2015年12月28日月曜日

映画『キングスマン』・・・ 英国流スパイアクションの定番がやって参りました

●原題:Kingsman: The Secret Service
●ジャンル:アクション/アドベンチャー/コメディ
●上映時間:129min
●製作年:2014年
●製作国:イギリス
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:マシュー・ヴォーン
◆出演:コリン・ファース、タロン・エガートン、マイケル・ケイン、マーク・ストロング、サミュエル・L・ジャクソン、ソフィア・ブテラ、スフィ・クックソン、マーク・ハミル、その他大勢

【ストーリー】
 イギリス。どの政府にも属さない独立諜報機関キングスマン。エージェントのハリーは、ある事件をきっかけに、かつて作戦の最中に命を落とした同僚の息子エグジーをスカウトする。不良同然ながらも父親の血を継ぐだけあってエグジーには十分な素質があった。一方、キングスマンはアメリカのIT実業家ヴァレンタインが世界規模の陰謀を企てていることを察知。ハリーとエグジーは捜査に移るが・・・。



【感想と雑談】
 実に素晴らしい。こういうリズムを持った作品ってホントにいいものです。根底が幼少の頃に胸踊らせた007シリーズのユーモアと奇想天外さであって、それを近代的な脚本と技術で底上げしてるという、

 イギリスの面目躍如ですよこれは。

 伝統と規律を重んじる精神のもと、紳士たる身だしなみから繰り出す壮絶なアクションは、これぞ静と動を併せ持つイギリスというやつではないですか。同じ英語圏のヒャハーなアメリカよりも、日本に通じるものがありますね。この諜報機関は、まさに世界を相手にする必殺仕事人です。名作『レモ/第一の挑戦』('85)もそんなお話しでした(笑)。

 政府の指揮下に公正性がないことを嘆いた財閥は秘密裏に諜報機関を設立しますが、その本拠地に選ばれたのが伝統ある高級スーツ店キングスマンなのです。店内では趣きある調度品が落ち着きを醸す一方、超技術によるギミックが仕掛けられていて、紳士エージェントの表裏と同様に、ローテクとハイテクの対比が鮮明で目を見張るところです。これぞイギリスにしか出せない魅力というやつ。



 スパイといえばの小道具も粋なものばかりで、紳士傘が武器と盾を兼ねてるところはいかにもです(笑)。ケレン味溢れる点では小道具だけでなく、密かに建築された広大な施設も外せません。後半の舞台となるヴァレンタインの根城も下僕たちを見下ろすようにガラス張りの司令室が設置してあって、ここでドンパチやるとか懐かしい空気が充満しまくりです。

 主演はイギリス側のコリン・ファースと重鎮マイケル・ケイン。このコンビは新旧スパイやクライム関連の繋ぎ役でもあるようですね。マイケルは古くからスパイ作品の常連だし、主役の絵画泥棒を演じた『泥棒貴族』('66)のリメイク作品『モネ・ゲーム』('12)ではコリンが主役を演じてましたしね。

 また、若手役者も揃えてエージェントの世代交代まで描いてる辺り、ロートルな世界で終わらせないフレッシュさは今風といったところですね。昔ながらの007って幼い時期が描かれていなかったので斬新といえるのかも。最近の007はシリアスにそんな路線に入ってる気はしますがね。

 スパイアクションには魅力ある悪役も欠かせません。アメリカ側のそんな期待を裏切らないIT実業家ヴァレンタインを演じるは我らがサミュエル・L・ジャクソン。ニヒルでもなんでもなく、狡猾で変なところで気弱なヒップホップ野郎。今時の申し子みたいでよろしい。しかし今回のサミュエル、『ジャッキー・ブラウン』('98)の銃器密売人に戻ったかのような若々しさなんですが、なんと今年67歳なんだとか!見えないぜサミュエル。



 本作の最大の見せ場はなんといっても主人公ハリーの身のこなし。イギリス人の血統を醸しながらの戦闘シーンが素晴らしすぎます。同じイギリス人のマシュー・ヴォーン監督だからこその手腕でしょうか。独特のスピード感とワンカットのような巧妙な編集、そして縦横無尽なカメラワークによる一大殺陣はカタルシスの連続。粋なBGMがこれまた拍車をかけます。演じるコリン・ファースもよくあれだけ体が動いたもんです(全て本人が演じたと信じたい)。『96時間』シリーズはちょっとは見習って欲しい。

 ちょっと笑ってしまったのが、ヴァレンタインの女用心棒があるエージェントを迎え撃つところ。この女用心棒、両足が刃物を備えた義足になっていて、新体操みたいな技を繰り出すの。で、このエージェントが一瞬で唐竹割りにされるのね。ペローンって真っ二つ。安すぎるCGがまるでワザとやったかのようで、きっと『殺し屋1』('01)へのオマージュもあるに違いない。

 また、見た後で笑ってしまったのが、マーク・ハミル。出てたの全然気づかなかったです。かなり前面に出ていた人物なのに。言われてみればたしかにマークの面影あったような・・・。最新のスターウォーズを見る前に、本作で近況のお姿を拝んでしまいました(笑)。

 マシュー・ヴォーン監督は、経歴をみてみれば、なるほどクライム系の作品群を手がけられていたのですね。コミック原作の映画化に力を入れられているようですが、前作の『Xメン:ファースト・ジェネレーション』('11)よりも、『キック・アス』('10)での小気味よいユーモアとアクション性が更にパワーアップして帰ってきた感があります本作は。お勧めしたい逸品です。


 ちょっとスーツを着こなしてみたいと思いました。


 さて、今年はこれが最後の記事となります。素敵な作品で締めることができてよかったです(笑)。しかしまあ、ブログも8年目に突入とか、よく続いているもんです。あとどれだけ続けられるかな。。
 迷いこまれた方にちょっとでも役に立てればと来年もとりあえず頑張っていこうと思います。

 それでは来年も皆様にとって良い年となりますように。


(C)20th Century Fox Film Corp. All rights reserved
【出典】『キングスマン』/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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2015年12月16日水曜日

映画『モンスター上司2』・・・ 今度はハラスメント上司でなく悪徳起業に戦いを挑みますアホ三人衆が

●原題:Horrible Bosses 2
●ジャンル:コメディ/犯罪
●上映時間:108min
●製作年:2014年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ショーン・アンダーソン
◆出演:ジェイソン・ベイトマン、チェーリー・デイ、ジェイソン・サダイキス、ジェイミー・フォックス、ケビン・スペイシー、ジェニファー・アニストン、クリストフ・ヴァルツ、クリス・パイン、ジョナサン・バンクス、リンゼイ・スローン、その他大勢

【ストーリー】
 アメリカ。ニック、デール、カートの三人は、にっくき上司らと決別し、自らが職場の上司になるべく会社を起こすことにする。発案したシャワー用品を売り込もうとやっきになる三人は、ある大企業から莫大な注文を受けるも、そこの悪徳社長の策略によって大借金を負うことになり、工場設備や特許までも失う寸前となる。意を決した三人は、悪徳社長の息子を誘拐し身代金を巻き上げようと策略するが・・・。



【感想と雑談】
 前作は劇場公開されたのに、本作は未公開だったのですね。気付いたらレンタル屋に並んでいました。しばらく後回しにしていたのですが、改めてパッケージを見てみると、なんとクリストフ・ヴァルツが出てるじゃないですか。即決ですよこれはもう。しかしまあ、シリーズ失速の法則は免れないだろうな、と構えていたら、

 意外や楽しめたという。

 前作に引き続き、三人の主役にジェイソン・ベイトマン、チェーリー・デイ、ジェイソン・サダイキス、相変わらずの憎まれ元上司役にケビン・スペイシー、ジェニファー・アニストン、悪友の犯罪アドバイザー(笑)役にジェイミー・フォックスという、よくやったぜと思えるところに、新キャラとしてクリストフ・ヴァルツとクリス・パインまで起用するとか、随分とゴージャスな布陣になっています。

 前作では、名優らが嬉々と演じるハラスメント上司をいかに楽しく懲らしめるかに見所があったはずなのに、急激なハードボイルド展開に熱も覚めちゃった感じでした。なので今回の続編ではちょっとは気の利いたコメディらしさを期待していたのですが、これがまったく同じといってもいいくらいの展開。またかよ急激ハードボイルドだし。



 しかし、これが面白く感じました。前作で受けた犯罪コメディの妙な印象も咀嚼するうちに耐性ができて作品全体のリズムを楽しめるようになったのかもしれません。なにこの自己分析。きっとこれは、本筋関係なく三人のアホさ加減と、それを加速させる脇役のボケとツッコミを楽しむべきシリーズなのです。過激大好き細かいことは気にすんな、というアメリカ人の偉大なノリも見え隠れします。

 コメディアンらが三本矢となって暴走機関車のように作品を牽引する様はウザさを通り越して(笑)言うことなしです。ここでは脇役らに注目します。まず続投のケビン・スペイシー、ジェニファー・アニストン、そしてジェイミー・フォックスらが失速せずに全力投球しているのが素晴らしいです。特にジェニファーの自助会を壊滅させる程のエロ依存症をもって主役の三人を虜にしてしまう演技はコメディエンヌの最高峰といってもいいでしょう。メイキングで見せる、どうしてもクチにできない台詞で恥じらう様も至高です。

 続いて本作で新参の脇役の一人。悪徳社長の息子を演じるクリス・パインは、さほどいい印象のない役者だったところ、初めて等身大な姿を見た思いです。って、こんなキャラは等身大とはいわんか(笑)。コメディ作品だからか、生き生きとした様が好印象となりましたよ。カーク船長なんかより、もっとこういう役やれ。



 今回、興味を引くきっかけとなった脇役のもう一人。悪徳社長を演じるクリストフ・ヴァルツ。もう言うことなしに大好きな役者であります。タランティーノ作品『イングロリアス・バスターズ』('09)での何ヶ国語もこなすナチス高官の嫌らしさといったら、彼以外に誰が演じることができたでしょうね。独特で流暢な言い回しの中に表裏を垣間見せる様が真骨頂で、欧州生まれが持つ迫力みたいなものも感じます。そんなクリストフは本作でも実に嫌らしい悪役を好演していました。

 前作でハラスメント上司を持つことに嫌気の差した三人は、会社を起こすことで自らが上司になりますが、悪徳起業に道を閉ざされたことで、再びドタバタと走り回ることになります。あまりのピンチさに、元の上司や悪友にすがりつくものだから目も当てられない。でも、なんだかいい感じ。むしろ前作よりも好きな流れかもしれない。

 ハードボイルドに至る展開は、ハラスメント上司に対するより、ビジネス上の悪意に対する犯罪計画からの方が、違和感なく納得もいくんじゃないでしょうか。コメディであれば尚さらです。監督が変わったことで演出や雰囲気にも差が出ていますが、潔く犯罪に手を染めることで、スピード感やスマートさがあるし、ハードボイルドもどんでん返しになってるところがいいですね。こういうテーマのコメディにしては一線を超えすぎな点は変わらずですが、総合的に私は続編の本作を推したいです。


 シリーズを通して歯ブラシの粋な扱い方を学びました。


(C)2014 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
【出典】『モンスター上司2』/ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント

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2015年11月29日日曜日

映画『ドン・ジョン』・・・ もの凄いスカヨハを存分に堪能します

●原題:Don Jon
●ジャンル:コメディ/ドラマ/ロマンス
●上映時間:90min
●製作年:2013年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ジョセフ・ゴードン=レビット
◆出演:ジョセフ・ゴードン=レビット、スカーレット・ヨハンソン、ジュリアン・ムーア、トニー・ダンザ、グレン・ヘドリー、ブリー・ラーソン、ロブ・ブラウン、ジェレミー・ルーク、その他ポルノ動画大勢

【ストーリー】
アメリカ。リア充の独身男ジョンは夜な夜なナンパする人生を送っていた。今日も美女とベッドインしたジョンは、事が終わった後である行為に没頭する。それはネットでポルノ動画を鑑賞し全力投球することであった。生身の女性とどれだけ付き会おうが、ジョンはポルノ動画に別次元の快楽を求めていたのである。ある日のこと、ジョンはセクシー美女バーバラをナンパするが、彼女が予想外に夢見る乙女だったので調子が狂いだす。更には、もう一人の女性エスターとも知り合ったことで、ジョンは人生の一大事を迎えることになる・・・。



【感想と雑談】
 ジョセフ・ゴードン=レビットは、『インセプション』('10)や『ダークナイト/ライジング』('12)でのスマートで堅物なイメージが強かったので、今回の変貌具合にはちょっと驚いてしまいました。主人公ジョンを演じるだけでなく、脚本と監督までやってるなんて、

 これがジョセフの本気ってやつ。

 クラブでナンパしては持ち帰り、自宅で合体し終わると、添い寝する美女をそっと退け、ジョンは別室でパソコンをパカと開けます。そしてポルノサイトを呼び出し、今日のオカズとなる動画を物色します。ポルノ動画の快楽こそ至高とのたまうジョン。この時ターゲットオンすると全力投球でアヘ顔になるところ、全盛期のロバート・パトリックを思い出してしまいました。液体金属ロボT−1000の人。ちょっと似てませんかね。

 今回の目玉はスカーレット・ヨハンソンでありましょう。我らがスカヨハ。ビバ!スカヨハ。ブロンドセクシー美女バーバラ役の匂い立つエロさ本領発揮ですよ。本当に素晴らしい。ジョンの期待とは裏腹に純愛と家庭を重んじるバーバラは、初デートでいきなりジョンを映画に誘いますが、当然それは恋愛作品だったりします。スクリーンを恍惚な表情で見つめるバーバラの顔面ドアップは圧巻です。



 ここで鑑賞する架空の恋愛作品ですが、恋人同士をチャニング・テイタムとアン・ハサウェイが演じています(笑)。街角で出会い、愛し合い、ビンタを食らい、涙ながらに許しを乞い、遂に結婚し、そしてオープンカーで疾走する、というもの凄くベタな展開にジョンは辟易しますが、それでもバーバラの超絶セクシー美女ぶりに、今までない感情で突き進むことになります。わかる、わかるぞ。しかし、付き合っていくうちに、バーバラに対し違和感を覚えることになるジョンです。

 ところどころ登場するジョンの家族がまたいい感じです。マフィアみたいなパパはタンクトップ姿でやたら凄むけどジョンに彼女ができたことを嬉しそうにするところが可愛い。ママも豪快で明るくて可愛い。妹はいつも無口でスマホを弄ってるけど実は有能だったりする。この家族と共に日曜礼拝に参じる度、ジョンは婚前の性交渉とポルノ鑑賞(笑)を懺悔しますが、その様は逆に自分の罪を正当化しているようにも見えます。宗教のスタイルも様々なのでしょうか。

 絶好調なジョンの前に現れる熟女エスターを演じるはジュリアン・ムーア。登場した途端、いきなり泣きだします。『ブギーナイツ』('97)でも離婚調停で親権を奪われ号泣するポルノ女優役をやってたのでどうしても重なってしまいました。あれは名演技でありました。バーバラとは真逆の性格を備えたエスターの登場によって、ジョンの人生に変化が起こります。エスターが示すジョンへの態度は、バーバラとは対象的に心地よいものです。ビバ!スカヨハに変わりはないですが、年上の女性もいいものですね。一方、かつて『がきデカ』でこまわり君がいった「年上にも限度がある」にも同感ではありますが。意味不明。



 中盤、バーバラがジョンの嘘つき行為を問いただすところは、スカヨハのプンプンすぎる演技が可愛いし大笑いもできたので、コメディに間違いないなとは思いましたが、この作品、間違いなくファミリー鑑賞はNGです。ポルノ動画やポルノ用語が満載ですので。こういう男性の心理を描いた作品は、女性に受け入れられるのか嫌悪感を抱かれるのか気になるところです。

 もの足りなさは感じますが、こういう題材を面白い視点でさらりと描いている辺り、ジョセフ・ゴードン=レビット監督の今後に期待したいと思います。次作もスカヨハを起用して下さい。

 ところで、ジョンが閲覧しまくるのが『PornHub』というポルノサイトなんですが、これ実在するサイトなんですね。動画配信だけでなくオリジナル商品も発売しているアメリカでは大手のサイトのようです。で、最近、このサイトへのアクセス数が激減した期間があったそうで、それがアメリカ産ゲーム『Fallout4』が発売された直後のことだそうです。RPGの最高峰といわれる大人気のシリーズ最新作なので、世界中の男性陣はポルノそっちのけでプレイに没頭したという(笑)。わかる、わかるぞ。


 スカヨハの体のラインが凄すぎる。


<追記>
 ジョセフはロバート・ゼメキス監督の最新作『ザ・ウォーク』('15)で究極の綱渡り師を演じるようですね。シリアス系ですがゼメキス印のジョセフも楽しみです。


(C)2013 Don Jon Nevada, LLC. All Rights Reserved.
【出典】『ドン・ジョン』/KADOKAWA/角川書店

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2015年11月15日日曜日

映画『ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して』・・・ 盛大なバードウォッチングが人生を左右します

●原題:The Big Year
●ジャンル:コメディ/ドラマ
●上映時間:100min
●製作年:2011年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:デビッド・フランケル
◆出演:ジャック・ブラック、オーウェン・ウィルソン、スティーブ・マーチン、ロザムンド・パイク、ラシダ・ジョーンズ、アンジェリカ・ヒューストン、ジョベス・ウィリアムズ、その他大勢

【ストーリー】
アメリカ。1年間でウォッチングした鳥類の数を競う大イベントのザ・ビッグイヤー。今年もチャンピオンのケニーがタイトル防衛をするべく参戦するが、そんな彼をライバルとして同じく参戦する二人の男がいた。サラリーマンの独身男ブラッドと大企業の社長スチューである。3人の男達は相手の腹を探りながら、様々な攻防戦を続ける。今年の勝者はいったい誰になるのか・・・。



【感想と雑談】
 最初、どーしよーかな、と迷っていたのですが、出演陣に女優ロザムンド・パイクの名前を見つけた瞬間、即決しレジに向かってしまいました(笑)。しかしこれ、単なるバードウォッチング好きのドタバタコメディかと思っていたのですが、随分と違ってました。

 アメリカにこんな競技があったとは。

 アメリカ全土をまるまる1年かけて鳥類を追っかけ、ウォッチした数が一番多かった選手が優勝なんだって。スタートは新年明けた瞬間で、ゴールは年末の年越し直前。厳格なルールやコースとかは存在しないようで、とにかく色んな鳥をウォッチした数を自己申告していくだけの競技。

 審査員が常に張り付く訳でもなく、各選手のみで走り回って、ウォッチする度に「○○○○を見たぞー」と叫んでメモるの。アメリカではこういう規模の競技にもなると、不正するとかの発想の余地もなく、真面目にバカがつくほど一途な夢に向かって爆走するんでしょうな。

 1年もの間、どれだけバードウォッチングに時間を割き、またコストをかけられるかなので、凄まじく生活にも影響が出ます。アメリカ全土が対象になると、旅費も莫大だし、仕事も休みがち。家庭持ちだと理解を得るのも大変。さすがアメリカ、鳥好きもスケールが違い過ぎます。アホか。



 そんな競技にぞっこんな3人の男が主人公です。700種以上もの記録を持つチャンピオンのケニーを演じるはオーウェン・ウィルソン。仕事も成功していて妻がロザムンド・パイク(!)だというのに鳥のことで頭がいっぱい。親と同居中の独身男ブラッドを演じるはジャック・ブラック。厳しい生活状況だというのに鳥のことで頭がいっぱい。大企業の社長スチューを演じるはスティーブ・マーチン。部下に引き止められながらも悠々自適に鳥のことで頭がいっぱい。芸達者が勢揃いですね。

 この男達がそれぞれどんな背景を持って鳥に挑むのかを延々と追っていきます。コメディというよりも、軽快で洒落た人間ドラマという感じでしょうか。『プラダを着た悪魔』('06)や『31年目の夫婦げんか』('12)のデビッド・フランケル監督らしいスマートさですね。

 実話をもとにしているそうですが、ちゃんとエンタテイメントしているところは感心するばかりです。しかしまあ、よくぞこういう作品を撮ったなと思いますね。神出鬼没な鳥を追うのに、様々な大自然を舞台にしているので、裏方の苦労も相当なものだったのでは。VFXも使ってはいたようだけど。



 ブラッドとスチューの二人は家族の受け止め方や立場も違うけど、競技の勝ち負けよりも互いを尊重し合える関係になるのは微笑ましたかったです。

 この二人とは対照的に、ケニーが競技終了後にある光景を複雑な表情で見つめるところは、そこに被さる「欲しいものを得る為に払う代償の大きさ」を説くナレーターの声も相俟って、とてもしんみりする場面でした。

 地味な印象のバードウォッチングですが、本作はアメリカナイズされたスケール感でテンポもよく見易かったです。ジャック・ブラックが期待通りの顛末を見せてくれるところも、お約束といえばお約束ですね。大団円とはいきませんが楽しめる作品でした。

 ところで、ロザムンド・パイクなんですが、三枚目な役かと思っていたら意外とシリアス調だったので、『ゴーン・ガール』('14)がちょびっとだけ浮かんでしまいました。いかすぜ、ロザムンド。


 しかし鳥類が700種以上ってどんだけいるんだよ。


(C)2012 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

【出典】『ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して』/20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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2015年11月3日火曜日

映画『ロイヤル・セブンティーン』・・・ 米国ヤンキー娘の突撃で英国貴族がパニックに陥ります

●原題:What a Girl Wants
●ジャンル:コメディ/ドラマ/ロマンス
●上映時間:105min
●製作年:2003年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:デニー・ゴードン
◆出演:アマンダ・バインズ、コリン・ファース、ケリー・プレストン、エイリーン・アトキンス、アンナ・チャンセラー、ジョナサン・プライス、オリバー・ジェームス、クリスティーナ・コール、その他大勢

【ストーリー】
アメリカ。女子高生ダフネは母リビーとの二人暮らし。かつて英国貴族の父ヘンリーと結婚したリビーだったが、ダフネを身ごもった直後に離婚していたのである。ダフネはリビーと向き合うに連れヘンリーへの思いが強くなっていた。ある日のこと、ダフネは一大決心し、ひとり英国に飛び立つのであった・・・。



【感想と雑談】
 レンタル店で何気に手に取った作品ですが、これが当たりでした。異国に乗り込んだ女子高生が、文化の違いに揉まれながらも父親探しに奮闘する展開には、心のガッツポーズもフル全開です。我ながら意味不明です。

 以前にも、同様の米国女子高生の青春もの『ワイルド・ガール』('08)を記事にしました。米国と英国はお互い同じ英語圏なのに、文化と性質に違いがあってとても興味深いです。異国同士なら大抵は楽しめますが、英語の訛りの違いも加わる面白さから、米国と英国の関係がダントツ盛り上がりますね。

 ダフネを演じるアマンダ・バインズの可愛いこと。米国ではケリー・プレストン演じる母親リビーのアシスタントみたいな生活を送っていてパッとしない存在なんだけど、父親に会いたい一心で英国に乗り込んだ以降は、天真爛漫な威力を発揮します。英国からすれば奇行の塊が大爆進。

 名門貴族の父ヘンリーを演じるはコリン・ファース。なんでもこなす実力の英国名優ですね。一気に画面が引き締まります。ダフネの存在に驚き、こっそり米国のリビーに電話すると、事情を察知し、遂に観念するヘンリー。名門の体裁とスキャンダルの間に揺れるナイスガイです。



 ヘンリーには側近というか知恵袋みたいなジジイがいて、自分のバツイチ娘と孫娘を家系に宛てがおうと策略してるの。いずれヘンリーが政界入りしたら甘い汁吸うたろかな腹黒ファミリーで、ダフネが邪魔で仕方がない。英国流儀も相俟った悪の存在であり、米国人ダフネとの対比が凄く鮮明になります。

 貴族の地味なファッションショーに間違って紛れ込んだダフネは、調子こいてステージを闊歩してしまい、英国人を仰天させます。頭を抱えるヘンリー。しかし、英国人はダフネの斬新さに感銘し応援するようになります。ダフネざまあー、とほくそ笑んでいた腹黒ファミリーがざまあーの瞬間です。こういう痛快さがいいですね。

 『ワイルド・ガール』は父親との交流はあるものの女子高生のほぼ独走状態でしたが、本作は異国間の女子高生と父親を対等に描いていて格調の高さも伺えました。貴族でいるより自由に生きたいヘンリーの葛藤が爆発し遂ににハメを外すところや、そんな親だけにダフネと瓜二つの点があるところは、笑いのポイントです。

 意外や製作年が2003年と古いのですね。最近の作品かと思えるくらいの垢抜けさです。若めのコリン・ファースがなかなかのイケメンで、ひとりレザーパンツで踊り狂うところは、『ラブアクチュアリー』('03)のヒュー・グラントを思い出しました。・・・ああ、この作品でもコリン・ファースがいい味出してたっけ。



 ちょっと気になった点は、実在する英国の伝統や文化、性格なんかを利用してコメディの踏み台的な描き方をしているところでしょうか。ハリウッドに一方的にやられている感。しかしまあ、英国にしてみれば自国の堅苦しさを打開したい思いもあるでしょうし、派生国のオープンな米国に見とれる部分もあるのだと思います。エンタテイメントの世界では余計な心配なのかもしれません。

 そういえば、『ラブアクチュアリー』には、英国女に嫌気の差した男が渡米して米国女をはべらすエピソードがありましたね。米国女が英国訛りを楽しむコントが秀逸すぎるし、結構好きだったりします。もっとそういうのやれ英国。

 なんだかんだ、異国同士のドタバタは楽しいし(え)、固定観念やルールが際立つことで新たな発見やヒントも得られるんじゃないか、と思いますね。とにかくアマンダ・バインズとコリン・ファースがいいのでお勧めです。

 と書いておいて、アマンダ・バインズのその後を調べてみたら、本作以上の奇行ぶりに驚いてしまいました。なんだ?マリファナ所持とか、ひとん家に勝手に入って焚き火とか、飼い犬にガソリンをぶっかけたりとか、って。どーしたアマンダ。ダフネの健全さはどこにいった?女優業は終了しているようで非常に残念であります。

 ついでに、ダフネの母親リビーを演じたケリー・プレストンも調べてみたら、「夫のジョン・トラボルタと共演した『バトルフィールド・アース』('00)で、ゴールデンラズベリー賞の「最低助演女優賞」を受賞してしまった」とのこと。やるじゃん。


 英国はかつて洋楽ブームで大変お世話になった国。


(C)2003 Warner Bros. Entertainment Inc. and Gayload Films LLC.

【出典】『ロイヤル・セブンティーン』/ワーナー・ホーム・ビデオ

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2015年10月19日月曜日

映画『ゴーン・ガール』・・・ 謎な夫婦を観た後は、ゲイなミュージカル動画でキメてみます

●原題:Gone Girl
●ジャンル:ドラマ/ミステリー/スリラー
●上映時間:149min
●製作年:2014年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:デビッド・フィンチャー
◆出演:ベン・アフレック、ロザムンド・パイク、ニール・パトリック・ハリス、テイラー・ペリー、キャリー・コーン、キム・ディケンス、パトリック・フュジット、エミリー・ラタコウスキ、その他大勢

【ストーリー】
アメリカ。今日はニックとエミリー夫婦の結婚5周年の日。しかし気がつけば屋敷は荒らされ、エミリーの姿はこつ然と消えてしまう。早速、ニックのもとに駆けつける警察は誘拐事件として捜査を始めるが、この夫婦には実はある秘密が隠されていた・・・。



【感想と雑談】
 観ました、『ゴーン・ガール』。

 デビッド・フィンチャー監督、相変わらずやってるな、と思いました。この監督の作風は、なんといいますか、とにかくクールでパンクですよね。しかもズッシリしていて見応えもバッチリ。闇を残したままの顛末には考えさせられました。この余韻はいったい。

 妻との謎めいた関係にある夫を演じるのはベン・アフレック。前から胡散臭い印象しかなかった役者ですが、これがなかなかよかったです。コメンタリでは監督も、さりげない演技が旨い役者だと褒めまくり。ただ、一部ベンのワガママによるトラブル発生については一言「プロ意識の欠如」と漏らしていたけど(笑)。なんだ、見直そうと思ってたベン・アフレックは、やっぱし胡散臭い役者に変わりはないってことか。残念だな。

 謎めいたビッチ(あ言っちゃった)な妻を演じるのはロザムンド・パイク。ちょっと日本人好みの顔してませんかね彼女。あまり感情を見せない冷淡なところが実にいい。瞬きしてないような目つきが怖いんですが。ボンドガールとかSFヒロインとか、そんな役でしか見たことなかった女優さんですが、本作でいっきに株が上がりましたね。最近のSFコメディ『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』('13)でサイモン・ペグと組んでたのを思い出します。今後、要注意の女優さんになりました。

 序盤は妻失踪事件のミステリー仕立てで、中盤からは一気にドンデン返ってスリラー仕立てになって、そんである人物がエライことになって、えええとなりました。このえええとなった人物を演じたのがニール・パトリック・ハリスなんですね。

 この役者、私にとっては『スターシップ・トゥルーパーズ』('97)で軍部の若きエリート士官カールなんですが、一般的にはテレビドラマ『天才少年ドギー・ハウザー』の主人公の方が有名みたいです。ちょっと前に観たコメディ『荒野はつらいよ 〜アリゾナより愛をこめて〜』('14)でも姿を拝見していたので、ここのところ印象付いていました。下の写真のお方です。



 ここから、ニール・パトリック・ハリスのネタが始まります。

 で、『ゴーン・ガール』を観終わって、なんとなくYoutubeでミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』('01)の楽曲パート動画をダラ観してたのです。

 そしたら他の類似サムネイルにニール・パトリック・ハリスの名前が見えました。なんで?!と思って見てみたら、本人がケバい格好で歌い出しました。最近、舞台化した『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』で主役を演じた彼によるたぶん授賞式でのパフォーマンス動画でした。

 ’14年度のミュージカル主演男優賞を取ったんだって。ビックリしました。この時の選曲が「Sugar Daddy」というイカしたナンバーで、映画版の原曲が好きなんですが、このハードにアレンジされた舞台版もなかなかいいです。音がちっさいんだけど。。

 宇宙バグと戦う若き士官であり、西部開拓時代のゲス野郎であり、ロザムンド・パイクにあんなことされる資産家であるという、ニール・パトリック・ハリスのイメージが完璧に木っ端微塵になること請け合いな素敵すぎる動画なので、凄く暇でこちらにたどり着いた方なら観るしかないと思うです。こんな姿でフォーマル軍団に特攻とか、きっと笑えます。

『Neil Patrick Harris - "Sugar Daddy" - from Hedwig』


 いじくられる観客の中に、サミュエル・L・ジャクソンとケビン・ベーコンがいたような(笑)。他の観客は・・・有名な人かな、ちょっとわかりませんでした。

 ちなみに、ニール・パトリック・ハリスは同性愛をカミングアウトしているそうなので、こういうドラッグクイーンな役はすんなり演じられるのでしょうね。


 意外や素敵な発見でした。


(C)2015 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
【出典】『ゴーン・ガール』/20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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2015年8月29日土曜日

残暑払いになるでしょうか・・・


 皆さん、いかがお過ごしでしょうか?8月も終わりなんですね。暑さはまだ残りそうですが。
 ということで、残暑払い?も兼ねて、久々に巨大ものの画像を作成してみました。色んな意味で寒くなれたら幸いです(笑)。




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2015年8月23日日曜日

映画『96時間/レクイエム』・・・ 今度は本国アメリカでリーアム・ニーソンが暴れます

●原題:Taken 3
●ジャンル:犯罪/アクション/スリラー/ミステリー
●上映時間:115min
●製作年:2014年
●製作国:フランス
●言語:英語/ロシア
●カラー:カラー
◆監督:オリビエ・メガトン
◆出演:リーアム・ニーソン、マギー・グレース、ファムケ・ヤンセン、フォレスト・ウィティカー、ダグレイ・スコット、サム・スプルエル、ドン・ハーベイ、リーランド・オーサー、その他大勢

 皆さん、いかがお過ごしでしょうか?気温もやや落ち着きだしてるでしょうか?でもまあ、残暑は続くのでしょうね。熱中症にはまだ注意が必要ですね。
 今回は、アクション作品です。残暑、吹き飛ばしてくれるかな。

【ストーリー】
 アメリカ。元CIAのブライアンは、元妻レノアと別居仲の娘マギーを見守りつつ孤独の生活を送っていた。ある日、ブライアンの自宅でレノアが遺体となって発見される。巧妙な罠によって警察から追われることになるブライアンは、娘マギーを守りつつ、元CIAの仲間と共に事件の真相を追う・・・。



【感想と雑談】
 シリーズも3作目になるんですね。ここのところアクションを手広くこなしているリーアム・ニーソンがいい感じです。すっかり一方通行で無敵すぎるキャラが定着しちゃってますよね(笑)。しかし、シリーズ1作目は大傑作だったものの、これが3作目ともなると・・・。

 ますます残念なことに。

 前作の『96時間/リベンジ』('12)で散々書いていたのですが、期待も虚しく今回も引き続きアクションがひどいと思いました。アクション場面は、その場で何が起きているのか状況を確立した上で、初めて度肝を抜く演出が映えるものです。

 しかし、本作のアクション場面は、その状況がまったく確立されていません。そこに至る背景はわかるのですが、アクション自体どうなっているのかサッパリわからないのです。

 具体的には、シーンごとのカット割りが細かすぎです。なんでこうもカットを急ぐのか。ひとつのカットに何かド派手な様を見やすく映すところにアクションの意味があると思うのですが、作り手はそれをせずフィルム自体を弄くることにアクション性を見出してる節。



 毎秒といっていいくらいの間隔で切り替わる場面に、観客はまず、脳内で全てのカットを整理しながら状況を補完しなければならず、それが出来て初めてアクションを理解することができます。楽しめるまでには到底いき着けません。逃走中にフェンスを乗り越えるだけで10カット近くも割くとか。とても疲れます。

 本当に残念だったのは、中盤の見せ場であろう高速道路上でブライアンがパトカーを奪取するところ。後部座席から暴れるものだからパトカーも制御しきれず、他の車両も巻き込んで大変な事態になります。ここで大型トラックが横滑りし、コンクリートブロックを破壊しながら迫ってくる様は圧巻・・・のはずですが、粉々ズタズタなカット割りで全く楽しめませんでした。同じく高速道路チェイスを描いた『マトリックス/リローデッド』('03)の素晴らしさが身に染みます。

 こういう作りで世に出すということは、それなりに認められてるということなんでしょうか。不思議です。現場では絶対に複数のカメラで長回しをしているはずだし、迫力を増すのにVFXで補完までしているのだから、現場の成果をわざわざ細切れにしてまで劣化させることないのにと思います。1作目のタイムリミットに代わる緊迫感を出してるつもりなんでしょうか。

 編集担当を調べてみると、シリーズ3作品それぞれ別の方が担当しています。ひどかった前作との共通点を考えると、続投している監督オリビエ・メガトンの意向が強いんですかね。製作は通しでリュック・ベッソンなんですが、もうちょっと考えてやれよベッソンというところです。



 ストーリー面では、タイトルの意味は完全に無くなってますね。1作目はタイムリミットの96時間に意味があったので、まさかのシリーズ化に配給会社も大変なことかと思いますが(笑)。今回も敵対組織の存在はあるものの、ブライアンとの関係は曖昧なままで、元妻レノアの殺害事件を追うというミステリー要素が強いですね。

 そういった点ではどのキャラクタもちゃんと立っているし、取り巻く設定や環境も理にかなっていると思います。ただ、ブライアンがレノアの殺害現場に置き忘れたベーグルを、刑事がその場で食ってしまうのはどうなのか。鑑識「何かわかりましたか?」、刑事「うむ、このベーグルは旨い」。それ大事な証拠品だろ。

 ブライアンが対峙するのが殆どが警察なので、いつもの暴れっぷりもややストレスを感じるものでした。存分に暴れたとしても、先のカット割のせいでカタルシスも頭打ちでしょうが。シリーズ通しで出ている元CIAの仲間達が頼もしく活躍するところは新しかったですが、ブライアンの孤高の戦士度は薄れてしまったような。

 過去2作品は、観る側が真相をほぼ知った上でブライアンの活躍を単純に楽しむものでしたが、今回は、観る側もブライアンと一緒に真相を追いながら二転三転する様をせいぜい楽しむ、という感じですかね。

 とにかく、肝心のアクション場面をよく考えて欲しいと思います。前作に続いて残念な結果となってしまいました。なんだか前作と同じこと書いてる気がします。


 ファムケ・ヤンセンにもっと活躍して欲しかった。


<オマケ>
 シリーズ全作のIMDb評価(2015年8月23日時点)をまとめてみました。


 見事に失速していますね。今回、最終章といわれていますが、潔くこれで終わりにするか、やるなら5作目まで粘って欲しいです。盛り返してくれます。たぶん。

(C)2014 EUROPACORP - MG FILMS
【出典】『96時間/レクイエム』/20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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