
●ジャンル:ホラー/スリラー/コメディ
●上映時間:102min
●製作年:1985年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ジム・ミューロー
◆出演:マイク・ラッケイ、ビル・チェビル、ジェーン・アラカワ、マーク・スフェラッツァ、トニー・ダロウ、ジェームズ・ロリンズ、その他大勢
すっかり冬ですね。
前回の『東京残酷警察』は久々に堪能した特殊メイク全開のファンタスティック作品でした。余韻も未だに残っています。ということで、今回もこの流れで一発秘蔵のファンタスティック作品を紹介したいと思います。・・・この記事、大丈夫か(笑;)。
【ストーリー】
アメリカ。どっかの街。ある酒屋の地下室から60年前のウイスキーが大量に発見され店頭に置かれる。あまりの安売りに地元のホームレスには大人気なのだが、そのウイスキーを飲んだホームレスはことごとく身体が溶けて消滅してしまう。寝かせ過ぎて必殺の凶器と化したウイスキーだ。それは溶ける際の飛沫を浴びただけでも重症を負うほどの威力を持つ。最悪だ。
一方、ホームレスが生活の場としている廃車工場では、戦争上がりのブロンソンが暴力を持って支配していた。一匹狼の刑事は、散々悪事を働くブロンソンをマークし一連のホームレス怪死事件を解決しようとするも、途中にマフィアの邪魔が入ったりと、なかなか先に進むことができない。
その頃、ホームレスのフレッドは、偶然ウイスキーの威力を知り、いつも自分を苛めるホームレスに飲ませ復讐に成功する。そして酒屋に知らせに行くも時既に遅し。目の前にはウイスキーを飲んで溶け出している店主がいた。気を取り直し、ブロンソンを倒すべくウイスキーを片手に廃車工場へと向かうフレッドだったが・・・。
【感想と雑談】
昔、なんかの雑誌で「どこぞの映画祭で話題になった凄く汚い映画」という記事を読んで、とても気になってしまった。暫くするとレンタル屋に並び出したので、速攻で借りてみた。
はっきりいって最強。
開始早々、主人公フレッドが酒屋に忍び込むと、店主から強烈な屁をかまされ追跡劇が始まる。逃げる途中で他のホームレスから金を奪ったり、自動車事故が起きたり、逃げ込んだアパートが火事になったりと、かなりドタバタ。追っ手が増えてしまったのでゴミ回収車に飛び込むフレッドだが、安心したのも束の間、プレス機が作動したので慌てて飛び降りてしまう。そして回収車に金を落としたことに気付き地団太を踏む。冒頭のクレジットにしてはかなり飛ばしまくりだ。重低音でシンプルなBGMがイカす。
この作品、たしかに汚くて残酷。
当時のアメリカにあんなホームレスがホントにいたのかは不明だが、とにかく汚い身なりである。フィルタをかけずに現実と直面するような生々しい画になっていて、ホームレスが映っていなくても、常に重苦しい空気が流れている。アメリカ全土がこんなところなのかと思えてくる。
どのくらい汚くて残酷かというと、最初の被害者のホームレスの場合、廃屋の便器に座りウイスキーを飲んだ途端、原色の体液を噴出しながら下半身から溶けていき、しまいにはドロドロの便器に顔だけが浮かんで消滅する。また、ベランダで飲んだホームレスは溶け出しながらボタボタと原色の体液を落下させ、通行中のサラリーマンがそれを顔に食らって大変な目に会ったりする。更に、超メタボのホームレスは溶けない代わりに腹が膨張し大爆発する。そして原色の肉片を撒き散らす。
血液以外にも、青や黄という有り得ない色を織り交ぜた体液がやたら湧き出る感じで、医学的には有り得ないが、汚いものは汚い。 あとシモネタとしても汚いものがある。
一方で侮れないのが、ただ汚いばかりでなく、いくつかの人間ドラマが交差する感じで、夫々のエピソードが興味深かったりするところだ。
ベトナム帰還兵のブロンソンは未だ戦場にいる妄想から凶暴化し、廃車工場を恐怖のどん底に陥れる。ホームレス怪死事件を追う刑事はブロンソンの存在に辿り着き、廃車工場で対決することになる。ホームレスの黒人はスーパーでもの凄い万引きを決行し、パーティーを開催する。主人公フレッドの弟はアジア系の事務員女と仲がよく、工場長はそれが面白くない。
と、こんな感じで複数のドラマが進行していくのだが、汚い画の割りには堂々と、そして流暢に撮られていて、どれも見応えがある。
印象深くて笑えるのが、ブロンソンがあるトラブルからホームレスのイチモツをぶった切り、それを投げ飛ばすと盛大にアメフトごっこが始まるエピソード。イチモツが空に舞う様をスローのアップで映すところが、とってもバカ。コミカルなBGMが拍車をかける。やっとこさ自分のイチモツを回収したホームレスは、スクールバスにしがみ付き病院に急行する。オイオイ。。。
また、捜査がはかどらずイラついてる刑事にウイスキーの被害にあったサラリーマンの同僚女が「早く彼を助けて!」と言い寄るところ。後回しにしようとする刑事に同僚女がヒステリックに「なら私を犯してからにしたら!?」とか叫ぶと、すかさず刑事は「アンタの体じゃピクリとも来ねえぜ」と史上最強の台詞を吐く。それを聞いた野次馬の黒人2人がイエァ!と狂喜しハイタッチ。非常にカマしてくれる場面として印象深い。
クライマックスでは凶暴化したブロンソンとフレッド兄弟が対決するのだが、肝心のウイスキーを浴びせるもそんなに効かず、結局バルブをブチ切った酸素ボンベをミサイルにし、ブロンソンの顔面に直撃させる。見事すっ飛んだ首が地面に着地したブロンソンは、その上を飛び越す事務員女のパンチラ(笑)を目で追いながら絶命する。全体的に特殊メイクは安めの印象だが、この時のブロンソンの造型はかなりくるものがある。ここだけは伝説と化している名場面だ。
これらダイレクトに伝わる汚さと残酷さ以外にも特筆すべき要素がまだある。それはカメラワーク。ステディカム(カメラマンの細かい動きを吸収しブレを無くす装置)による流暢でスタイリッシュ、そして工夫を凝らしたカメラワークが、相当なインパクトを残す。ガレキの山となった廃屋をもの凄い勢いで突進し辿り着く先がホームレスが溶けてしまった便器だったり、酒屋の店主が溶け出せばその様を縦に360度回転させながら撮ったり、メガネをレンズ前に取り付けぶん回し、車のフロントガラスに叩き付けられるメガネ男の視点を表現したりと。下品な展開に上品なカメラワークというギャグなのかもしれない。とにかく寝ぼけ頭に一発食らうようなビジュアルインパクトなのだ。
監督のジム・ミューローは、映画学校の卒業作品として本作を製作したのだそうだ。それを考えると、かなりよく出来た作品なんじゃないかと思える。20代そこそこであれだけ描ききってるのだから大したものである。詳しい製作背景までは知らないのだが、ビンボー製作であったならホームレスの大半は本物を使ったのかもしれない(笑)。例のウイスキーについては何も解決していないが、これはインパクトある映像作りの為に用意しただけで、細かい設定等どうでもよかったのだろう。
後にステディカムのオペレーターとして『タイタニック』にまでクレジットされるようになったことを考えると、これまた感慨深いものがあるのだが、残念ながら監督作品はこの『吐きだめの悪魔』が最初で最後となってるらしい。
ジム・ミューロー監督が何をどう思って撮ったかは知らないが、ナマの生活、ナマのアメリカが滲み出しているようで、これはこれで見る価値のある立派な作品なんじゃないかと思う。やたら上っ面だけのウソ臭い一般映画なんかよりもガツン!とくるのだ。
『吐きだめの悪魔』はアメリカでは普通に人気があるそうで、豪華特典付きのDVDが発売されているそうだ。日本では残念ながら未発売となっている。なので、現在はレンタル屋にはDVDでは存在していない。あるとすればビデオだが、大方消えてしまってるか、運がよければ中古のワゴンセールに乗っかっているか。ビデオは持っているのだけど、デッキが壊れていて観ることできません~(;;)。
<2011/12/17 追記>
最近知ったことですが、本作にカメラ担当の一人としてブライアン・シンガーが参加しておりました。これにはビックリ。
サスペンスありファンタジーあり(笑)の本ゲロ映画が、『ユージュアル・サスペクツ』や『X-メン』もろもろに影響を及ぼしていた訳か?そういえば『X-メン』にもオッサンがデローッと溶けるシーンがあったあった。たぶん関係ないだろうけど。
とにかく、『吐きだめの悪魔』が後のヒットメーカー輩出装置になっているのは大変興味深いことです。
【Street Trash - Trailer】(後半がバッチいです)
【Street Trash - Toilet meltdown】(かなりバッチいですが名場面です 笑;)
YouTubeでは名場面がいくつかアップされているので、興味があれば検索して観てみて下さい。


こんばんはぁ(*^^)v
返信削除記事を読んでいて、デ・パルマの「悪魔のシスター」が、思い浮かびました。
で、予告編やクリップを見て、この監督、しっかり映画を作れる人なんじゃないかと思いましたよ。
いちばん監督が楽しんでいるとしか思えない、このセンス。もったいないなぁ。
umetramanさんの秘蔵の1本、ですね。
応援ポチ、です。m(__)m
ばっちいですな~、とっても(笑)
返信削除Youtubeは観てみましたが、ステディカムの妙までは本編観てみないとわかんないですね。どんな人にも、過去があるってことですね。
「マルホランドドライブ」を再登場させようと、DVDのリモコン片手に格闘してましたが、「ロスト・ハイウェイ」はあれに比べると簡単です。リンチ監督の頭の中をのぞいてみたいです。すごいですね。
リンクの件、ありがとうございました。こちらもリンクさせていただきました。今後ともよろしくお願いします。
きちゃないですね~ww
返信削除でも余りの色の鮮やかさにファンタスッティックな気持ちになります。
ウィスキー初めから青いしw
サンポールみたいですね。
>よーじっく様
返信削除どうもです!
おお「悪魔のシスター」ですか!たしかにこの監督さん、デパルマとか意識していそうです。人間溶けてるのに、やたらスタイリッシュな撮り方してるし(笑)。
マトモな話しではやりたくなかったのでしょうね。
同じく勿体無いと思いますよ。卒業作品であんな凄いの作ってるのですから。今やったらピーター・ジャクソンを越えるんじゃないですかね♪
いつも応援コメントありがとうございます♪
>Whitedog様
返信削除ばっちいですか!(笑;)
やっぱり???
ステディカムはやっぱ本編を観ていただかないと凄さが伝わらないですね。ホント凄いんですよ。初めて観た時に秘蔵と決めましたから(笑)。
皆さん結構この人のカメラで撮られた作品、観てるんじゃないですか。
マルホはDVDになってやっと真相がわかる感じですか。あれビデオだったらテープがすぐ痛みそうですよ、操作し過ぎて(笑;)。
うーん「ロストハイウェイ」実は2回も観ているのですが、これまた理解していないという。3回目で頑張ります。
リンクの件ありがとうございます。
こちらこそよろしくお願いします。
いつも応援コメントありがとうございます♪
>もじゃもじゃのっぽ様
返信削除どうもです!
ははは、やっぱ汚いですよね(笑)。
でも、汚いって言われるのが最大の褒め言葉ですよ、この作品は。
有り得ない色の液体撒き散らすので、汚いんですけどまだ見られる感じです。
サンポールは確かに危険ですね!あのオッサン飲んじゃったんだ@@だから青っぽく溶けちゃったんだ。まさにファンタスティックです♪
いつも応援コメントありがとうございます♪
以前から気になっていた映画ですが未見です。
返信削除忘れていたのに思い出させられてしまいました(観てえ~よ~)
umetramanさん、羨ましすぎです。
こんばんは!
返信削除この映画、題名と便器から出てる溶けたような顔のビジュアルで知ってたけど、いまだに観たこと無い映画です。
便器に沈んでいくシーンは今見せてもらいましたが、これまた汚い!シーンだこと(笑
原色の青だとか使ってリアルさがない分グロさが中和されるかと思ったら、むしろ毒々しさが強調されてますね。原色を使う効果は十分解ってやってるみたいで、こういうの面白い。
「下品な展開に上品なカメラワーク」というのも面白そうだし、DVDがないっていうのは残念です。
リンクの件、有難うございました。今後ともよろしくお願いします。
応援ポチッしてきますね☆
>快福や様
返信削除どうも!
これもチェック済みでしたか!?さすがです^^
昔のレンタル屋のホラーコーナーでよく見かけておりましたが、パッケージのデザインをもうちょっと考えれば、人気が出たのかもしれません。当時のビデオ配給は東芝でした。センス無さすぎです(笑)。
DVD化されて再びレンタルに並ぶ日を待ちましょう♪
いつも応援コメントありがとうございます♪
>薄荷グリーン様
返信削除どうも!
結構あの便器インパクトは有名みたいですね。ビデオのパッケージにもなっていたので、レンタル屋で目立ってたのでしょう^^
原色っぽいのは確かに毒々しいですね。中盤にはアップしすぎでドロドロが被りものってのがわかる場面もあるんです(笑)。
妙に人間味もあって何度も観たくなる不思議な作品です。
DVDなんですが、実は国内で日本版が買えるみたいなんです。値段が1500円くらいで、よくわからんところですが(笑)。でも欲しいなあ・・・。買うか(爆)。
http://garitto.com/product/index/3507713
リンクありがとうございます。
こちらこそよろしくお願いします♪
いつも応援コメントありがとうございます♪
おぉ~これ観ましたか!
返信削除噂は大変聞いており、YouTubeで色々映像観て、興味津々でした。
探していたんですが、レンタル屋にありました?
並びだしたって事は、最近DVD化されだしたとか?
是非、観てみたいなぁっと思っている一つです。
もちろん、どんなばっちいことかという期待だけで(爆)
応援ぽち!
>とら次郎様
返信削除どうもです!
リリース当時から観てますよ~^^。
Youtubeに結構アップされてますね。名場面が多く観られるようでお腹一杯になりそうです(笑;)。
いえいえ、ビデオ全盛時に並んでいたものを観たのですよ。今のところDVDは正式に出ていないようなのですが、上にも記載した通り、実は国内にカルト作品専門サイトがあって、ちょっと怪しげなヤツが購入できるみたいなんです。でも安すぎるので、ちょっとどうかなぁと(笑)。
バッチいのはぜひクリアな映像で観てみたいですね!
とら次郎様、次のアメリカ出張時にこれゲットするとか!?
いつも応援コメントありがとうございます♪
これ…映画館で観ました。
返信削除何かと別のB級と抱き合わせで…その映画館はずっとこういうB級を2本立てでやっていたのです。
「モンスター・イン・ザ・クローゼット 暗闇の悪魔」「片腕サイボーグ」などのトンデモ作品もこのときに観ていました。(^^;
あまりに古いので細部を覚えていないのですが、とにかく古いウイスキーは飲むな!!ってことでしょうか。(^^)
ああ、ドロドロのグチャグチャだ。
>白くじら様
返信削除どうも!!^^
なんと、これを映画館で観たですか@@!!まさかパンフまで持ってるとか??伝説作ってますね、白くじら様^^
いい映画館に恵まれていたのですね。羨ましいですよ~。
「モンスター・イン・ザ・クローゼット」も「片腕サイボーグ」もビデオで観ました(笑)。「片腕~」は「吐きだめの悪魔」と2本立てでしたでしょ?いいなあ。
昔「片腕~」のレビューをどっかの掲示板でやったのですが、原稿とか取ってないので、もう殆ど思い出せません(笑;)。
古いウィスキーはムカつく輩に飲ませるべき!でもありますね^^
応援コメントありがとうございました♪^^
こんばんは。
返信削除パンフを発掘しました。
このときはおっしゃるとおり2本立てで、パンフまでもが2本立てで、「吐きだめの悪魔」と「片腕サイボーグ」がそれぞれ両方から開くタイプのパンフですね。
同じタイプのパンフがもう1つあって、それは「ドラゴン忍者」と「アマゾネス対ドラゴン」でした。中身をまったく覚えておりません。(^^;;
パンフには今後上映される予定の恐るべしB級たちのタイトルが一覧でありますが、チャールズ・ブロンソンの「特攻サンダーボルト作戦」や「必殺マグナム」という作品まで!(@_@)
B is the best!! だそうです。(^^)/
>白くじら様
返信削除どうも、こんばんは!^^
おおお!パンフまで持ってましたか@@!!
ああ~直に見てみたい、そのパンフを^^
しかしレアなパンフ持ってますね。「吐きだめの悪魔」に「片腕サイボーグ」のパンフ記事なんて想像つきませんよ。
どんなこと書かれているんだろう。誰が解説や評論を書いてるんだろう・・・。両方から開くタイプは昔よくありましたよね。
「クリープショー」と「XYZマーダーズ」の両方パンフなら私も持ってます(笑)。
「ドラゴン忍者」と「アマゾネス対ドラゴン」。凄いタイトルですね。ソフト化されてるんでしょうか?70年代の匂いプンプンですね
チャールズ・ブロンソンの後期はこれまたB級路線まっしぐらだったようで(笑;)。
B is the best!! いい言葉です^^
応援コメントありがとうございました♪^^