●原題:Valzer●ジャンル:ドラマ
●上映時間:90min
●製作年:2007年
●製作国:イタリア
●言語:イタリア語
●カラー:カラー
◆監督:サルヴァトーレ・マイラ
◆出演:ヴァレリア・ソラリノ、マウリツィオ・ミケリ、マリーナ・ロッコ、グラツィアーノ・ピアッツア、エウジェニオ・アレグリ、その他大勢(ホテル従業員やお客達)
ご無沙汰しております。リニューアルがやっと完了しました。実はもっと早く出来上がる予定だったのですが、閉鎖した辺りから強烈な体調不良に陥りまして、数日間寝込んでしまった次第です。インフルエンザでなく単なる風邪でしたが(汗)。
今回のリニューアルは3カラム化がメインになります。その他は変り映えなく地味ですが、ちょっとはブログらしくなったかな(笑)。
さて、2007年度の東京国際映画祭でごっつ注目されたイタリア映画です。少なくとも私の中では(笑;)。いつ公開されるのだろうと、ボケ~ッと待っていたら、先日レンタル屋でいきなり発見してしまいました。激しい二度見をカマしてしまい、そんな姿が店内の防犯カメラに映っていないか心配です(笑)。
【ストーリー】
イタリアはトレノ市。ある高級ホテルに勤める女性従業員のアッスンタは今日が勤務の最終日だというのに母親からは悪口ばかり言われいつものように気が重かった。そんなアッスンタの前に過去同僚だったルチアの父親だと名乗る男が現れる。娘に会いたがる男に動揺するアッスンタ。男は娘ルチアと8年間手紙を交わしてきたと言うが、実はその手紙はアッスンタが密かに代筆をしていたのだ。しかもルチアについては言いがたい事実があった。どーするアッスンタ・・・。
【感想と雑談】
2007年の東京国際映画祭のプログラムからその存在と内容を知りぶっ飛んでしまった作品。残酷系以外のイタリア映画はそんなに観ることは無いのだが、これには猛烈に惹きつけられた。内容は、毎日が憂鬱な娘アッスンタを中心に、コメディとかアクションとかホラーでも何でもなく、日常の高級ホテルで起こる90分間の出来事をワルツのごとく淡々と綴っただけのものだ。
で、何にそんなにぶっ飛んで惹きつけられたのかと言うと、それは全編ワンカットの一発撮りだからである。上映時間の90分間が劇中流れる時間とまったく同じ。リアルタイムで進行する作品は数多いと思うが、それを一発撮りで作るというのはそう無いのではないかと思う。ワンカットの長回しといえば一部アクセント付けに非常に有効な手法なのだが、それを全編に適用してしまったのだ。ぶっ飛んで惹きつけられの驚愕ものである。@。@!!←こんな感じ。以前記事にした超絶技巧PVと同様に、映画もこの様な技巧を凝らしたものにとても惹かれてしまう。上っ面だけの浅い自分(笑;)。
オープニングタイトルが終わると、オープンカーでホテルへ移動中のアッスンタと母親のやりとりを、ボンネットに固定されたカメラが延々と映し出す。かなり性格の悪い母親のようで、一方的な捲くし立てでアッスンタを攻め、挙句の果てには「アンタを殺してやりたいわ」とか抜かす。この先ホテルがハンス・グルーバー一味に占拠された場合、真っ先にドタマに穴が開くのは、娘を売ろうとするに違いないこの母親であろう。いきなり話が逸れたが、それくらい腹立たしい母親です。
オープンカーがホテルの地下駐車場に到着すると、勿論カットは変ることなくボンネットから外されたカメラがそのまま従業員室に向かうアッスンタを追っていく。エプロンを付けながら途中仲間と言葉を交わし、厨房から食事を客室へ運ぼうとしたアッスンタの目の前に元同僚ルチアの父親が現れる。動揺しながらもアッスンタはエレベーターに乗り目的の客室に到着。中ではサッカーチームの腹黒そうな重役らが何やら打ち合わせをしていて、早々に追い出されたアッスンタは厨房へと戻っていくが、カメラはそのまま残り今度は部屋を出て行く重役らを追っていく。チームの新監督に八百長もどきの話を持ちかけ、チームの将来を話し込みながら歩いていく重役らは、やがて従業員室に向かうアッスンタと交差し、再びカメラはアッスンタを追っていく。
こんな調子でホテルの中で起こる様々なドラマを、焦点を切り替えながら連続して描いていくのである。観客がそれぞれ透明人間になってホテルの中を好き勝手に覗き回る感覚だ。この様な構成はいくらでもあるだろうが、それをワンカットで描くというのは、何度も言うようだがホントに驚愕ものである。
今のこの時をワンカットで撮るだけでも驚愕ものだが、本作ではあろうことか回想シーンまでもワンカットで描き出す。ルチアの父親である男との会話の中で、アッスンタがルチアや同じく同僚だったパレスチナ人従業員ファティマのことを思い返すところだ。カメラは現在と過去の行き来を切れ目なく映し出していく。こんな生活から抜け出しセレブな貴族になりたいルチアに、異国から流れ着いた暗い過去を持つファティマ。そんな対照的な二人に過去のロングヘアのアッスンタが絡む。現在のアッスンタはショートヘアなのだ。ロングヘアがちょっと不自然に見えるが、そこは察してあげよう(笑)。
ワンカット撮影といえばまず一切ミスは許されない訳で(普段でもそうだけど)、役者やスタッフらがどれだけ苦労を重ねたのかが一番思い浮かぶところ。ワンカットによる映像は今そこに映し出されるものが全てな訳だが、各エピソードが幾度も自然に交差することを考えると、映っていないところでも並行してエピソードを進めてるんじゃないかと思えてくる。90分もの間、部分的とはいえ自然な流れで登場してくる役者らの演技はどれもこれも圧巻である。
また、何度も登場する回想シーンでは、アッスンタの衣装や髪型も高速で変るのだが、その時にカメラの死角ではどんな状況になっているのか。実在のホテルを使っていることもあって変に細工もできないだろうし、実際どうなってるのか気になるところ。もの凄い計算能力と作業効率が必要となりそうだ。あとカメラマンの体力も。
本作は従来のフィルム撮影では不可能だった全編長回しをデジタルカメラによる撮影で実現したとのこと。リスクは少なかったかもしれないが、それでも大冒険である。実はデジタル処理で上手いこと繋げてました!なんてオチは絶対に無いことを願う。
高級ホテルだというのに登場人物らに華やかさは感じられず、どこか絶望的で気分はズシリと重いまま。本筋のアッスンタと男の件が、ちょっとだけいい感じで終わるのがせめてもの救いか。空気が張り詰めた状態に長回しの緊張感も加わって、えらく緊迫したドラマであったと思う。
ワンカットの一発撮りはギミックを入れ難そうで、必然的に人間の行動や心理を追う展開になってしまいそうである。それならばホラーやスリラーなんてのも結構イケるんじゃないかと思えるのだが、実際どうなんだろうか?
印象深かったのが、どこぞの教授がサッカーと社会の関係についてサッカー関係者らとディスカッションするところ。サッカーは政治的支配力を持つ世界共通の宗教みたいなものと断言し、自国イタリアのサッカー王国ぶりを分析する。それで何か警鐘でもするのかと思ったら、関係者らはそれをビジネスに繋げようとする腹黒さ。お国柄らしくネタに出したものの、浮かれることなく冷静冷徹にサッカーを扱っているのが意外でもあった。
これは『有頂天ホテル』みたいなアッホーなノリを期待すると間違いなく身体を壊すと思う(笑;)。超絶技巧なんかよりもストーリー重視の方はご注意下さい。
タイトルについて、映画祭の時は『ワルツ』だったのが、DVDでは『ホテル・ワルツ』に変更されています。因みにタイトルで検索してみると、大分県の山間に建つモーテル「ホテルワルツ」もヒットしますが、本作とは関係無いと思います。
<2015/12/14追記>
凄く今更なんですが、長回し撮影で全編ワンカットに収めた史上初の長編作品は、ロシア製作の『エルミタージュ幻想』('02)という作品なのだそうです。なんという勉強不足・・・TT
『ホテル・ワルツ』よりも遥か前に作られたその内容とは、美術館を舞台にロシア王朝を描いた絢爛豪華なものであるとか。凄く興味が湧くのですが。
【出典】『ホテル・ワルツ』/オンリー・ハーツ

















