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2009年2月1日日曜日

映画『ホテル・ワルツ』 ・・・イタリアから超絶技巧の映画がやってきました

●原題:Valzer
●ジャンル:ドラマ
●上映時間:90min
●製作年:2007年
●製作国:イタリア
●言語:イタリア語
●カラー:カラー
◆監督:サルヴァトーレ・マイラ
◆出演:ヴァレリア・ソラリノ、マウリツィオ・ミケリ、マリーナ・ロッコ、グラツィアーノ・ピアッツア、エウジェニオ・アレグリ、その他大勢(ホテル従業員やお客達)

 ご無沙汰しております。リニューアルがやっと完了しました。実はもっと早く出来上がる予定だったのですが、閉鎖した辺りから強烈な体調不良に陥りまして、数日間寝込んでしまった次第です。インフルエンザでなく単なる風邪でしたが(汗)。
 今回のリニューアルは3カラム化がメインになります。その他は変り映えなく地味ですが、ちょっとはブログらしくなったかな(笑)。
 さて、2007年度の東京国際映画祭でごっつ注目されたイタリア映画です。少なくとも私の中では(笑;)。いつ公開されるのだろうと、ボケ~ッと待っていたら、先日レンタル屋でいきなり発見してしまいました。激しい二度見をカマしてしまい、そんな姿が店内の防犯カメラに映っていないか心配です(笑)。

【ストーリー】
 イタリアはトレノ市。ある高級ホテルに勤める女性従業員のアッスンタは今日が勤務の最終日だというのに母親からは悪口ばかり言われいつものように気が重かった。そんなアッスンタの前に過去同僚だったルチアの父親だと名乗る男が現れる。娘に会いたがる男に動揺するアッスンタ。男は娘ルチアと8年間手紙を交わしてきたと言うが、実はその手紙はアッスンタが密かに代筆をしていたのだ。しかもルチアについては言いがたい事実があった。どーするアッスンタ・・・。



【感想と雑談】
 2007年の東京国際映画祭のプログラムからその存在と内容を知りぶっ飛んでしまった作品。残酷系以外のイタリア映画はそんなに観ることは無いのだが、これには猛烈に惹きつけられた。内容は、毎日が憂鬱な娘アッスンタを中心に、コメディとかアクションとかホラーでも何でもなく、日常の高級ホテルで起こる90分間の出来事をワルツのごとく淡々と綴っただけのものだ。

 で、何にそんなにぶっ飛んで惹きつけられたのかと言うと、それは全編ワンカットの一発撮りだからである。上映時間の90分間が劇中流れる時間とまったく同じ。リアルタイムで進行する作品は数多いと思うが、それを一発撮りで作るというのはそう無いのではないかと思う。ワンカットの長回しといえば一部アクセント付けに非常に有効な手法なのだが、それを全編に適用してしまったのだ。ぶっ飛んで惹きつけられの驚愕ものである。@。@!!←こんな感じ。以前記事にした超絶技巧PVと同様に、映画もこの様な技巧を凝らしたものにとても惹かれてしまう。上っ面だけの浅い自分(笑;)。

 オープニングタイトルが終わると、オープンカーでホテルへ移動中のアッスンタと母親のやりとりを、ボンネットに固定されたカメラが延々と映し出す。かなり性格の悪い母親のようで、一方的な捲くし立てでアッスンタを攻め、挙句の果てには「アンタを殺してやりたいわ」とか抜かす。この先ホテルがハンス・グルーバー一味に占拠された場合、真っ先にドタマに穴が開くのは、娘を売ろうとするに違いないこの母親であろう。いきなり話が逸れたが、それくらい腹立たしい母親です。

 オープンカーがホテルの地下駐車場に到着すると、勿論カットは変ることなくボンネットから外されたカメラがそのまま従業員室に向かうアッスンタを追っていく。エプロンを付けながら途中仲間と言葉を交わし、厨房から食事を客室へ運ぼうとしたアッスンタの目の前に元同僚ルチアの父親が現れる。動揺しながらもアッスンタはエレベーターに乗り目的の客室に到着。中ではサッカーチームの腹黒そうな重役らが何やら打ち合わせをしていて、早々に追い出されたアッスンタは厨房へと戻っていくが、カメラはそのまま残り今度は部屋を出て行く重役らを追っていく。チームの新監督に八百長もどきの話を持ちかけ、チームの将来を話し込みながら歩いていく重役らは、やがて従業員室に向かうアッスンタと交差し、再びカメラはアッスンタを追っていく。

 こんな調子でホテルの中で起こる様々なドラマを、焦点を切り替えながら連続して描いていくのである。観客がそれぞれ透明人間になってホテルの中を好き勝手に覗き回る感覚だ。この様な構成はいくらでもあるだろうが、それをワンカットで描くというのは、何度も言うようだがホントに驚愕ものである。



 今のこの時をワンカットで撮るだけでも驚愕ものだが、本作ではあろうことか回想シーンまでもワンカットで描き出す。ルチアの父親である男との会話の中で、アッスンタがルチアや同じく同僚だったパレスチナ人従業員ファティマのことを思い返すところだ。カメラは現在と過去の行き来を切れ目なく映し出していく。こんな生活から抜け出しセレブな貴族になりたいルチアに、異国から流れ着いた暗い過去を持つファティマ。そんな対照的な二人に過去のロングヘアのアッスンタが絡む。現在のアッスンタはショートヘアなのだ。ロングヘアがちょっと不自然に見えるが、そこは察してあげよう(笑)。

 ワンカット撮影といえばまず一切ミスは許されない訳で(普段でもそうだけど)、役者やスタッフらがどれだけ苦労を重ねたのかが一番思い浮かぶところ。ワンカットによる映像は今そこに映し出されるものが全てな訳だが、各エピソードが幾度も自然に交差することを考えると、映っていないところでも並行してエピソードを進めてるんじゃないかと思えてくる。90分もの間、部分的とはいえ自然な流れで登場してくる役者らの演技はどれもこれも圧巻である。

 また、何度も登場する回想シーンでは、アッスンタの衣装や髪型も高速で変るのだが、その時にカメラの死角ではどんな状況になっているのか。実在のホテルを使っていることもあって変に細工もできないだろうし、実際どうなってるのか気になるところ。もの凄い計算能力と作業効率が必要となりそうだ。あとカメラマンの体力も。

 本作は従来のフィルム撮影では不可能だった全編長回しをデジタルカメラによる撮影で実現したとのこと。リスクは少なかったかもしれないが、それでも大冒険である。実はデジタル処理で上手いこと繋げてました!なんてオチは絶対に無いことを願う。

 高級ホテルだというのに登場人物らに華やかさは感じられず、どこか絶望的で気分はズシリと重いまま。本筋のアッスンタと男の件が、ちょっとだけいい感じで終わるのがせめてもの救いか。空気が張り詰めた状態に長回しの緊張感も加わって、えらく緊迫したドラマであったと思う。

 ワンカットの一発撮りはギミックを入れ難そうで、必然的に人間の行動や心理を追う展開になってしまいそうである。それならばホラーやスリラーなんてのも結構イケるんじゃないかと思えるのだが、実際どうなんだろうか?

 印象深かったのが、どこぞの教授がサッカーと社会の関係についてサッカー関係者らとディスカッションするところ。サッカーは政治的支配力を持つ世界共通の宗教みたいなものと断言し、自国イタリアのサッカー王国ぶりを分析する。それで何か警鐘でもするのかと思ったら、関係者らはそれをビジネスに繋げようとする腹黒さ。お国柄らしくネタに出したものの、浮かれることなく冷静冷徹にサッカーを扱っているのが意外でもあった。

 これは『有頂天ホテル』みたいなアッホーなノリを期待すると間違いなく身体を壊すと思う(笑;)。超絶技巧なんかよりもストーリー重視の方はご注意下さい。

 タイトルについて、映画祭の時は『ワルツ』だったのが、DVDでは『ホテル・ワルツ』に変更されています。因みにタイトルで検索してみると、大分県の山間に建つモーテル「ホテルワルツ」もヒットしますが、本作とは関係無いと思います。



<2015/12/14追記>
 凄く今更なんですが、長回し撮影で全編ワンカットに収めた史上初の長編作品は、ロシア製作の『エルミタージュ幻想』('02)という作品なのだそうです。なんという勉強不足・・・TT
 『ホテル・ワルツ』よりも遥か前に作られたその内容とは、美術館を舞台にロシア王朝を描いた絢爛豪華なものであるとか。凄く興味が湧くのですが。


【出典】『ホテル・ワルツ』/オンリー・ハーツ

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2008年12月21日日曜日

映画『薔薇の名前』 ・・・ショーン・コネリーとクリスチャン・スレーターが修道院で大活躍するんだそうです

●原題:Der Name der Rose
●ジャンル:ドラマ/ミステリー/スリラー/犯罪
●上映時間:130min
●製作年:1986年
●製作国:フランス/イタリア/ドイツ
●言語:英語/ラテン語
●カラー:カラー
◆監督:ジャン・ジャック・アノー
◆出演:ショーン・コネリー、クリスチャン・スレーター、ロン・パールマン、F・マーレイ・エイブラハム、ミシェル・ロンスデール、その他大勢

 だいぶ前にビデオで観ている作品ですが、謎解きとショーン・コネリーが面白かった!という思い出しかない作品です。調べてみると評判はかなり良いようです。これはいかんということで、今回DVDで観直すことにしました。

【ストーリー】
 中世1327年の北イタリア。山頂に構えるある修道院に2人の人物が到着する。修道士ウィリアムと修道士見習いのアドソだ。清貧論争という対立を起こしていたフランシスコ会と教皇庁側の2派が、この修道院で決着すべく会談することになり、その調停役としてウィリアムが呼ばれたのだ。理論的で優れた知性を持つウィリアムは信頼のできる男であった。
 しかし到着して間もない頃、ある写字生が謎の自殺を遂げたことを修道院長から知らされるウィリアム。窓も無い塔から投身したという有り得ない状況から悪魔の仕業という噂が広まっており、このままでは会談に影響しかねないと修道院長はウィリアムに真相の解明を依頼する。
 始めは断るウィリアムも、修道院に漂う不穏な空気を感じ始め、アドソと共に得意の推理力を働かせ捜査に入る。やがて図書館の翻訳担当と副司書が立て続けに遺体となって発見され、その指先と舌の先には必ず黒インクが染み付いていることが確認される。ウィリアム達は事件のカギが図書館に存在する写本であることを付き止めるのだが・・・・・・。



【感想と雑談】
 原作はイタリアの哲学者ウンベルト・エーコによる同名小説だ。ベストセラーらしいのだが、自分はこれっぽっちも知らなかった。哲学者が書いたものだから、やたら難解なのかといえばそうでもなく、純粋にミステリー小説として楽しめるらしい。本作を観る限りでは、重厚で史実を絡めながらも堅苦しい訳ではなく、知性を持った修道士が修道院で起きる怪死事件を解明するという、意外にエンターテイメントで面白い作品だと思う。かなり端折っているはずなので、合わせて原作を読めば更に楽しめそうである。

 冒頭、荒涼とした山道を修道士ウィリアムと見習いアドソが馬に乗って登場。こんな場所に一人放たれたら5分と持たないような冷たい空気漂う場所だ。丘の上まで来た二人を手前にずっと先に見える山。その山頂にそびえ立つ修道院。ガラスペインティングという手法で撮られた作品中唯一の特撮場面だ。いい感じである。

 修道院の麓まで来ると、下から見上げる塔や外壁がかなりの巨大感を持って映し出されるのだが、これらが全てセットというのが信じられない。てっきり昔から実在する施設を使っているのかと思った。二人が到着すると、巨大な門が開き、中から修道士らが水瓶を持ってお出迎えする。その場で手を洗い清める2人を見つめる修道士らの表情が危ない。

 修道院ってこういうところなのか、それとも何かを企み隠し持っているのか。敷地内に入るとこれまた広大なのだが、勿論これらも全てセットだ。教会堂や先の塔が威厳を持って存在している。空気も冷たくどんよりしている。こういう本物志向っていいと思う。

 鋭い洞察力を持ち理論的に物事を判断できる修道士ウィリアムがとにかく頼もしい。これを渋みの増した初老のショーン・コネリーが演じているのだから説得力がある。頼もしすぎる。不気味な修道院の中であっても一緒にいれば怖いもの無しだ。彼は正式にはバスカヴィルのウィリアムと名乗っているのだが、これって姓と名みたいなものか。

 それよりも、このバスカヴィルってシャーロック・ホームズの名作とされる「バスカヴィル家の犬」を連想させるものだそうで、まさにウィリアムがシャーロック・ホームズさながらの活躍をするという訳だ。勿論、自分は「バスカヴィル家の犬」なんてのもこれっぽっちも知らなかった(爆)。

 修道士見習いアドソを演じるのは当時15歳のクリスチャン・スレーター。これがデビュー作だ。見習い役ということで、頭頂部だけを剃って挑んでいる。非常に初々しいのだが、どこを見ているのかよく判らない空ろな表情。事件を追う途中でウィリアムと分かれたアドソは、厨房に隠れていた麓の村に住む娘とやってしまう。

 ここで、おや?と思うことが。以前、ビデオで観た時は二人の手前に壷か花瓶が置いてあったはずなのだが、まったく出てこないのだ。どうやら、当時の表現の問題から検閲が入り、肝心な部分を隠す為の物体をはめ込まれていたらしい。昔の洋ピン映画か。というか、こんなことどーでもいいですね。

 話し戻って、後に大反省するアドソを温かく受け止めるウィリアムがまたいい。イカすぜコネリー。監督のジャン・ジャック・アノーはスレーターのことをえらく気に入ってたらしいです。・・・ん?まさか名前がクリスチャンだから??そんなベタなはずは。

 そうそう、あのロン・パールマンも出ているのだ。奇怪な風貌と言動から異端審問会にかけられる不運な修道士役で、元々それっぽいところに更に特殊メイクでパワーアップしてるものだからまさにドンピシャである。本作のせいで怪物役者として名が通るようになったと本人はボヤいていたらしい(笑)。彼を初めて知ったのが本作。好きな役者である。

 製作はドイツ人のベルント・アイヒンガー、監督はフランス人のジャン・ジャク・アノーで、ロケ地はイタリア。言語は世界配給に向け英語になっているが完璧ヨーロッパ映画だ。禁じられた笑いを写本に求めると罰を受けるという謎のシステムを探偵修道士が解いていくのが本筋で、ミステリーの王道を行く内容かもしれないが、その周りを史実通りのアイテムが固めている為、予備知識が無いと混乱の元となるかもしれない。自分は完璧にそうだった(汗;)。なので、清貧論争や異端審問辺りをおさらいしてみた。そしたらちょっとは理解ができ幅が出たような気がする。楽しめるかどうかは知識次第か(汗)。原作にチャレンジしてみようかな。

 最初に観た時は、本筋もわからないまま殺人のトリックやショーン・コネリーの印象のみで面白いと決め付けていたようだ。(←ダメな自分 笑;)

 偶然にもクリスマス時期にキリスト教絡みの作品を紹介してしまった。ホントに。でも中身はクリスマス気分を逆走させるようなものなので(笑)。



【出典】『薔薇の名前』/ワーナー・ホーム・ビデオ
© 1986 NEUE CONSTANTIN FILM PRODUKTION GmbH. All Rights Reserved.

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2008年7月3日木曜日

映画『インランド・エンパイア』 ・・・ローラ・ダーン最強伝説

●原題:Inland Empire
●ジャンル:ドラマ/ミステリー
●上映時間:180min
●製作年:2006年
●製作国:アメリカ/フランス/ポーランド
●言語:英語/ポーランド語
●カラー:カラー
◆監督:デビッド・リンチ
◆出演:ローラ・ダーン、ジェレミー・アイアンズ、その他大勢
◎評価:★★★★★★★★☆☆

 予告編でのローラ・ダーンの顔面アップ。これが3時間も続いたらどうしよう(笑;)。でもデビッド・リンチだし。ということで観てみた。

【ストーリー】
 アメリカはハリウッド。女優のニッキーは引越しの挨拶に来た老女の失言に気分を害していたが、ある映画への出演が決定するとそんなことはふっ飛んで狂喜しまくる。楽しい宣伝活動が一通り済むとクランクインするニッキーと共演男優だが、ある日のことリハーサルの最中にスタッフがスタジオセットの奥に不振人物を目撃する。しかし急いで探すも見失ってしまう。不穏な空気が漂い出したスタジオで監督がある事実を打ち明ける。今回の作品は実は未完成のままとなったある作品のリメイクであり、更にはその主演俳優の2人が殺されたといういわくつきの脚本でもあるというのだ。それはポーランドの民話を題材とした脚本であった。驚きを隠せないニッキーに男優であったが、気を取り直して撮影を続行することにする。
 ある日の撮影からの帰り際、ニッキーはスタジオ建屋の裏口の脇に奇妙な落書きを発見する。落書きにある矢印は中に入れと誘うかのようだ。恐る恐る裏口から中に入るニッキーはセットの裏側に入り込んでしまうが、そのセットの先にはリハーサル途中に不審人物を発見するスタッフに監督、そして共演男優がいるではないか。そして不審人物を見る彼らの目は自分に向けられているのだ。慌ててその場を走り去りセットの一部に身を隠すニッキーだが、そこがいつの間にか自分がいるはずのない一軒家に変わり、やがて自分も別人へと変貌していく・・・・・・。

【感想と雑談】
  さっぱりわからんタイムを過ごしてしまった。3時間。

 相変わらずデビッド・リンチは凄いね。よくぞここまで俺流を突き通してくれるもんだ。これまで観てきた作品、何一つ理解できたことないよ。ううう。

 なんかのっけから頭部にボカシの入った人物が出てくるわ(引用①)、ウサギの被り物一家が出てくるわ(引用②)、老女と熟女の顔面アップ合戦が拝めるわ(引用③)、照明がバシバシする中オネーチャンらが踊るわで(引用④)、意味のわからんアイテム群の猛攻撃だった。
 またそれらに加えて今回はやたらローラ・ダーンの顔面百変化が全編に渡り迫ってくる感じだった(引用⑤)。なんかもう凄いです。ローラ・ダーン。当初の予感が的中(笑。

 ネットで検索してみると、デビッド・リンチの作品を熱心に研究し解釈されている方の情報に辿り着くことができる。読めばなるほどそういうことかとよくわかる。

 凄いな。なんでそこまでわかるんだろ。こういうのは推理力をいかに働かせるかによるんだろうな。自分も見習いたいところだけど、注意力があまりないので、そこまでは無理だ。間違いなく。

 どうやらリンチ監督は極端な感性で物事を捉え表現しているだけであって、難解に見える描写も実は意味があってちゃんと辻褄合わせができるんだそうだ。で、それをするには隅々に配置された記号や信号を見落とさないようにして、その記号や信号をもって抽象的なイメージの意味を読み取り時系列の順序を整えれば解釈の完成なんだそうだ。
 これができるかできないかで観る人が真っ二つに分かれてしまうんだろうな。たぶん。

 先に自分は無理だと書いたけど、また新作が出るのであれば、なるべく観方を変えて望んでみようと思う。それと『マルホランド・ドライブ』を観直すことにしよう。なんだか気になってきた。既に2回観てるんだけど(笑;。

 結局、本作は何一つ理解できなかったものの、とてつもなくシュールな絵画を観てしまったという感動でいっぱいになった。ということで自分は傑作にしています。人それぞれの楽しみ方ですよ。
本作に限らず、デビッド・リンチが描くイメージは恐怖と不安でいっぱいだけど、観ずにはいられない魅力があるよね。

 (記事の最後にデビッド・リンチ監督の短編作品を貼り付けております。是非ご覧になって下さい。もう凄すぎです。)


①頭部にボカシが入った謎の男と謎の娼婦。なんかやっちゃいそうな予感だが、それでもボカシは頭部だけにしか入らないのだろうか・・・というヤボな疑問は胸に仕舞っておこう(笑。


②ウサギの被り物一家。和み系のシーンに見えるが、やっぱしどこか不気味である。女ウサギの声をナオミ・ワッツがやってるとか。中身もワッツなのか?


③老女とローラ・ダーンの顔面対決直前。まずはコーヒーで喉を潤そう。老女の顔面アップは殺傷能力あるのでここに出すのは控えます。


④照明がバシバシ点滅する中でロコモーションをBGMに踊りまくるオネーチャンら。例のピカチュウ問題は大丈夫だったのだろうか。


⑤これが本作の要といえるローラ・ダーンの顔面百変化。もっとアップの顔があるのだが、老女同様ここに載せるのは危険すぎるのでやや引き目のものにした。これでもビンビンきてるけど(笑。

【オマケ】

『The Alphabet』・・・デビッド・リンチが60年代に撮った実験的な短編作品です。これどう思います?トラウマになったらゴメンですけど(笑;。


『Premonition Following An Evil Deed』・・・なんなんでしょうかこれは。昔の犯罪ドラマかなんか?と思っていると突然、異次元ラボのカットが挿入されます@@


© 2006 BY INLAND EMPIRE PRODUCTIONS. ALL RIGHTS RESERVED.
【出典】『インランド・エンパイア』/角川エンタテインメント

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2008年6月1日日曜日

映画『荒鷲の要塞』 ・・・ロープウェイはちゃんと乗った方がいいと思う

●原題:Where Eagles Dare
●ジャンル:アクション/アドベンチャー/ドラマ/戦争
●上映時間:158min
●製作年:1968年
●製作国:イギリス/アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ブライアン G・ハットン
◆出演:リチャード・バートン、クリント・イーストウッド、
パトリック・ワイマーク、マイケル・ホーダーン、
メアリー・ユーア、その他大勢
◎評価:★★★★★★★★☆☆
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 ’60年代の戦争スパイ映画だ。水曜ロードショーかなんかで流れる度に観ていた気がする。面白いぞ。

【ストーリー】
 第二次世界大戦真っ只中、米国軍のカーナビー将軍がドイツ軍に捕らえられてしまう。カーナビー将軍は欧州侵攻作戦の鍵を握る重要人物で、かなりヤバイ状況だ。そこで英国軍主導の下、救出作戦が計画され、スミス少佐以下5名の精鋭と、米軍レンジャーのシェイファー中尉からなるチームが結成される。
 カーナビー将軍が捕らえられているのは、山頂に構える難攻不落の”荒鷲の要塞”だ。ドイツ軍の情報本部の根城でもある。
 救出チームは山脈の離れに落下傘で降下するが、いきなりメンバの一人が事故死する。気を取り直したチームはドイツ軍服に身を包み、要塞の麓の町まで移動し酒場に紛れ込む。情報収集しているとメンバ一人がどこかに消え遺体となって発見される。何やら不穏な空気を感じながらもチームは二手に分かれ行動に移る。
 スミス中佐とシェイファー中尉組はドイツ軍とひと悶着起こしながらも、なんとか荒鷲の要塞への潜入に成功する。カーナビー将軍を尋問中の会議室を見つけ出すが、そこでは麓の町で別れたはずのチームメンバ3名がくつろいでいた!なんとドイツ軍に寝返っていたスパイだったのだ。しかし、そんなことには動じないスミス中佐はなんと傍らのシェイファー中尉に銃を向け、そこに座れと言う。ビックリ状態のシェイファー中尉だが、そんなことにはこれまた動じないスミス中佐は、会議室にいたドイツ軍の将軍と大佐に対しある事実を伝える。自分はドイツ軍の一員であり、その3名の寝返りスパイらは実は英国軍の替玉で、シェイファー中尉とカーナビー将軍共々、ドイツ軍の中心部に潜り込ませる作戦であることを。
 そんな一同メガテン状態のところに突然、ゲシュタポ士官のハッペンが入り込んでくる。それまでの経緯を知らないハッペンは事実関係をはっきりさせる為にも秘密警察の威厳を持ってその場を対処しようとするのだ。
 この後の英国軍とドイツ軍の攻防やいかに・・・。

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【感想と雑談】
 自分はそんなに戦争映画は好きではない。国や組織同士の争いごとに成立つアクションは例えド派手であっても、アクションを緩急付ける小技を活かしきれない気がするからだ。しかし、本作はそんな小技が十分堪能できる稀な戦争映画だと思う。
 敵陣に潜入し隠密行動を取るという正確には戦争スパイ映画となるのだが、伏線を張巡らせながら劇中の登場人物どころか観ているこちらまで混乱に陥れる展開は、他の戦争スパイ映画でもそう無いのではないかな。この混乱が心地良かったりする。

 また、メインで動くのが英国軍で、その中心人物スミス中佐を演じるのがリチャード・バートンというのが良い。『ワイルドギース』でも人質奪還作戦の指揮を取る役を演じていたのだが、頭脳戦を得意とする知性溢れる役がとても似合っていると思う(引用①)。 このスミス中佐とは対照的に米国のヤンキーなシェイファー中尉を演じるのがクリント・イーストウッド。救出するのが米軍の要人ということで参加したかと思うのだが、生粋の英国人のスミス少佐とは違った荒っぽい存在感で引き立たせている(引用②)。口数少なめだが、どことなくユーモアがあって楽しい。ラストに相応しいセリフも放ったりする(笑)。

 ドイツ側では秘密警察ゲシュタポの士官も登場するのだが、その組織体質からか同じナチスドイツの仲間だというのに軍部との確執も描いたりしていて興味深い。因みにこのゲシュタポ士官、サンダーバードに出てきそうな顔をしていてインパクト大。また、登場する軍事関係のアイテム等は考証が正確であるらしく、戦争ファンには堪らないところであろう。

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 本作は隠密行動をメインとしながらもアクションもいいキレ具合を見せている。
 途中、適度なアクションの後にドイツ軍の車両を崖から落とした途端、どこにも当っていないのに車両が自ら爆発するシーンがあるのだが、これは当時のお約束演出なので”何が爆発したの?”と突っ込んではいけない(笑;)。
 隠密行動を取るため派手なアクションは控えめだが、その分一つ一つの小技アクションが際立っている。
 要塞への移動手段はロープウェイしかない為、ゴンドラの屋根に乗っかり密かに侵入するのだが、実在するロープウェイを使っている為、高所恐怖症の人は間違いなく下半身がキュウッとなるであろう(引用③)。

 そして後半の要塞脱出からエンディングまでが小技アクションの連続だ。ここまで観てきて欲求不満に陥っていた人も溜飲下がりまくりになると思う(笑)。
 数年後にダーティハリーを演じるクリント・イーストウッドだが、それまでの西部劇ガンマンよろしくシュマイザー機関銃の2丁撃ちを見せてくれる(引用④)。これも他の戦争映画にはない魅力なのではないか。
 とにかく前半に張巡らした伏線を回収しながら飛ばしまくる様は結構爽快ものである。

 『レイダース/失われたアーク』が流行っていた頃に本作を初めて観た時驚いてしまった。後半のドイツ軍のやられ方が似ていたからだ。『レイダース~』でも敵のドイツ軍は規模が小さく車両中心の一団となっていて、一人張り合うインディとのバランスが上手く取れていたのだが、そのノリが本作で既に描かれていたのだ。これは後の『レイダース~』含め多数のアクション映画が過去の名作を踏襲しまくっている証拠なんだと思う。

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 60年代の映画なんて古くてダサイと思われそうだけど、当時の作風にしか見ることのできない魅力というのもありますよ。


①知性溢れるスミス少佐を演じるリチャード・バートン。渋いです。渋すぎます。


②米軍レンジャー部隊員を演じる我らがクリント・イーストウッド。若いなあ。


③本物のロープウエイを使った決死の撮影。このあと上部のワイヤー結合部まで上ります。ヒィー。下半身がキュウッとなります。


④カッチョいいシュマイザー機関銃の2丁撃ち。さすがイーストウッド、キマッてます。

© 1968,Other Supplementary Material c 2003 Turner Entertainment Co., an AOL Time Warner Company.
【出典】『荒鷲の要塞』/ワーナー・ホーム・ビデオ

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2008年5月28日水曜日

映画『めがね』 ・・・今日も浜辺でメルシー体操です

●原題:めがね
●ジャンル:ドラマ/コメディ
●上映時間:106min
●製作年:2007年
●製作国:日本
●言語:日本語
●カラー:カラー
◆監督:荻上直子
◆出演:小林聡美、もたいまさこ、その他小勢
◎評価:★★★★★★★★☆☆

『かもめ食堂』のスタッフによる新作だ。『めがね』・・・いったいどんな映画なのか。予備知識オールゼロで挑みます。

【ストーリー】日本のどこかの南の島。季節は春。そこに一人の女タエコがやってくる。黙々と歩いた末に到着したのは一軒の宿ハマダ。非常にオープンな宿で一人の男ユージが切り盛りしている。フレンドリーに接してくるユージだが、素っ気ない受け答えをするタエコ。
その宿はタエコにとって不思議というか不可解というか、普段の生活リズムにはありえない場所であった。そこではユージの他に、地元女教師のハルナ、そしてこの時期になると必ずお手伝いしに訪れる女サクラがいた。このサクラ、周りの連中からはやたら慕われてる不思議な存在だ。毎朝欠かさず浜辺で地元の子供らにメルシー体操を教えている。
宿ではすることがないので、観光スポットを訪ねるタエコだが、返ってくる答えは”観光スポットなんてない、やるとしたら黄昏ることだよ”。皆、どうやら黄昏てるらしい(引用①)。
実はタエコは携帯電話が繋がらない場所ならどこでもいいという決断のみでここに訪れたのだが、妙に絡まれたりして空気にも馴染めない為に早々に引き上げ、もう一軒の宿マリンパレスに向かう。しかしそこでは電波が注入された宿主が待ち構えていた。逃げるように引き返し、再び宿ハマダのお世話になるタエコ。
黄昏る・・・という言葉を意識し始めたタエコは近所のスーパーで毛糸を買い、浜辺で編み物をし始める(引用②)。聞こえてくるのは波の静かな音だけだ。時間がゆっくりと過ぎていく。タエコの心の中に変化が現れてきたようだ・・・。

【感想と雑談】
毎日仕事に追われて携帯電話が鳴り続ける生活をしているとふとどこかの孤島に行って全てを忘れたくなる、という題材はもう誰もが思いつくものだと思う。本作もそれと同じ思いで主人公が南の島に行くのだが、そこに住む人や同じく訪れてきた人がどことなく不思議な存在として描かれていて、主人公が戸惑いながらも目覚めていく過程を興味深く観られたと思う。
本作のタイトルは登場する主要人物が全員めがねを着用しているところから来ているのであろう。『かもめ食堂』もそうだったが、この女流監督さんは、そういう説明的な台詞は一切入れずに逆に間の入れ方で魅せてくれる人なのだと思う。これも引き続いて小林聡美ともたいまさこ(「OH!たけし」の親子であるな)が続投しているが、絶妙な間に拍車をかける名演技で現実的な面もシュール的な面も一つの箱庭にキレイに納めた感じだ。所々で挿入される素朴な料理もこれまた花を添えていた。よく言われることかもしれないが、これは観る映画ではなく感じる映画だ。
そしてこれは究極の癒し映画でもある。あの海のキレイなこと。キレイすぎる。透明すぎる(引用③)。自分もぜひ行ってみたいところだ。自分は編み物はできないが、とにかくあの浜辺でマッタリと時間を忘れて過ごしてみたいと思う(引用④)。勿論、携帯電話はボッキリ真っ二つに割ってトドメを刺してからな!繋がらないからいいじゃんではダメ。あの忌々しいボケ携帯電話を破壊できる特典を付けてこそ夢の楽園になるのだ(違。
これ劇場の大画面で観たら間違いなく疑似体験できるんだろうな。あの浜辺での一時を。

・・・・・・ところでメルシー体操ってなんだ?

【本作シーンからいくつか引用紹介】

①ゆっくりとカメラがパンする。見よこの海を。黄昏にチャレンジ中のタエコ。


②浜辺で編み物をするタエコ。夏ではなく春というこの季節が実によさげだ。


③この海!どれだけ透明なのよ。


④ほとんど動きのない構図で一同に介するこの場面。なんだか心地がいいよ。

© めがね商会 2007
【出典】『めがね』/VAP,INC(VAP)(D)

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2008年4月28日月曜日

映画『11:14』 ・・・何気にいい役者が出ておりました

●原題:11:14
●ジャンル:コメディ/犯罪/ドラマ/スリラー
●上映時間:86min
●製作年:2003年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:グレッグ・マークス
◆出演:ヘンリー・トーマス、その他大勢
◎評価:★★★★★★★☆☆☆

これはなかなか面白かった。
タイトルにある時刻11:14がキーとなって様々なドラマが交差する。(どっかで聞いたことあるフレーズだな)

ある5つのエピソードが描かれる。(順不同)
1.ある男が携帯電話しながら車を運転していると、突然誰かを轢いてしまう。(引用①)
2.ある不良3人組がバンに載って色々悪さをしていると、突然誰かを轢いてしまう。(引用②)
3.ある親父が娘の不良彼氏の死体を発見、娘をかばう為なんとか死体を始末する。(引用③)
4.ある女のところに知合いの男が女を孕ませてしまったと、中絶費用を工面しにくる。(引用④)
5.ある娘が二股かけてる男らに妊娠したと嘘付いて、中絶費用をがめようとする。(引用⑤)

以上の一見バラバラなエピソードが、時刻11:14を起点に巧みに絡みつくという流れだ。
それぞれのエピソードが順番に描かれていくのだが、必ずその他のいずれかのエピソードが絡んでいる。観ていて”あ、あの場面がここにくるのか”という発見があって、頭の中でストーリーを組み立てていくという楽しみがあった。

ある街中で各エピソードが発生していて範囲が狭く、一種箱庭的な舞台となっている。バラバラになったパズルのピースを少しずつはめていく感じか。最後の最後、残った1つのピースががっしりはまった瞬間、ちょっとしたカタルシスも得られ、エンドロール中には全てのエピソードを走馬灯のように思い起こしてしまう心地良さもあった。

それぞれ他愛の無い出来事ばかりだが、それらを11:14という時刻を使って一つの出来事にまとめるという、特に大きな波がある訳ではないが、かなり面白い脚本であったと思う。随分と練ったんだろうなあ。
コストパフォーマンスもかなり良い映画でもあった。(役者の出演料は抜きにして)


①ヘンリー・トーマス、大きくなりました。『ET』が懐かしいです。


②この後にとても痛いことが起きます。大変です。運転手はよそ見しない方がいいと思う。


③パトリック・スウェイジ、『ゴースト/ニューヨークの幻』が懐かしいです。闘病生活とのことで、なんとか復帰頂きたいものです。


④出てますヒラリー・スワンク。相変わらず顔が怖いです。


⑤レイチェル・リー・クック、ポッチャリしてますが可愛いですね。

© 2003 Five Stories,Inc.All Rights Reserved.
【出典】『11:14』/AMG エンタテイメント株式会社

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