、根底にあるのは純粋な人間愛。愛といってもラブストーリーとかカタカナ表記で済ませるようなチョロイものではありません。舞台はアフガニスタン難民を不法と知りながらも雇い入れるイランの工事現場。金銭や異性のことで頭いっぱいの青年ラティフは、懸命に働く難民少女にショックを受け、「何とか救ってやりたい。でもどうすればいいのか」という人生初の悩みを抱えることになります。

 何百万人もの難民が必死になって生活している現実そのものを背景としているので、そう易々と万事解決な展開にはなりません。ひょんなことからバラン(ラーマトは偽名)を一人の少女として意識付いてしまい、複雑な思いでいっぱいになるラティフは、とにかく職場でのトラブルから彼女を守ろうとします。彼女に罵声を浴びせる作業員にラティフは食ってかかり、作業員が積み上げたレンガをキックで破壊したりします。もっとやれと思ってしまいます。が、ラティフは決して彼女の正体をバラすようなことはしません。バラせば彼女の境遇に悪影響を与えること必至だからです。かといって直接、彼女に何かをできる訳ではない。悶々としながらも彼女を見守り続けるラティフですが、気が付けばそれまでの浮つきがなくなって落ち着きが見え始めます。



 工事現場を離れたバランを難民コミュニティーで見つけても、ラティフは直接手助けもできずただ遠くから見守るだけ。極寒の中、川の激流から石を運ぶ過酷な仕事はバランだけでなく多くの難民女性らが担っています。青春真っ盛りのラティフとしては、彼女に淡い恋心を抱いたりもしたでしょうが、それを告白して何になるという残酷な現実が取り巻いています。

 ここでトドメの一撃を食らったラティフは、遂にある行動に移ります。それは自らの生活環境をも犠牲にする一大決心。イスラム教には困った者を救済する「喜捨(ザカート)」という教義があるそうです。そこまでやるんかと思ったりしますが、救済のレベルは別にしてこういう行為は人間として大事なことではあります。

 こう書くとなんだか観ていて辛くなるだけのようですが、実は淡々としながらもどこか優しい空気に包まれた作品であります。青年ラティフを演じるホセイン・アベニティが若かりし頃のフレディ・マーキュリーを思わせるという個人的楽しみもありました(笑)。しかし、あちらの男性陣は顔つきが濃いですな。女性陣はというと・・・バランくらいしか出てこないのですが、彼女を演じるザーラ・バーラミはハッとするくらいに可憐な少女。東アジア系に近い顔立ちです。

 また、その他で注目なのが現場監督のメマール。強面でいつも怒鳴り散らしていますが、ラティフの父親代わりにもなっていて、実はとても情に厚い監督さんです。イラン人を恥じるほどに難民のことを考えているし、バランの件を隠しながら相談事をぶつけてくるラティフには親身になって応えたりします。演じるモハマド・アミル・ナジはもの凄く濃い顔立ちなんですが(笑;)、とても味のある役者さんです。



 イラン映画ということで、手法としてはどうか?なんですが、これが意外やストーリーと双璧を成す程の出来。とてもしっかり撮られています。感心したのが、バランが少年ラーマトとして初登場するシーン。仲間と一緒に工事現場の建物を1階から3階まで上る様を1カットで収めています。建物は工事中の中途半端な状態なので、クレーン備え付けのカメラが吹き抜けから丸見えの各階を連続して捉えていきます。

 この長回しの中、多くの作業員らが働いているのですが、これが我々日本人からするととても違和感のあるシーンにもなってます。それは安全衛生。なんと各階と吹き抜けの間には何もない状態なのに作業員は誰一人命綱を装備していないのです。踏み外せば即転落の環境。実はバランがやってきたのも、元々働いていた父親が転落事故によって負傷したからなんですが、これが本当にイランの作業環境であるとすれば大変なこと。国の考え方もあるでしょうが、とにかく安全第一でいって欲しいと願うしかありません。

 ラストで遂に向かい合う二人。ここでバランが取る行動がちょっと意外でした。しかし、ラティフの思いなど知る由もなかったろうし、知ったとしてもそれが彼女の精一杯の愛情表現だったのかもしれません。この後の、ブルカ(イスラム女性が被るフード)越しに見つめるバランの瞳と、ラティフの満足げな微笑みが、実に印象的でした。マジッド・マジディ監督のメッセージにある「世界が戦争ではなく、愛によって支配される日を夢みよう」。無責任に声を上げて言うつもりはありませんが、思いやりの心だけは忘れないようにしたいです。

 ここまで読んで頂いて興味を覚えられた方には、ぜひ観て欲しいと思います。とてもいい作品だと思います。



【出典】『少女の髪どめ』/日本ヘラルド映画

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2010年4月4日日曜日

映画『ピカソ・トリガー ダラス・コネクション』 ・・・第4弾 薄着の金髪美女とボディビルダーがコンピュータチップを巡って大活躍

●原題:The Dallas Connection
●ジャンル:アクション/犯罪
●上映時間:94min
●製作年:1994年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ドリュー・シダリス
◆出演:ブルース・ペンホール、マーク・バリエール、ジュリー・ストレイン、ロドリゴ・オブレゴン、ジュリー・K・スミス、ウェンディ・ハミルトン、ジェラルド・オカムラ(笑)、その他大勢

 他に観る作品あるだろ?と思われること必至の今回(毎度ですか)。需要皆無のシリーズ作品がまたやって参りました。誰も読まないと分かっていても書かずにいられないこの使命感(笑)。以下に投下します。

【ストーリー】
 アメリカは南部のダラス。国際的な武器廃絶組織IWAR本部では、人工衛星上で地上探査システムを稼動させる計画を立てていた。このシステムは地中に隠された兵器類を容易に発見できるもので、主な目的はテロリスト活動の抑制だ。システムを開発した4名の科学者は3日後の稼動に向け、4つに分けた方程式をそれぞれコンピュータ・チップに記録し、IWAR本部に送付する。しかしその直後、3名の科学者が何者かによって殺害されてしまう。全員が殺害されればシステムの稼動は不可能となる。事態を重くみた連邦捜査局は、ダラス入りした残りの科学者アントニオ・モラレスの護衛に移るのであった。それが陰謀の始まりであることも知らずに・・・。



【感想と雑談】
 タイトル画面で[再生]をクリック。賢明な方ならもうお分かりでしょう。当たってます。

 「ハイ!アンディ・シダリスだ」

 本編の前に今日もアンディ・シダリス御大が豪勢な自宅(職場?)からご挨拶。そして来るか来るかと構えていると、やっぱりナイスボデーの女優ジュリー・ストレインが登場。もの凄い顔つきで世界中を威嚇・・・じゃなく圧倒するその存在感。

 そんな彼女にオッパイ攻撃を受けようとも、御大はお構いなしに作品の宣伝用パンフを見せびらかします。これがなんと日本向けに作られた日本語のパンフ。実は他のシリーズ作でも同様にアピールしてるんですが、ひょっとするとこの映像特典って日本向けなのかもしれません。ちょっと嬉しくなりました。

 この強制的なオープニングの宣伝は数分で終わってしまうのですが、この続きは映像特典からタップリと拝むことができます。ここでちょっと延長してみましょう。「ギャラリー」から[アンディ&ジュリー]という項目をポチッとしてみます。

 「ハイ!!ジュリー!!!」

 うわ、ビックリした。オープニングと同じシチュエーションで御大がいきなり叫びながら登場。ジュリーは既にスタンバってます。ここでは他の出演女優がジュリーの親友だとかプレイメイトだとか、シリーズのDVDボックスをプッシュしたりとか、更に具体的な宣伝が行なわれます。御大、歳の割りに実に精力的です。

 そしてこの後、あろうことかジュリーの妹リジー・ストレインが登場。まだ幼い体型ながらも、姉に続けとばかりにイケイケな個性をアピール。この姉にしてこの妹あり。御大が「いい体してっけど、リジーも脱ぐのかい?」とか言うと、ジュリーは「まだ幼いからダメ。アタシが代わりに脱ぐわ」と大迫力のオッパイをぶちまけます。こんなストレイン姉妹に挟まれた御大は実に幸せそうです。こういう職場っていいですよね。


(左が妹リジー、右が姉ジュリー。そして姉妹に挟まれ絶好調のアンディ・シダリス御大)

 さて、「どの作品も一緒に見える」がウリのはずのピカソトリガー・シリーズですが、今回は随分と違った印象を受ける作品となってます。なんていうんでしょうか、一言でいうと「映画してる」でしょうか(笑)。これは良かったです。無駄に溢れる裸体に爆発なんかは変わりないのですが、どこか一本スジが通っていて、メリハリを感じる出来になってるんですね。

 脚本・監督を前作「~エネミーゴールド指令」と同じく、御大の息子ドリュー・シダリスが担当しています。前作では御大のノリと大して変わらんなぁと思ってましたが、今回は「何があった?!」と思えるくらいの変化。メリハリのある演出、そしてミステリー風味の展開。

 開始早々、美女3人の殺し屋が華麗な手口で科学者を殺害します。

 フランスではベッドで科学者を非常に気持ちよく昇天させるブラック・ウィロウ(ジュリー・ストレイン笑)。
 南アフリカでは車中の科学者をラジコン爆弾で吹っ飛ばすコブラ(ジュリー・K・スミス)。
 中国ではゴルプ三昧の科学者をボール爆弾で木っ端微塵にするスコーピオン(ウェンディ・ハミルトン)。

 長身で女王様風味のブラック・ウィロウや、小柄ながら物凄いサイズのコブラも大変素晴らしいのですが、ここでは黒髪スレンダーなスコーピオンに軍配が上がりましょう。彼女は中国人のスケベ科学者と一緒にゴルフをするのですが、その時の格好がビキニ姿。斬新すぎるゴルフです。しかしまあ、ピカソトリガーらしくない華やかさといいますか、非常に垢抜けた印象を受ける女優さんです。皆さんも注目しましょう。あ、これもう16年前の作品になるんだ。今現在はどうなってるんだスコーピオン。


(無駄にエロくゴルフをするスコーピオン。健康的ではあります)

 なかなか掴みはOKなオープニングですが、その後も先に述べたようにメリハリある展開が続きます。いつものように連邦捜査官メンバーらは好き勝手にバカンスしていますが、ボスに呼ばれオフィスに集結すると空気がガラリと変わります。殆どがスーツ姿。一部カジュアルなヤツもいますがビキニやタンクトップ姿ではありません。

 これまでもスーツ姿は出てきてはいたのですが、作風からしてただの暑苦しい存在にしかすぎませんでした。今回はスーツ姿が普通に見えるくらいにピリリとした空気が漂ってるんです。中身のボデーがウズウズしているように見えなくもないのですが、なかなか感心できる場面であります。

 ボスと捜査官らはダラス空港まで科学者アントニオを迎えに行きます。このアントニオを演じるのはシリーズのお抱え俳優ロドリゴ・オブレゴン。彼もシリーズの顔になってます。前作での悪党サンチアゴ役のバタ臭さから一転して、ヒゲを剃り落としオメメぱっちりな優男顔に思わず笑ってしまいますが、これも本作を一味違うものにしている一要素となってる訳です。身辺警護に当たる女性捜査官の裸体を妄想するなど、まあ彼ならではの「ああ、やっぱり」な展開が後に待ってるんですが(笑)。

 犯罪組織の一風変わった殺し屋フーを演じるのはジェラルド・オカムラ。名前からして日系の俳優ですね。なかなか憎めない風貌のオッサンなんですが、皆さんどこかで目にされてると思いますよ。ジュリー・ストレインと並ぶと凸凹コンビになるので自動的にお笑い担当にもなってます。第2作目『~サベージ・ビーチ』で東洋人の殺し屋を演じたアル・レオンと同じ系列ですね。怪しいカンフー技で強いのか弱いのかイマイチ不明という(笑)。


(奥の殺し屋フーが放った銃弾が手前で着弾)

 シリーズ特有のマッチョ捜査官×2が、接近してきた殺し屋コブラとスコーピオンの罠にはまり、預かってたコンピュータチップをまんまと奪われてしまいます。その罠というのが、非常に情けないもので、鼻の下を伸ばした瞬間に電撃攻撃を食らったり毒を盛られたりと。何やってんだよと思いたいところですが、この色気とマッチョ野郎のヘッポコ具合こそシリーズの売りでもあるのでヨシとしなければなりません。

 ヘッポコといえば、先の殺し屋フーがトレーニング中のマッチョ捜査官に襲いかかります。その体格と年齢差からマッチョ捜査官が勝者になりそうですが、それで効いてるのかというヘッポコパンチでフーが勝者となります。こういうリアリティのなさもシリーズの醍醐味なんですね。

 後半になると、殺し屋一行とある人物の関係が明らかとなり、捜査官らが一網打尽にすべく総攻撃を開始します。恒例のマグナム大型拳銃に今回は自動小銃M16も加わり、男のメタファ全開となります。ここでの銃撃戦なんですが、これまた今までなかったような演出が冴えていて、えらく感心してしまいました。

 捜査官と殺し屋が森の中で撃ち合いするのですが、一つの画面に双方を配置して奥行きある構図で見せてくれるのです。奥から射出された弾丸が手前の樹木に着弾する様。カット割りを使わずに全体を見渡せる画作りって大変だと思うのですが、これをちゃんとやってくれてるんです。こういう銃撃戦は大好きです。結構、画作りがしっかりしていると思います。

 シリーズ5大要素にある「ジープを爆発させる」ですが、今回はちゃんと車が大爆発します。ボートの爆発も実際は爆薬だけ爆破したカットにすり替えているものの結構な迫力。ひょっとするとシリーズ中、もっとも費用がかかってるかもしれません。バカンス要素については、前作に続きダラスが舞台なんですが、シリアス気味のせいかあまり感じることはありませんでした。しかもなんと雨のシーンもあったりで、こういうのを「雨降って地固まる」って言うんですね(違)。


(手前のコブラによって奥のボートが大爆発)

 その他、空砲のマシンガンやラジコン爆弾を使った伏線なんかも今まで感じなかった「映画してる」要素になってます。ラストもフォーマルでシックな雰囲気でカンパーイ!そして暗転。シリーズは全て同じ印象・・・のはずでしたが、今回はやたら予想を裏切る出来になっていました。

 結構見応えある作品だと思います。監督のドリュー・シダリスは父親になかったカラーを出そうとしたに違いありません。5大要素の盛り込みを守りつつ、映画度と洗練度をアップさせている。女優のオッパイも形が良すぎる。素晴らしいじゃないですか。

 と、なんだかベタ褒めの感想になってしまいましたが、これはあくまでもシリーズ内の相対的な評価であって、決して誰が観ても楽しめる作品という訳ではありませんので(爆)。

 今回でシリーズ4作目となります。やっと折り返しました。残るはあと2作品。どんな出来が待ってるのでしょうか。乞うご期待です。最後まで付き合って下さる方いますか?わはは。

 よろしければ他のシリーズ作品もどうぞ。

 第1弾:『ピカソ・トリガー 殺しのコードネーム』('88)
 第2弾:『ピカソ・トリガー サベージ・ビーチ』('89)
 第3弾:『ピカソ・トリガー エネミー・ゴールド指令』('93)
 第5弾:『ピカソ・トリガー デイ・オブ・ザ・ウォリアー』('96)
 第6弾:『ピカソ・トリガー リーサル・エンジェルス』('98)


(フォーマルですが、やっぱりカンパーイ♪でその後バッサリ暗転)

© MMII MALIBU BAY FILMS. ALL RIGHTS RESERVED.
【出典】『ピカソ・トリガー ダラス・コネクション』/ワーナー・ホーム・ビデオ

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2010年3月10日水曜日

映画『モンスター・オブ・ザ・デッド/ビキニビーチの惨劇』 ・・・ナマズ怪獣が本気を出すそうです

●原題:Monster from Bikini Beach
●ジャンル:ホラー/スリラー
●上映時間:95min
●製作年:2008年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ダーリン・ウッド
◆出演:ステファン・バーゴ、ゲーリン・ハワード、ステファン・ヒデゥン、ルイセル・ハンソン、アダム・サーク、その他大勢(ビキニ数十名)

 今回は久々の「~・オブ・ザ・デッド」ものです。ご多分に漏れず非常にヘッポコなんですが、それはオリジナル部分に限ってのことで、実は配給会社がとんでもないものを仕込んだ当たりクジみたいな作品です。

【ストーリー】
 アメリカのどこぞの町カマロビル。夜の川辺でカップルが遊んでいると、突然川から巨大ナマズが出現。男をなぎ倒し、女を川に引きずり込む。翌朝、カップルの変死体が発見されるや、地元カメラマンのアーチーとTVレポーターのラクエルが速攻で現場にやってくる。アーチーは昔から伝わる巨大生物の存在を訴えるがラクエルは相手にしない。その一方、地元の悪徳刑事サミーは麻薬組織からブツを巻上げようと躍起になっていた。成功したら嫌気のさしたカマロビルを去るつもりだ。ある日、サミーが目を付けていた麻薬組織のメンバが惨殺される。現場には巨大な足跡が残っていた。そこに駆け付けたアーチーとラクエルから巨大生物の話を持ちかけられるもサミーは聞く耳を持たない。そうこうしているうちにカマロビルでは若い女性で賑わうゴーゴーダンス大会が開催されようとしていた・・・。



【感想と雑談】
 「~・オブ・ザ・デッド」シリーズのタイトルも、散々ネタ出尽くしたかと思ってましたが、まだまだあるんですね。このタイトルに惹かれたのはいうまでもないのですが、手にしたパッケージの裏面を見た瞬間、衝撃が走りました。日本語吹替についてなんですが、実はこれ2種類入ってて、そのうちの一つがなんと「モンスターしゃべっちゃう」版。モンスターがしゃべるのかよ・・・。これについては後ほど語ることにして、まずはどんな作品なのかを紹介してみましょう。

 開始早々、夜の川辺でカップルが遊んでいます。ビキニ姿で踊る彼女と嬉しそうに酒を飲む彼氏。この踊る彼女ですが、いきなり尻のアップで登場するので、その飛ばし方から大体そういう作品であることがわかります。タイトルにビキニビーチってあるくらいですから。やがて我慢できなくなった彼氏は彼女の尻をムギュウーとします。すると、川から巨大ナマズが出現。

 デカい頭に人間サイズのボディを持つナマズ怪獣。ハリボテ全開です。サスペンスの定石がはなから木っ端微塵で、開始数分でその姿を現します。巨大なカギ爪で引っぱたかれた彼氏は安っぽい内臓をドバー、ビキニを剥ぎ取られた彼女はオッパイをドーン。お約束です。そして悲鳴を上げながら画面から消えていく彼女。この女優、残念ながら本作で一番可愛いかったりします。一応掴みはOKでございましょう。

 実はもの凄くチープで粗めの映像なんですが(ビデオ撮りかな)、この後のオープニングタイトルが正直カッコいいんですよ。緑色に揺らめく水面をバックに青く照らされたビキニ姿の女性が踊るだけという、シンプルながらも007のタイトルっぽさも感じさせるセンスなんです。ここで凄い作品なんじゃないかと思えてくるのですが、本編に戻ると冒頭のチープな映像に戻ってしまうので、ああやっぱりーとズッこけてしまいます。


(吹替えではカッパと呼ばれるアーチーと、TVレポーターのラクエル)

 変死体が発見されるや速攻で現場に登場する、主人公の地元カメラマンのアーチーとTVレポーターのラクエル。このアーチー、髪型が凄いです。アメリカ人にこんなヤツいるんかと思えるくらいにインパクト大。ラクエルはもうちとお肌の手入れをされた方がヨロシイんじゃないかという残念な美人さんです。でもサービスタイムのシャワーシーンで全裸になってくれるのでヨシとします。

 この2人とは対照的に裏で暗躍する刑事サミー。足が本当に悪いらしい初老の役者が演じてます。怪獣エピソードに全然絡まずオープンカーを運転しては、一人ナレーションでブツブツ喋ってるだけ。ヘッポコな作風からするとやたら重厚な演技をカマしてるので非常に浮いてしまってます。いったい脚本にどんだけ幅を持たせようとしているのか。結局、アーチーとラクエルに合流し怪獣と対決することになりますが。

 カマロビルは昔は広大な沼地だったらしく、そこに生息していたナマズが何故か巨大化。川辺周辺に出現しては人を襲うだけの存在となった模様です。やたら女性好きらしく、ゴーゴーダンス大会のビキニ女性らを最終ターゲットにします。特殊メイクや造型もチープでいい加減なんですが、展開や演出具合からすると味わい深いものがあります。クライマックスの大暴れシーンでは1カットだけCGによる首チョンパがあって、ここだけ豪勢にするのはどーかと思いました。ラストは刑事サミーの機転(というか暴走行為)で一応ハッピーエンドを迎えますが、溜飲はこれっぽっちも下がることはありません。オリジナル音声ではね。

 一通り観終わってから、再びタイトル画面にゴー。
 そして、お待ちかねの吹替え「モンスターしゃべっちゃう」版にチェンジ!!

 初っ端から豪快な吹替えが始まります。オリジナルでは一切会話のなかった川辺のカップルがしゃべりまくります。出オチに近いです。アドリブでしょうか。2人は一切クチを動かしてないというのにこの情報量。ここだけでも通常の吹替え版と同じなんですから、モンスターがしゃべりだすと一体どうなるのか。ほどなくナマズ怪獣が出現しました。

 凄いです。色々しゃべってきます関西弁で。なんかボヤきに近いです(笑)。捕らえた彼女を引きずり画面から消える際には「はい、フレームアウトー」とか言ってます。この「モンスターしゃべっちゃう」版は通常吹替えにモンスター吹替えを追加したものですが、既に通常吹替えからして暴走しまくってて、普通しゃべらないオブジェまでもガンガンしゃべったりします。トーテムポールとか。最初、誰の吹替えやってんだよと思ってしまいました(笑)。


(アーチーにラクエル、そして友人たち。とにかく残念な一行です)

 ナマズ怪獣は出現する度にしょーもない台詞を大連発。川辺にいるアーチーとその友人の目の前に出現し「M字開脚しろや、ほれぇー」と放つと、殴られでんぐり返った友人はズーズー弁で「うぁー、M字開脚ぅ」と返します。その後、暴れまくるナマズ怪獣から友人に再びカットが戻ると、まだでんぐり返ったままで「M字開脚ぅ」と繰り返します。怪獣も怪獣ですが友人も友人。下らなさすぎるだろ(笑)!!

 この「モンスターしゃべっちゃう」版が本作の吹替えマックス値になっていて、全ての配役が色々と大暴走してます。オリジナルの展開は最低限保った状態で、声優さんが出演者らの容姿のことやその場で思い付いたようなことをベラベラしゃべりまくる感じですね。最後の最後までそんな調子。これはもうオリジナルとは別次元の作品へと昇華しています。大変素晴らしいです。

 こんな作品に惹かれるのって、幼少の頃から楽しんでいたギャグ映画とかアニメ番組の影響でしょうかね。特に「怪獣王ターガン」というアメリカ産アニメの吹替え。あまりのメチャクチャさにこれ絶対にアドリブだよなと思いながら観ていたものです(笑)。配給会社のJVDはメチャクチャな吹替えでは定評があるそうで、今回もだいぶカマしてくれたようです。そういえば初期に記事にしていた『マシーン・オブ・ザ・デッド』もJVD発でした。これも相当メチャクチャな吹替えで、本作を観ていてなんか似てるなーと思っていたら配給元が一緒だった訳です。納得。他の配給作品も観たくなってきました。

 そういえば今年2010年のアカデミー賞が発表されましたね。そんなメインストリームからかけ離れた本作ではありますが、逆にアカデミー賞作品なんかでは味わえない魅力全開な作品なんだと思います。が、やっぱし無理がありますか。


(一応、ゴーゴーダンス大会が惨劇に見舞われます)

 しかし、ビーチ、ビーチいう割には川辺しか出てこなかった気がする。川辺も砂浜があればビーチって呼ぶんでしたっけ? 

『Beach Girls And The Monster (1965) - Trailer』 ひょっとして、これのリメイクなんか?!
(C)2008 TFO Productions All Rights Reserved 【出典】『モンスター・オブ・ザ・デッド/ビキニビーチの惨劇』/ジェィ・ブイ・ディー にほんブログ村 映画ブログへにほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへブログパーツ

2010年2月28日日曜日

映画『狂っちゃいないぜ!』 ・・・戦場のような職場トラコンよりもアンジー自体が相当ヤバいそうです

●原題:Pushing Tin
●ジャンル:ドラマ/コメディ
●上映時間:124min
●製作年:1999年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:マイク・ニューウェル
◆出演:ジョン・キューザック、ビリー・ボブ・ソーン
トン、ケイト・ブランシェット、アンジェリーナ・
ジョリー、その他大勢
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 今回はトラコンというちょっと聞き慣れない職場が登場する作品です。役者らも何気に凄い布陣だと思うのですがいかがでしょうか。それと、花粉が始まった予感です。花粉め!今年は少ないはずではなかったのか!!

【ストーリー】
 アメリカ。ニューヨークのトラコンは毎日が戦場のような忙しさだが、管制官ニックだけは余裕で仕事をこなしていた。ある日、謎の男ラッセルが中途採用で職場にやってくる。度胸と才能を持ち合わせたラッセルにニックはライバル心を爆発させるが、それはやがてお互いの家庭にも波及する問題に発展する・・・。



【感想と雑談】
 しょっぱなから飛び交う旅客機を制御するトラコンのお仕事が描かれます。このトラコンとは、Terminal Rader Approach Controlの略(TRACON)で、端末レーダー着陸誘導システムの意味なんだそうです。本作に登場するニューヨークのトラコンは、ケネディ空港、ニューアーク空港、ラガーディア空港の3空港を担当します。各空港を離着陸する旅客機をレーダーと無線を駆使し誘導するのですが、それぞれニューヨークの玄関口だけあって1日あたり7000便もの数をこなす超多忙な職場となっています。地図で確認してみると3空港は見事ニューヨークを囲むように配置されていて、確かに上空は過密空域であることがわかります。

 ここでトラコンの管制官ニックはレーダー表示から素早く的確に旅客機に指示を出します。空域ごとに担当が決まっていて複数人の管制官がレーダーに向かっているのですが、手一杯になると旅客機情報のタグ(?)をどんどん横に流していきます。最終的にタグはニックのところに流れ着くのですが、ニックは鼻歌まじりでこれを捌いていきます。ここで、どのように仕事を捌いているのかをCGで描きます。ニックの目に映るレーダーの映像がアップになると、レーダーの二次元映像が立体的に切り替わり、ニックが飛び交う旅客機に指示を出していく様子が視覚的にわかるようにしてます。面白いですね。

 こういう始まり方をするので、管制官ニックにその仲間、そして新入りラッセルらが毎日戦場のトラコンでどう激突し過密空域を制御していくのか、というサスペンス風味を期待したくなるのですが、どちらかというとトラコンよりもニックとラッセルの激突から家庭問題まで波及する様に比重を置いてるようでした。トラコンは密室に近く見た目も動きがないので、これだけでは映画にならないのでしょうかね。航空機の接触事故って起き難そうな気がするんですが、空港への着陸時にはライン取りで大渋滞となるので、舞台の空域あたりになると相当にヤバいんだそうです。もうちょっとこの辺を掘り下げてみるのも面白いんじゃないかなと思いました。

 そういえば、『未知との遭遇』('77)の冒頭でもトラコンがUFOに遭遇する様を描いてましたね。ちょっとの出番でしたがパイロットとの会話がサスペンス風味の印象深いシーンでした。



 本作はトラコンにそれほど拘らなければ、ドラマや登場人物で楽しめるかもしれません。といいますか、今観直してみるとビックリ要素や大笑い要素もあって、全体的には十分楽しめる作品になってると思います。

 ストレス限界な仕事に囲まれながらも毎日がお気楽な家庭持ち男ニックを演じるのはジョン・キューザック。この人とにかくエンタテイメント向きな白人さんというイメージがあります。どうでもいいことですが仲間も典型的な白人ばかりで、なんだか白人臭ぇと思える時があります。

 謎の男ラッセルを演じるのはビリー・ボブ・ソーントン。浅黒くて顔つきがいいですねこの人。白人臭ぇ独特なトラコンの中で異彩を放っています。黙ってるだけでも存在感はバツグン。退屈な人生が嫌で破天荒な行動を繰り返してきたラッセルにトラコン連中は興味を覚えます。

 ニックはやたらラッセルに挑発的になるんですが、どれもこれも裏目に出てしまうのが笑えます。やがてニックはひょんなことからラッセルの妻メアリーと一晩を過ごしてしまいます。このメアリーがやたらワイルドでフェロモン全開なエロい人妻。演じるのがアンジェリーナ・ジョリーなので納得です。この時のアンジーは23歳で若いです。そんなに古い作品という印象はないのですが、ポッチャリしててやたら幼く見えるんですよね。いやとにかくいいですな!ははは。

 このメアリー、夫ラッセルにぞっこんなのか、いたる所でベッタリしまくります。目付きがヤバくてもの凄い光景です。あるイタリアレストランでは歌も上手いうことで美声を披露するラッセル。そんな彼の足元に注目。恍惚の表情でラッセルの右足にまとわりつくメアリーの姿が?!これを見て大声で笑ってしまいました。いねーだろそんな客(笑)!!いやいや、イタリアレストランではこれが普通なのかもしれない。ラッセルの歌声もよく聴いてみれば若干外れてるようだし。ファンタジーとして受け止めておきましょう。というよりも、この夫婦の存在自体がファンタジーですな。


(大惨事に近いイタメシ屋)

 ビリーとアンジー演じるファンタジー夫婦はこの後、現実世界でも夫婦となりました。二人の熱愛ぶりは凄まじかったですね。たしか報道陣の前でも前述のイタリアレストランの光景を再現してたかと思います。アンジーはビリーの生血を詰めたビンをネックレスにして身に着けていたとか。ちょっと身震いするほどの熱愛ぶりですが、冷めるのも早かったようで。アンジーはその後ブラピともくっ付いては離れたりと。忙しい世界ですなまったく。(追記:破局したと思ってましたが、どうやらガセでしたかね。失礼しました)

 ニックの浮気を知ってブチ切れる妻コニーを演じるのはケイト・ブランシェット。いいです。とにかくいいです。『インディジョーンズ/クリスタルスカルの王国』では初めて見る悪役に痺れたものですが、今回は一般家庭の人妻なんです。何かとニックに言う「冷蔵庫にシチューがあるから」という家庭的な台詞にやられる男性諸氏もいましょう。色白で若くて可愛いですよ。今ではすっかり貫禄付いちゃってますが、この頃もまた魅力的でいいです。とにかくいいです。

 ラッセルにやられてばかりで妻コニーにも逃げられたニックは、遂にはトラコンで重大なミスを連発し人生最大のピンチを迎えます。失意の中、ニックはラッセルに会いに行き、全ての思いをブチまけます。一番の思いはコリーを取り戻したいこと。その為にはどうすればいいのか。ラッセルからの答えはある行動にありました。それは二人して空港の滑走路に立ち、そして・・・。

 役者が結構豪華な布陣なので、これだけ見るのも有りな作品ではないでしょうか。ドラマ的にはもっとトラコンを挟んで欲しいと思いましたが、特にあのエロすぎるアンジェリーナ・ジョリーが拝めるだけでもヨシとしましょう。まさに雌の野獣ですですから(笑)。航空犯罪をテーマにトラコンをもっとテクニカルに描いたら面白いのが出来そうですが、ひょっとしてそんな作品ありましたっけね。うーん、あったような気がする。なんだったか。


(スパルコ大佐の9年前と、ララ・クロフトの2年前)

 最後に。これ1999年の製作なんで、当時のニューヨークのあるビルがしっかりと拝むことができます。例の大事件の前ですからね。舞台となったトラコンでの実際の事件当時の状況は尋常ではなかったと思います。そんな思いを馳せながらも、エンタテイメントとして割り切って楽しめられればと思います。

(C) 1999 Twentieth Century Fox Film Corporation, Monarchy Enterprises B.V. and Regency Entertainment (USA), Inc. All Rights Reserved.
【出典】『狂っちゃいないぜ!』/20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント

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2010年2月18日木曜日

映画『ピカソ・トリガー エネミー・ゴールド指令』 ・・・第3弾 薄着の金髪美女とボディビルダーがバカンス中に金塊を発見します

●原題:Enemy Gold
●ジャンル:アクション/アドベンチャー
●上映時間:92min
●製作年:1993年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ドリュー・シダリス
◆出演:ブルース・ペンホール、マーク・バリエール、スージー・
シンプソン、タイ・コリンズ・ジュリー・ストレイン、ロドリゴ・
オブレゴン、その他大勢
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 この「ピカソ・トリガー」シリーズは一昨年にも記事にしてました。2作目で止めておりましたが、先日レンタル屋で目に入ってしまい、また観たい度がアップした次第です。という訳で、需要皆無の作品とは思いますが、久しぶりに出すことにしますシリーズ第3作目を。ははは・・・。

【ストーリー】
 アメリカは南部のダラス。あるモーテルではFBIのクリスとマークそして美人ベッキーらが捜査のプランを立てていた。ターゲットは黒幕サンチアゴが率いる麻薬組織だ。見事3人は麻薬を押収し手下どもを逮捕する。しかし上司ディクソンは無断で行われた一連の捜査を問題とし3人を停職としてしまう。意気消沈するもクリスは幼少からの夢であった南北戦争時に隠された金塊探しを提案。3人は埋められたとされる森林地帯へ向け出発。これを聞きつけた黒幕サンチアゴは、遠方より殺し屋を呼ぶと鼻息荒く3人を追跡する・・・。



【感想と雑談】
 このDVD、再生ボタンを押すと本編が始まることなく、いきなり・・・

 「やあ、アンディ・シダリスだ」

 と、小太りエロ親父のアンディ・シダリスが元気よく登場。このシリーズのDVDは必ず初めに製作陣の御大シダリス親父が自ら作品を宣伝します。この時、御大が横に呼び寄せるのがお抱え女優のジュリー・ストレイン。

 「どこにでもいる普通の女の子だろ?」と御大のたまう彼女は180cmの長身に紐みたいな下着姿。この容姿そして顔付きからしてまさに雌の野獣です。御大に抱きついたりオッパイ出したりして、たしかに普通の女の子ですね(違)。しかしスゲェ。このコントにも見えるやり取りが終わると、やっとこさ本編に突入します。

 前回にも書いているのですが、このシリーズは御大の中学生魂を中心に掲げた5ヶ条が元になっています。なので、エロス、アクション、バカンス要素が入り乱れて終わりという、要するにどれもこれも見た目が一緒の作品となっています。

 今回は一応、南北戦争時代に南軍の将軍が隠したとされる金塊探しがテーマになってます。が、先の通りの要素によって、そんなテーマよりも多々ある見た目の問題が気になって仕方がなくなります。因みに本作は御大の息子ドリュー・シダリスが監督やってます。

 本編に入るといきなり南北戦争の真っ最中です。が、何かの祭かイベントに乗じて撮ったのか、全体的にホノボノとしていて緊迫感が全くありません。そんな最中に南軍の将軍と軍曹が、北軍から奪ってきた金塊をある樹木の根っこに埋めます。ここでジャジャーンとタイトルバック。ENEMY GOLD・・・敵の金塊 ですかな。直訳でいくと。

 突然、シーンは現代のダラス空港に移ります。これがまたシリーズならではの直結編集と言いますか、時の流れを流暢に表現するようなことをしません。面倒臭いようです。ここで一人の金髪美女の足元をカメラが舐めるように追い、車に載るとそのまま移動。FBI捜査官ベッキーです。たぶん元プレイメイトだと思います。小柄でちょっと可愛いです。

 あるモーテルでは、二人のマッチョ捜査官がなにやら銃器の点検を行なっています。自動拳銃にリボルバー銃と様々。やや手元がおぼつかないようです。そうこうしてるうちに先のベッキーがやってきました。軽く打合せをした後、「武器はあるのかい?」と聞かれたベッキーは「まずは戦闘服に着替えるわ」と返します。出ました。ここで着替えタイムです。バスルームに固定されたカメラが延々と着替え中のベッキーを捉えます。必然性のないエロス。無駄に溢れ返ったオッパイタイム。

 このシリーズのエロスはあくまでも健康的なもので、ポルノみたいに生々しい直接描写はありません。心配不要です。ベッキーの露出度全開のデフォルト戦闘服が完了すると、クリスとマークはタンクトップ姿で拳銃を股間に差し込みます。ホルスターを使う概念は無いようです。モロに銃は男のメタファ全開なんです。


(よく見ると車ではなく荷台が爆発してます)

 3人が向かう先では麻薬組織の連中がたむろしてます。ここでも全員がマッチョ野郎。マッチョ同士で格闘技をやったりじゃれ合ったりしてます。シリーズのエロスに付属するマッチョ要素で、野郎で活躍するのは全員マッチョでしかもハンサムです。暑苦しいです。ここで3人の捜査官が乱入するとシリーズのアクション要素、銃撃戦タイムが開始。全員がタンクトップ以下の格好で”銃撃戦ってこうだよね”と言わんばかりの撃ち方で激しく応戦します。ほぼ棒立ちのままで。

 ここでは特に捜査官マークのリボルバー銃(44マグナム)の撃ち方が大袈裟でイカしてます。ベッキーはハイテクボウガンを駆使し敵を一網打尽にします。どこがハイテクかというと矢が命中して3秒後に爆発するあたり。ハイテクと呼べるか微妙ですが、本人がそう言ってるし、一番見栄えのある武器ではあります。

 裸に近い格好で3人揃ってジャグジーに浸かっていると元ボスから連絡が入りますが、この元ボスが女性でまた意味もなくシャワー全開で登場。無駄に溢れる裸体です。元ボスが頑張ったものの停職を免れなかった3人は、気晴らしに金塊探しのキャンプへと出かけます。これを聞きつけた黒幕サンチアゴは遠方から一人の殺し屋を呼びます。名前はジュエル・パンサー。お抱え女優ジュリー・ストレインの登場です。色んな意味で凄いですこの人。とにかく殺しのプロなんだそうです。この後、サンチアゴとジュエル・パンサーは、3人の捜査官を追跡し始めます。ここからやっと現代のエネミーゴールド騒動が始まります。

 川を移動したい為、ジュエル・パンサーは森林警備隊のスピードボートを狙います。目が点の警備隊員に、ビキニ姿のジュエル・パンサーが「ハイキングに来たの♪」とか抜かすので、観てる側が「ねーよ」と思ってると、今度はどこに隠してたのか大型拳銃でいきなり警備隊員を射殺。燃料庫に逃げ込んだ他の警備隊員には、照明弾をブチ込み大爆殺。銃器を振り回したり、近くで爆発を起こしたりと、そんな危険な行為の割りに非常に薄着でいられるのも、シリーズの醍醐味だったりします。


(ジュリー・ストレイン、実に眩しいですね)

 3人が泊まるコテージを発見したサンチアゴの手下らは、ボスにいい格好をしようと勝手に3人を殺そうと忍び寄ります。が、何を思ったのか手下はコテージの前でベッキーが使うバギーを盗み森の奥へと逃走。どこに行く。立場がはっきりしない脚本もピカソトリガーの醍醐味です。

 気付いたクリスとマークはバイクで追跡します。逃走中の手下は、ヘラヘラ顔で余所見していた為、樹木に激突します。このオートマチックで手下を仕留めた樹木が大問題。なんと例のエネミーゴールドが埋められた場所だったのです。過去にたまたま拾った将軍の日記から、目印として樹木にナイフを突き刺していることを知っていたクリスは、目の前の樹木に刺さったナイフを発見。ウルトラが付くくらいにご都合な脚本も言わずもがなです。

 金塊の存在も察知したサンチアゴは、更に目の色変えて3人を追跡します。やがて3人とサンチアゴ+ジュエル・パンサーが対峙。自動小銃を突き付けられ形勢不利になるも、ベッキーは隙を突いてジュエル・パンサーに殴りかかります。

 ヘッポコな格闘ですが、サンチアゴは「こいつはいいキャットファイトだぜ」と嬉しそうです。結局、逆転とはならず3人は危機一髪に陥りますが、ここで元ボスが駆け付け応戦。サンチアゴとジュエル・パンサーが乗ったヘリコプターに向けハイテクボウガンを発射します。3秒後にヘリコプター大爆発。

 本シリーズはヘリコプターの爆発も売りにしているのですが、ホバーリングしてる様子に突然画面いっぱいの炎が広がるので、実際なにが爆発したのかよくわかりません。予算の都合上、本物を爆破する訳にはいかないようです。この他にも、非常に薄い爆発シーンとか多々拝めます。

 残りのバカンス要素なんですが、前2作品までは舞台がハワイとなっていて、青い海や空がとってもバカンスしてました。本作はダラスが舞台となっているので、海が無い代わりに広大な川と森林地帯がバカンスの象徴となっていました。常に天候は快晴、登場人物はバカンス気分、というのは変わらずだったかな。というかこの変わりなさがシリーズの売りでもあるんですが(笑)。

 このシリーズはシダリス家で作られているのですが、特典を観て驚いたのがエロスの演出をシダリス奥さん(監督の母)が担当していること。てっきり監督がウハウハ撮ってると思ってたんですが、どうやら母親の才能が開花してたようです。どっちにしろ一家してエロスに囲まれているのは間違いないです。

 シリーズが進むに連れ洗練度はアップしていくようですが、観たあと何も残らない出来というのは本シリーズを貫く不変のスタンスと言えましょう。肩に力入るような映画ばっかご覧になってる方、たまにはこんな作品もいかがですか。アンディ・シダリス親父が羨ましくなったら終わりだと思いますが(笑)。因みに既に他界されてます。

 もし余力があるようでしたら、前2作品の記事もどうぞ。乱暴な記事ですけど(笑;)

第1弾:『ピカソ・トリガー 殺しのコードネーム』('88)
第2弾:『ピカソ・トリガー サベージ・ビーチ』('89)
第4弾:『ピカソ・トリガー ダラス・コネクション』('94)
第5弾:『ピカソ・トリガー デイ・オブ・ザ・ウォリアー』('96)
第6弾:『ピカソ・トリガー リーサル・エンジェルス』('98)


(前作より人数減ってるけど、やっぱりカンパーイ♪でその後バッサり暗転)

© MMII MALIBU BAY FILMS. ALL RIGHTS RESERVED.
【出典】『ピカソ・トリガー エネミー・ゴールド指令』/ワーナー・ホーム・ビデオ

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2010年2月9日火曜日

映画『ラスト・ボーイスカウト』 ・・・ブルース・ウイリスといえば、タバコとこの一撃です

●原題:The Last Boy Scout
●ジャンル:アクション/コメディ/ミステリー/スリラー
●上映時間:105min
●製作年:1991年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:トニー・スコット
◆出演:ブルース・ウイリス、デイモン・ウェイアンズ、チェルシー・フィールド、チェルシー・ロス、ハル・ベリー、ビリー・ブランクス、その他大勢
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 最近、めっきり外に出なくなってます。行くのはTSUTAYAくらいで。あ、いつものことか。今回は、また微妙に古いというか懐かしい作品を挙げることにします。ああそういえばあったねこんな作品・・・と皆さん思われること請け合いです(笑)。

【ストーリー】
 アメリカ。元シークレットサービスのジョーは大統領の命を救ったことで一躍有名となったが、ある上院議員への暴行事件によって今では飲んだくれの探偵となり、落ちぶれた人生を送っていた。ある日、ダンサーのコリーの警護を請負うことになったジョーは、早速コリーの店に出向くが、そこではコリーの恋人であり元フットボール選手のジミーが待受けていた。気に入らないジミーはジョーに突っかかるが、その直後にコリーは何者かによって殺されてしまう。何らかの陰謀にコリーが絡んでいたことを察したジョーとジミーは手を組み調査を開始する。やがてフットボール界とスポーツ賭博に絡む陰謀を暴きだす二人だったが・・・。


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【感想と雑談】
 もう、どこからどう見てもブルース・ウイリス=ジョン・マクレーン刑事な出で立ちが素晴らしいです。こうでなくてはいけません。まだフサフサしてますものね。のっけから飲んだくれて車中でイビキかいてるジョーは、子供らにイタズラされそうになるや銃を向け豪快に威嚇します。まるで後の『ダイハード3』('95)のマクレーン刑事みたいです。登場シーンとしては掴みはOKでございやしょう。この後も子供に銃が向けられるシーンが何度か出てきます。この作品、結構好き放題やってますね。

 オープニングからフットボール番組のアメリカンな主題歌が流れ、細かいカット割りと軽快な演出で本編に入っていくあたりは、なんともトニー・スコット監督らしいです。この能天気なノリからは当時に王道だった犯罪アクション映画の息を感じ取ることができます。脚本はシェーン・ブラック。80年代後半から犯罪アクションの脚本家として引っ張りだこだったらしく、確かにこの方が書いた作品は心に残ってるアクション映画の大半を占めてる気がします。

 シェーン・ブラック初期脚本の『リーサル・ウェポン』('87)は衝撃的でした。また『プレデター』('87)では出演もしてたりして才能ある方なんだなと思いました。因みに『プレデター』ではシュワちゃん部隊のメガネ野郎役だったはず。あ!『ドラキュリアン』('87)も書いてたんだ!レトロモンスター大集合の楽しいSF作品でした。

 なんでまたこんな古き良きアクション時代の作品を持ってきたかというと、たまたま再見したら驚きの役者が出てたのに気付いたこと、そしてあるシーンでの心のガッツポーズ度が未だに衰えていなかったからです。・・・まあ、あまり感動は無いかもしれませんが、とりあえずいってみましょう(笑)。

 冒頭の話の肝となるフットボール試合。劣勢チームLA・スタリオンのスター選手ビリーにある電話がかかってきます。「この試合には大金がかかってる。どんな手を使ってでも勝利しろ。しくじったら命はないぞ」。もう頭いっぱいいっぱいになったビリーはそのまま試合に出るやタッチダウン寸前で銃を大乱射。そして自決するビリー。


(ビリー隊長の勇姿です)

 ・・・ビリー??この名前・・・そしてこの顔、どっかで見たことある・・・と思って調べてみると、なんとあのビリー隊長ではないか!ビリーズブートキャンプのビリー・ブランクスさん、あの方なのです(笑)。

 しかし役名までビリーだなんて。結構役者として活躍されてたみたいですね。他で観たのは『未来警察TC2000』('93)というSFなんですが、後の『ブレイド』('98)を思わせるイカした役どころが印象深いです。とにかくこの発見は嬉しかった♪

 それからもう一人。元フットボール選手ジミーの恋人コリー。黒人さんの女優で大変可愛いのですが、これまたどっかで見たなぁと思ったら・・・ハル・ベリーなのでした。当時スルーしてた役者が後にブレイクして知名度が上がると、今回みたいに時間差の発見があって楽しいですよね。他にもこんな作品が山ほどあるんでしょうね。ラブリーなハル・ベリーも当時は使い捨てだったのか、あっけなく殺され退場してしまうのでした。まあ、男臭さを追求したいアクション映画にキャンキャン吼える女子供は控えてもらってOKではあります。


(ほぼデビュー作らしいです)

 さて、心のガッツポーズ度全快のシーンです。ジミーと共に調査を進める探偵ジョーは遂に組織に捕まってしまいます。目覚めるとそこは大豪邸。目の前ではチンピラがニヤニヤしながら椅子に座ったジョーを見下しています。ジョーはチンピラにタバコを要求します。この余裕が素晴らしいのですが、まだまだです。タバコとライターの火を差し出したチンピラはいきなりジョーを殴ります。血を垂らしながらジョーは再度タバコを要求しますが、この時「今度やったら殺すぞ」と付け加えます。ニヤつきを止めないチンピラは再度タバコを差し出すと、懲りずにまたジョーを殴ります。

 この直後、直後ですよ、ジョーは立ち上がるやいなやチンピラの顔面に一撃パンチを食らわすのです。ズガッ!! この勢いが堪りません。この後、パタリと大の字になって目出たく昇天されるチンピラ。その横で椅子に座り直しタバコを吹かすジョー。これを見て「ホ、ホントに殺しやがった・・・」と腰を抜かすもう一人のチンピラ。カッコ良すぎるぜジョー!このシーンはいつ観てもスカッとします。ホント笑いと共にガッツポーズ級のカタルシスです。

 ブルース・ウイリスは、飲んべえでヘビースモーカーのクセにやたら心強いという印象がありますね。『ダイハード』のイメージを引きずってる感がありますけど、どんな作品でもこういう役どころが拝めるのは大変嬉しいものです。やっぱりブルース・ウイリスはこうでなくちゃね。


(この後、チンピラに天国が待ってます)

 落ち目になってたLA・スタリオンの腹黒オーナーは、収益を上げる為にスポーツ賭博を合法化しようと上院議員らを買収しますが、一人の議員が賄賂が少ないと突っぱねたので、議員を殺害しこれをジョーの仕業に見せかけようと企みます。しかし、ジョーはジミーと娘の助けを借りながら、逆にオーナーと組織の殺し屋を追い詰めていきます。クライマックスはフットボール試合真っ最中のスタジアム。そこでジョーと殺し屋の一騎打ち。

 もう散々テレビで放映されてるでしょうし、新鮮味も無いアクション作品だと思います。でも私にとっては例のチンピラ一撃のシーンだけで国宝級(どんなだ)の傑作になってる訳です。こういうのを”カマしてくれる作品”と勝手に命名してたりします(笑)。皆さんの印象はいかがかな?


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(C) 1991 Warner Bros. Inc
【出典】『ラスト・ボーイスカウト』/ワーナー・ホーム・ビデオ

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