●ジャンル:ドラマ/コメディ
●上映時間:84min
●製作年:2004年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ジョン・ウォーターズ
◆出演:トレイシー・ウルマン、クリス・アイザック、セルマ・ブレア、ジョニー・ノックスビル、その他大勢(中毒者大勢)
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どうもです♪
今回はモロ下品な作品であります。やっちゃったか(笑;)。でもあれなんです、あるところで衝撃と感動を覚えてしまったのです。なので、決死の覚悟で挙げさせて頂きます。←大袈裟?
【ストーリー】
アメリカはメリーランド州ボルチモア。全く化粧気のない主婦シルビアは、朝っぱらから求めてくる夫にウンザリしていた。離れ小屋に朝食を持っていけば、わいせつ物陳列罪で外出禁止にされてる娘カプリスが自慢のオッパイをぶん回し。セックスが大嫌いなシルビアは、ここ最近町に蔓延している卑猥な空気に嫌気が差していた。ある日のことシルビアは通勤中に頭を強打し、その時に駆けつけた自動車修理工のレイレイにまじないをかけられてしまう。その時シルビアの頭に卑猥な映像が大回転し性格が豹変。セックス中毒者に変身してしまう。町をおかしくしたのはレイレイだったのだ。頭を強打した町民はレイレイを神のように崇め、やがて町はセックスで溢れかえってしまう。そんな中、シルビアの厳格な母ビッグエセルが、町を浄化しようと立ち上がるのであったが・・・。
【感想と雑談】
もう大変です。ここまで、セックスやフェチズムで埋め尽くされた作品も珍しいかもしれません。本作はポルノ映画まがいの直接描写とかは一切なくて、そういう行為に様々な反応を示すキャラクタを面白おかしく描いています。実際、行為に入るところでは間接的な描写に切り替えて観る人の想像を掻き立てるようにしていますが、これが普通の行為だけでなく様々な性癖フェチズムまで出しまくりです。どちらかというと後者をアピールしています。
冒頭、性器を模したオブジェを映したり、ラジオからスラング連呼のポップスを流したりと、早くも風紀には程遠い内容であることが判ります。ここで主人公シルビアの家が卑猥な形の樹木や植木で囲まれているのが意外なんですが、実は堅物ほど裏側の欲望は凄まじいということを象徴しているようで面白いです。
また、登場人物に変化が訪れる際に、裸が沢山出てくるレトロな映像や、卑猥な単語をデカデカとテロップに流したりします。こういうダイレクトなメッセージを挿入することで、特別な説明を用意することなく作品のテーマを刷り込む仕掛けになっています。監督曰く、サブリミナル効果だそうです(笑)。
主婦のシルビアは頭を強打したことで脳震盪を起こし、それまでの性格が180度向きを変えて、セックス中毒者に豹変します。仕事中の旦那と一緒に老人ホームに突入すれば、ダンスの真っ最中にペットボトルでイケないことをし、辺りをパニックに陥れたりします。家に戻れば元々セックス中毒者の娘カプリスと意気投合し盛り上がります。面白いのは、中毒者になってもまた脳震盪を起こせば元通りになるところで、シルビアはこの後とても忙しいことになります。
シルビアを脳震盪からセックス中毒者にパワーアップさせた張本人の自動車修理工レイレイも同じく中毒者です。過去にボンネットに頭を挟んだショックから豹変。それ以来、たまたま脳震盪を起こしては性癖に目覚め葛藤している町民らに一気に開放の手助けを行ない、それが元となって中毒者らの神様となった訳です。
中盤、シルビアは中毒者となった町民らと出会うことになりますが、これがまた多種多様なヤツばっかで、その行為のどれもがヤバ過ぎるという。フェチの見本市。タブーの世界一周です。そんな中に葛藤し続ける男性がいれば、すかさずレイレイは男性の股間に目からビームを照射し一気に開放。レイレイは人間じゃないのかよ?と思ってはいけません。ノリで観なくてはいけないんです。ここは笑いどころです。
町中が不謹慎な行為で溢れていくことが我慢ならないシルビアの母親ビッグエセルは、仲間の夫人らと抗議運動を展開していきますが、中毒者らの勢いは止まりません。やがて仲間の夫人も脳震盪から豹変し、腰をフリフリ喘いで撃沈。ビッグエセルの「アンタもかい!」という仰天顔にはつい笑ってしまいました。
秩序や理性を失った中毒者らは遂にはゾンビのごとく町中を暴走するようになり、未だ抗議を続ける町民らに襲い掛かります。こうなると、町を元に戻す為にビッグエセルを応援するのが筋になりそうなものですが、逆です。早くビッグエセルを仲間にすれ!と中毒者らを応援をしたくなるのでした。
セックスやフェチズムは確かに表に出せるものではありませんが、完全に否定できるものでもありません。タイトルの意味は「この恥さらし」だそうですが、そういう秩序や理性によって普段は抑え付けられているこれらの要素を、思い切って表に出せたらさぞかし気持ち良いんじゃないの?だったらやっちゃえ!という潔い思いが伝わってくるようで、結構スッキリして楽しめる作品なのでした。
監督のジョン・ウォーターズはセンスある悪趣味の帝王とか呼ばれているそうですが、たしかに下品さだけでは収まりきらない才能の持主だと思います。いつも地元ボルチモアを舞台に強烈な作品を送り出しています。観てきた限りどれもこれもマトモではなく、とにかく理性で抑えてる部分を惜しげもなくさらけ出すような作風なんです。初期作品の『ピンクフラミンゴ』では本物の奇人変人を使って、映画では絶対描かないような行為をフェイクなしでやったりしてました。食欲が暫く無くなるほど強烈ですので、未見の方は興味本位で手を伸ばさない方がいいです。これはマジです。それでもいいなら止めませんけど(笑;)。
善良なはずの一主婦が仕事人のごとく腹立つ連中に制裁を加える『シリアルママ』や、上っ面だけの感動作を排出するスタジオ(ハリウッドですね)をブチ壊す『セシルBシネマウォーズ』は、気分爽快に浸れる大好きな作品です。比較的安心して観られるとは思ってますが、家族向けではありませんので要注意です(笑)。最近、豪華なミュージカル作品としてリメイクされた『ヘアスプレー』なんてのもあるのですが、オリジナルは未見なので、どれだけ違いがあるのか気になるところです。かなりマトモであるらしいのですが。因みにリメイク版では、監督本人が露出狂役として特別出演されてました(笑)。
監督のコメンタリでは地元ボルチモアのことが色々語られます。劇中出てくる不味い食材や髪型や建物など地元ならではとか、こんな内容なのにロケ地の住民がやたら協力的だったとか、ホント地元を愛されてるお方なんだなと思います。また、紳士的な話し方をする一方で、フェチを語るのに劇中以上に放送禁止用語を連発したりと、まさに帝王ということも判ります(笑)。
さて、本作でストーリーと関係ないところで衝撃と感動を覚えてしまった点について紹介したいと思います。役者についてです。興味のある方だけ、どうぞ~。
まず、主人公シルビアを演じるトレイシー・ウルマンですが、どこかで聞いた名前だなと思ってたら、大昔にMTV時代に一時好きになった歌い手さんなのでした。『夢見るトレイシー』という曲がお気に入りで、よく考えたらレコードも持ってました(笑)。で、この時は声も容姿も可愛らしい人だなと思っていたものですが、本作ではなんとも変わり果てた姿となって登場して、衝撃を覚えた訳です。まあ、20年以上も経ってますから仕方ないですね。元々から役者だったらしくて、当時のPVを見直してみると、たしかに目まぐるしく演技をしたりと芸達者な感じです。ジョン・ウォーターズ監督もどんな役にも成りきれる女優だと褒めていました。この『夢見るトレイシー』のPVは後半がえらいことになっていて、ひょっとして本作はこのPVの後日談になってるんじゃ・・・と思えるのでした(笑)。
『夢見るトレイシー』【Tracy Ullman - They Don't Know (complete video) 】
次に、シルビアの旦那役クリス・アイザックですが、ミュージシャン兼役者というお方で、デビッド・リンチ監督作品にも関わってるそうです。ここで思い出したのが『ツインピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』でのFBI捜査官役なんです。若きキーファー・サザーランド演じる助手を従えた捜査官役は、出番は短いものの非常にクールで印象深いものでした。これが本作では古女房に嫌がられ一人寂しくトイレで・・・な役ですからね(笑;)。今回の役どころは初めてだそうです。やっちまったですか、うーんショック~。トレイシー・ウルマン同様に年が経てば変るのも当然ですけど、思い出に浸りやすい私にとってはとにかく、@@な出来事なんです。
で、真打がですね、淫乱娘カプリス役のセルマ・ブレアなんです。これが一番の衝撃でした。特殊メイクのオッパイもそうなんですが、あのケバい化粧の下に見える目付きがなんとも鋭く挑発的。しかし娘ってこの女優さん何歳なんだよ・・・とか思っていると、中毒が解除され普通の人になる中盤のシーンでハタと気付きました。『ヘルボーイ』シリーズのリズ役の女優さんじゃないかい!あのクールで深い影を含んだ目元がとっても印象的で役にビタッとはまった女優さんだと思ってましたが、本作でまさかこんな役をやられるとは・・・。ギャップが激しすぎます。衝撃です。これが女優というヤツでしょうか。これがきっかけで大好きになりましたセルマ・ブレア(笑)。応援します。
オマケ。デビッド・ハッセルホフが本人役として特別出演してました(笑)。なぜ本作に?と思ってたら、彼もボルチモア出身だそうで、二つ返事でOKしてくれたそうです。で、どんな役かというと、舞台の町の上を通過する旅客機の乗客役として。トイレできばった後にとんでもないことが・・・。アホ過ぎます(笑)。
↑↑↑いつの写真だ、ハッセルホフ。