2009年10月12日月曜日

映画『ア・ダーティ・シェイム』 ・・・センスある悪趣味全開でえらいことになってます

●原題:A Dirty Shame
●ジャンル:ドラマ/コメディ
●上映時間:84min
●製作年:2004年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ジョン・ウォーターズ
◆出演:トレイシー・ウルマン、クリス・アイザック、セルマ・ブレア、ジョニー・ノックスビル、その他大勢(中毒者大勢)

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 どうもです♪
 今回はモロ下品な作品であります。やっちゃったか(笑;)。でもあれなんです、あるところで衝撃と感動を覚えてしまったのです。なので、決死の覚悟で挙げさせて頂きます。←大袈裟?

【ストーリー】
 アメリカはメリーランド州ボルチモア。全く化粧気のない主婦シルビアは、朝っぱらから求めてくる夫にウンザリしていた。離れ小屋に朝食を持っていけば、わいせつ物陳列罪で外出禁止にされてる娘カプリスが自慢のオッパイをぶん回し。セックスが大嫌いなシルビアは、ここ最近町に蔓延している卑猥な空気に嫌気が差していた。ある日のことシルビアは通勤中に頭を強打し、その時に駆けつけた自動車修理工のレイレイにまじないをかけられてしまう。その時シルビアの頭に卑猥な映像が大回転し性格が豹変。セックス中毒者に変身してしまう。町をおかしくしたのはレイレイだったのだ。頭を強打した町民はレイレイを神のように崇め、やがて町はセックスで溢れかえってしまう。そんな中、シルビアの厳格な母ビッグエセルが、町を浄化しようと立ち上がるのであったが・・・。


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【感想と雑談】
 もう大変です。ここまで、セックスやフェチズムで埋め尽くされた作品も珍しいかもしれません。本作はポルノ映画まがいの直接描写とかは一切なくて、そういう行為に様々な反応を示すキャラクタを面白おかしく描いています。実際、行為に入るところでは間接的な描写に切り替えて観る人の想像を掻き立てるようにしていますが、これが普通の行為だけでなく様々な性癖フェチズムまで出しまくりです。どちらかというと後者をアピールしています。

 冒頭、性器を模したオブジェを映したり、ラジオからスラング連呼のポップスを流したりと、早くも風紀には程遠い内容であることが判ります。ここで主人公シルビアの家が卑猥な形の樹木や植木で囲まれているのが意外なんですが、実は堅物ほど裏側の欲望は凄まじいということを象徴しているようで面白いです。

 また、登場人物に変化が訪れる際に、裸が沢山出てくるレトロな映像や、卑猥な単語をデカデカとテロップに流したりします。こういうダイレクトなメッセージを挿入することで、特別な説明を用意することなく作品のテーマを刷り込む仕掛けになっています。監督曰く、サブリミナル効果だそうです(笑)。

 主婦のシルビアは頭を強打したことで脳震盪を起こし、それまでの性格が180度向きを変えて、セックス中毒者に豹変します。仕事中の旦那と一緒に老人ホームに突入すれば、ダンスの真っ最中にペットボトルでイケないことをし、辺りをパニックに陥れたりします。家に戻れば元々セックス中毒者の娘カプリスと意気投合し盛り上がります。面白いのは、中毒者になってもまた脳震盪を起こせば元通りになるところで、シルビアはこの後とても忙しいことになります。


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 シルビアを脳震盪からセックス中毒者にパワーアップさせた張本人の自動車修理工レイレイも同じく中毒者です。過去にボンネットに頭を挟んだショックから豹変。それ以来、たまたま脳震盪を起こしては性癖に目覚め葛藤している町民らに一気に開放の手助けを行ない、それが元となって中毒者らの神様となった訳です。

 中盤、シルビアは中毒者となった町民らと出会うことになりますが、これがまた多種多様なヤツばっかで、その行為のどれもがヤバ過ぎるという。フェチの見本市。タブーの世界一周です。そんな中に葛藤し続ける男性がいれば、すかさずレイレイは男性の股間に目からビームを照射し一気に開放。レイレイは人間じゃないのかよ?と思ってはいけません。ノリで観なくてはいけないんです。ここは笑いどころです。

 町中が不謹慎な行為で溢れていくことが我慢ならないシルビアの母親ビッグエセルは、仲間の夫人らと抗議運動を展開していきますが、中毒者らの勢いは止まりません。やがて仲間の夫人も脳震盪から豹変し、腰をフリフリ喘いで撃沈。ビッグエセルの「アンタもかい!」という仰天顔にはつい笑ってしまいました。

 秩序や理性を失った中毒者らは遂にはゾンビのごとく町中を暴走するようになり、未だ抗議を続ける町民らに襲い掛かります。こうなると、町を元に戻す為にビッグエセルを応援するのが筋になりそうなものですが、逆です。早くビッグエセルを仲間にすれ!と中毒者らを応援をしたくなるのでした。

 セックスやフェチズムは確かに表に出せるものではありませんが、完全に否定できるものでもありません。タイトルの意味は「この恥さらし」だそうですが、そういう秩序や理性によって普段は抑え付けられているこれらの要素を、思い切って表に出せたらさぞかし気持ち良いんじゃないの?だったらやっちゃえ!という潔い思いが伝わってくるようで、結構スッキリして楽しめる作品なのでした。


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 監督のジョン・ウォーターズはセンスある悪趣味の帝王とか呼ばれているそうですが、たしかに下品さだけでは収まりきらない才能の持主だと思います。いつも地元ボルチモアを舞台に強烈な作品を送り出しています。観てきた限りどれもこれもマトモではなく、とにかく理性で抑えてる部分を惜しげもなくさらけ出すような作風なんです。初期作品の『ピンクフラミンゴ』では本物の奇人変人を使って、映画では絶対描かないような行為をフェイクなしでやったりしてました。食欲が暫く無くなるほど強烈ですので、未見の方は興味本位で手を伸ばさない方がいいです。これはマジです。それでもいいなら止めませんけど(笑;)。

 善良なはずの一主婦が仕事人のごとく腹立つ連中に制裁を加える『シリアルママ』や、上っ面だけの感動作を排出するスタジオ(ハリウッドですね)をブチ壊す『セシルBシネマウォーズ』は、気分爽快に浸れる大好きな作品です。比較的安心して観られるとは思ってますが、家族向けではありませんので要注意です(笑)。最近、豪華なミュージカル作品としてリメイクされた『ヘアスプレー』なんてのもあるのですが、オリジナルは未見なので、どれだけ違いがあるのか気になるところです。かなりマトモであるらしいのですが。因みにリメイク版では、監督本人が露出狂役として特別出演されてました(笑)。

 監督のコメンタリでは地元ボルチモアのことが色々語られます。劇中出てくる不味い食材や髪型や建物など地元ならではとか、こんな内容なのにロケ地の住民がやたら協力的だったとか、ホント地元を愛されてるお方なんだなと思います。また、紳士的な話し方をする一方で、フェチを語るのに劇中以上に放送禁止用語を連発したりと、まさに帝王ということも判ります(笑)。


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 さて、本作でストーリーと関係ないところで衝撃と感動を覚えてしまった点について紹介したいと思います。役者についてです。興味のある方だけ、どうぞ~。

 まず、主人公シルビアを演じるトレイシー・ウルマンですが、どこかで聞いた名前だなと思ってたら、大昔にMTV時代に一時好きになった歌い手さんなのでした。『夢見るトレイシー』という曲がお気に入りで、よく考えたらレコードも持ってました(笑)。で、この時は声も容姿も可愛らしい人だなと思っていたものですが、本作ではなんとも変わり果てた姿となって登場して、衝撃を覚えた訳です。まあ、20年以上も経ってますから仕方ないですね。元々から役者だったらしくて、当時のPVを見直してみると、たしかに目まぐるしく演技をしたりと芸達者な感じです。ジョン・ウォーターズ監督もどんな役にも成りきれる女優だと褒めていました。この『夢見るトレイシー』のPVは後半がえらいことになっていて、ひょっとして本作はこのPVの後日談になってるんじゃ・・・と思えるのでした(笑)。

『夢見るトレイシー』【Tracy Ullman - They Don't Know (complete video) 】


 次に、シルビアの旦那役クリス・アイザックですが、ミュージシャン兼役者というお方で、デビッド・リンチ監督作品にも関わってるそうです。ここで思い出したのが『ツインピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』でのFBI捜査官役なんです。若きキーファー・サザーランド演じる助手を従えた捜査官役は、出番は短いものの非常にクールで印象深いものでした。これが本作では古女房に嫌がられ一人寂しくトイレで・・・な役ですからね(笑;)。今回の役どころは初めてだそうです。やっちまったですか、うーんショック~。トレイシー・ウルマン同様に年が経てば変るのも当然ですけど、思い出に浸りやすい私にとってはとにかく、@@な出来事なんです。

 で、真打がですね、淫乱娘カプリス役のセルマ・ブレアなんです。これが一番の衝撃でした。特殊メイクのオッパイもそうなんですが、あのケバい化粧の下に見える目付きがなんとも鋭く挑発的。しかし娘ってこの女優さん何歳なんだよ・・・とか思っていると、中毒が解除され普通の人になる中盤のシーンでハタと気付きました。『ヘルボーイ』シリーズのリズ役の女優さんじゃないかい!あのクールで深い影を含んだ目元がとっても印象的で役にビタッとはまった女優さんだと思ってましたが、本作でまさかこんな役をやられるとは・・・。ギャップが激しすぎます。衝撃です。これが女優というヤツでしょうか。これがきっかけで大好きになりましたセルマ・ブレア(笑)。応援します。

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 オマケ。デビッド・ハッセルホフが本人役として特別出演してました(笑)。なぜ本作に?と思ってたら、彼もボルチモア出身だそうで、二つ返事でOKしてくれたそうです。で、どんな役かというと、舞台の町の上を通過する旅客機の乗客役として。トイレできばった後にとんでもないことが・・・。アホ過ぎます(笑)。

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↑↑↑いつの写真だ、ハッセルホフ。


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2009年10月3日土曜日

映画『ツイスター』 ・・・元気ハツラツな竜巻ディザスターなんだそうです

●原題:Twister
●ジャンル:アクション/ドラマ/スリラー
●上映時間:113min
●製作年:1996年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ヤン・デ・ボン
◆出演:ビル・パクストン、ヘレン・ハント、フィリップ・シーモア・ホフマン、ジャミー・ガーツ、ロイス・スミス、ジェイク・ビジー、その他大勢
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 どうもです♪
 やっとこさ更新ができました(汗)。今回はこれまた古い作品なのですが、いつも通りのアホ記事となっております。またある意味ズレまくりでしょう(笑;)。こんなのでよろしければ覗いてやって下さい。途中退場も大歓迎です。

【ストーリー】
 アメリカ。幼い頃、竜巻に父親を奪われたジョーは研究チームの女リーダーとして竜巻を追跡する日々を送っていた。ある日、片田舎でメンバーらと準備に励んでいると、そこに元チームリーダーで別居中の夫ビルがやってくる。離婚届けにジョーのサインをもらう為だ。しかしジョーには未練があった。早く済ませたいビルであったが、かつて発案した観測装置が完成したことをジョーから聞いて大興奮。そんなところに突然の竜巻発生の知らせが入り、ジョーもろともチームは早々にその場から発ってしまう。離婚届にサインをもらえないことに焦るビルは、連れてきたフィアンセと仕方なくチームに1日だけ付き合うことにするが・・・。


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【感想と雑談】
 何がきっかけだったかよく覚えていないのですが、子供の頃から竜巻には凄く興味がありました。木曜スペシャルで特集が組まれた時なんか、もうテレビにかぶり付き状態。いつかこの目で見てやると鼻垂らしながらワクワクしたものです。ってまた古い話だ。あの大地から遥か上空までそそり立った巨大な柱という姿に、なんとも異様といいますか神秘的といいますか、とにかく胸が高まってウットリ見とれてしまうほどの魅力を感じてしまうのです。思えば、大自然の中で壮大なもの、例えばこれも気象関係ですが、巨大な積乱雲や夕焼け雲を眺めたり、宇宙の彼方を想像したりするのが好きだったりするので、そんな好みの一部が出てるのかもしれません。

 そんな自分に本作『ツイスター』がトドメを差してくれました。うぉ、竜巻映画かよ。

 原作はマイケル・クライトン、制作はスピルバーグ、そして監督はヤン・デ・ボン。出演はヘレン・ハント、ビル・パクストンをはじめ手堅い布陣。肝心の映像面は、当時「ジュラシックパーク」によってCGが成熟した時期でもあり、不安は一切ありませんでした。これは最強の映画がやってきたなと、鼻息が竜巻のごとくジェット渦巻いてしまいました。

 初見の劇場鑑賞では期待を裏切らない竜巻の姿と、さりげないエンディング映像の仕掛けに猛烈感動。子供の頃から思い続け望んでいたものがエンタテイメント映画として登場し、これまた自分にウルトラマッチな出来というのがヤバかったようです。その後も観直していくうちに竜巻以外にも見所がどんどん増えていき、今では初見時よりも何倍もの旨味を感じるスルメ作品になってしまいました。もうカルト化ってヤツですね。散々テレビ放映されてるでしょうし、皆さんもご覧になってると思います。これのどこがカルトなんだ!?という声が聞こえてきそうですけどね(笑)。

 なんといっても一番は当時最新のCG技術で映像化された竜巻そのものですね。これ観たさに劇場まですっ飛んだ訳ですから。もう10年以上も前の作品なので今となっては見劣りはするのですが、それでも不安定な天候から発生し大回転しながら高速移動する竜巻の姿は、今観ても十分に圧巻です。走行中のトラックの背後から迫りくる竜巻が納屋を吹き飛ばし、その時に舞い上がった屋根の一部がトラックの脇に落下するという大迫力のシーンには、竜巻もアクション要素として十分成り立つものなんだとえらく感動しました。


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 本作には6回の竜巻シーンがありますが、どれも趣向を凝らした見事なものになっています。2回目からの本格的な登場シーンは結構勿体ぶったところもあって、出だしの高速展開からすぐ拝めるのかと思っていると、突然静的な展開に戻ったりしてズッコけてしまいます。が、その分ドラマの面でグッとくるところがあって、これはこれで素晴らしくこの辺りがカルト化の要因になったりしてます。

 3回目の竜巻ですが、これが湖に複数発生して、しかも1本から2本に分裂するという異様な光景を見せてくれます。更にこれに追い討ちをかけるように、目の前で何度も牛がモォォォと鳴きながらゆっくりと舞っていく姿が映され、ここでジョーとビルの間抜けな会話が華を添えます。ここはいつ見ても笑ってしまいます。

 クライマックスは最近では珍しい特大級の竜巻が発生して、いかに観測装置を吸い上げさせるか、そしていかに逃げ延びるかが見せ場となります。近くの農家に逃げ込むビルとジョーに、竜巻パワーは容赦なく襲いかかります。フェンスは軽々と舞い上がり、農機具やトラクターが宙を舞いながら迫ってきます。相手は単なる自然なのに、まるで怪物が意志を持って襲い掛かるような描き方に限界ギリギリまで映画的な見せ場が凝縮されていて、とても興奮してしまいます。

 竜巻については十分なリサーチが行なわれ、自然の法則から逸脱しないよう細心の注意が払われたものと思いますが、そんな中ヤン・デ・ボン監督の演出が隅々まで冴え渡っていて、竜巻を巡る過程にも様々な見せ場が用意されています。本作にはジョーのチームから抜け出しビル考案の観測装置を勝手にコピーして先に手柄を立てようとするクズ男ジョーナス率いるライバルチームが登場します。竜巻との対峙以外にもこの両チームが競い合うところで更にアクション性を高めているのです。休憩中のファミレスから一斉に両チームが発つ様子をズームした状態でカメラを水平に移動させたり、走行中の車両をスピーディに接写したりする独特でスピード感あるショットは監督ならではです。

 特に遥か彼方に竜巻を捉えながら低空から双方のチーム車両を交差するように映し出すショットは鳥肌もので、なんでディザスター映画でこんなにもカッコいいんだ!?と思える素晴らしさです。また、車両の側面に固定したカメラで捉えた短いショットでは、勿論画面はブレまくりなのですが、前方に渦巻く竜巻もちゃんとブレに同期した合成になっていて、よくあるショットに架空の被写体をさりげなくはめ込むという、味付けバツグンの出来になっています。大味のようで実は芸が細かいんですよ。

 更に付け加えますと、竜巻を直接的に表現するだけでなく、そこら辺のオブジェをやたらスレスレにぶっ飛ばしてくることで間接的にも凄まじさを表現していて、ボートやタンクローリーなんかが飛んできてはギリギリ頭上をかすめていくハラハラ感に畳み掛けるアクション性もこれまた監督ならではです。


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 本作は竜巻のアクション性のみが売りに感じてしまいがちですが、実はドラマ部分にも随分と見所があると思います。ここがカルト化に起因しているところで、偏り度パワーアップが始まります。

 まず、多数の登場人物がきっちりと明るく元気に描かれていて、観ていて気持ちが良いです。ジョー率いるチームメンバが活動しているところに、ビルとフィアンセが加わることでドラマが始まる訳ですが、早くも監督の切れ味バツグンな演出がグイグイと引っ張ります。それぞれ登場人物の役割や性格がテキパキと描かれ、途中メンバの一人が無線で竜巻の発生を知るやスイッチを入れたように次の展開に移るスピーディさは異常なくらいです。主人公のジョーとビルは、かつての絆を思い出しては感慨深くなったり、性格の食い違いから喧嘩を始めたりとやたら忙しくなりますが、一方ではジョーの引きずる辛い過去やビルの常軌を逸した伝説もさり気なく描くようにし、その後のドラマを盛り上げていきます。突然ですがジョー役のヘレン・ハントって可愛いですよね。

 メンバの性格は様々でも目的が一緒のチームだけでは変化球が一つ欲しくなるところで、ここで登場するのがビルのフィアンセです。彼女だけがセラピストという竜巻には無縁の存在で、都会人には想像できない異常な世界に放り込まれることになり、また我々観る側の目線にもなってそんな世界を初体験していくという、重要な役割を担っているのです。竜巻に当たり前のように向かっていくチームに恐怖を覚え、そんな最中にも携帯電話で患者からの相談に乗る様は笑いのツボですが、一方でビルに未練のあるジョーと火花を散らす辺りグッと幅を利かせています。

 そんな彼女らがファミレスで対峙する時に予期せぬ乱入者が現れます。ビルのかつての伝説を得意げに説明するジョーに、フィアンセは冷ややかな目付きで「まだビルのこと好きみたいだけど、奪い返すのは難しいわよ」と返します。この時です。この時1秒間ほどウェイトレスが二人を一瞥するカットが挿入されるのです。男を奪い合うジョーとフィアンセの関係に聞き耳を立てていたウェイトレス。これがまた生活に疲れきった表情をしていて、どんな人生を送ってきたのだろうと考えずにはいられない雰囲気を醸し出していて申し分ないです。それぞれディープな女性らが張り巡らす男子禁制の絶対領域。女の三つ巴。静かながらもバツグンの破壊力。スルーしがちと思いますが、一つのドラマが凝縮された鳥肌立つ名場面・・・と私は勝手に評価しているのですが、どうでしょうか。

 この他にも見せ場は盛り沢山です。まあ、あくまでも個人的な見解ですけどね。そうそう、だいぶ後になって気付いたのですが、チームメンバの一人をフィリップ・シーモア・ホフマンが演じているんです。車両の中ではロック音楽ばかりかけていて、いつもチャランポランなヤツなのですが、いつも世話になってるジョーの叔母さんが竜巻に襲われたことを知るや、その時に見せる一瞬の表情がとても印象的です。ホントにいい役者さんだと思います。


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 クライマックスの竜巻では、最後の1台となった観測装置をなんとかして吸い上げさせ念願の目的達成となるのですが、ジョーにとっては幼い頃に父親を奪った特大級の竜巻と再び対峙することになり、この後の究極の体験が最大の見せ場となります。復讐心と父親への未練を一気に解き放つかのような、まさに劇中でも語られる「神の領域」を垣間見るような感動的な場面であります。この時の竜巻の映像ですが、通常では見ることができない光景をCGで作っているのですが、実際ああなっているのか非常に気になるところです。

 本作は、あくまでも現実的に科学的に竜巻を追い続けるという様にバランスよくドラマを織り交ぜ、殆どが白昼のもと見易く描きった大変素晴らしいディザスター映画だと思います。『スピード』に続くヤン・デ・ボン監督の2作目に当たりますが、後期に出した作品は残念ながらどれもがイマイチに終わっています。本作の常に竜巻に向かって突っ走るというテーマが、監督の疾走感溢れる作風に奇跡的に合致したのかもしれません。監督にはまた一花咲かせて頂きたいものですね。

 因みに本作が最初の竜巻ディザスター映画かと思っていたら、以前にも同様の作品があったようです。でも、これ以降散発された関連作品を含め竜巻ディザスター映画では、本作『ツイスター』がNo1だと思っております。絶対こっちの方が面白いって♪


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 最後に、本作のテーマ曲を紹介します。冒頭の方でビルとフィアンセが広大な田園地帯に車で登場する時に流れるとてもワクワクする曲です。テレビ番組でもよく使われている名フレーズですね。この時の低空から併走する車に接近していくショットの気持ちよさは只者ではありません。カルトですカルト(笑)。



<追記>
 後で知ったのですが、この作品、当時のラズベリー賞にノミネート(受賞?)されたんだそうです。これのどこがラズベリーなんじゃ?!と言いたいところですが、ディザスターで破壊の美学を見せずに人間ドラマに時間を割くとはどういうことじゃ、という意見はわからんでもないです(笑;)。

<再追記>
 なんかこの作品、もの凄く評判悪いのね。上記のラズベリー賞も納得しました。脚本のダメさ加減に呆れるのが正しい見方のようですが、異端な私は竜巻を中心に全てのドラマが愛おしくて堪りません(笑)。

<再々追記>
 ディザスター作品『イントゥ・ザ・ストーム』('14)も記事にしてみました。よろしければ、こちらもどうぞ。 ⇒『イントゥ・ザ・ストーム』


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