●原題:Phase IV
●ジャンル:ホラー/SF/スリラー
●上映時間:84min
●製作年:1974年
●製作国:アメリカ
●言語:英語語
●カラー:カラー
◆監督:ソール・バス
◆出演:マイケル・マーフィー、ナイジェル・ダベンポート、リン・フレドリック、アラン・ギフォード、ロバート・ヘンダーソン、ヘレン・ホルトン、その他アリの大群
3連休の最後ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?せっかくの休みですが、台風19号が迫っていますので、安全には十分注意して下さいね。
今回は、久々に70年代の古い作品を引っ張りだしてしまいました。
【ストーリー】
アメリカ。宇宙である異変が発生し、その影響は人類ではなく蟻の生態に及び始めていた。そのことを察知したある科学者は、暗号解析の権威を引き連れ、アリゾナの砂漠で研究を開始する。目的は蟻が交す信号を解析し生態系を把握するものであったが、やがて蟻が思いもよらぬ行動に出てしまい、科学者らは苦戦を強いられることになる・・・。
【感想と雑談】
昔、テレビの洋画劇場でちょくちょく放映されていた作品です。リアルタイムでご覧になられた方は多いのではないでしょうか。ガキンチョの頃は、テレビで様々な洋画に釘付けになっていました。特にSFファンタスティック系にハートは鷲掴みなガキンチョ時代。それを叶えてくれたテレビ局は、言うまでもなく東京12チャンネル(現テレビ東京)でありました(笑)。
動物系や昆虫系のパニックものは、大半がどんな理由で反乱(氾濫)しようが単純明快に人類が打ち勝つという、いい加減さも加わったジャンルの印象でした。が、本作はちょっと毛色が違ったようです。そういえば幾つかの場面が印象的だったのも、後日に特筆されるほどの内容に仕上がっていたからでしょうか。暫くソフト化から外れていた作品ですが、先日レンタルに並んでいたので改めて観ることにしました。
20世紀前半からグラフィックデザイナーとして活躍されていたソール・バスが最初で最後の長編作品として監督した本作ですが、なるほどその経歴からして映像面は独特のセンスで溢れまくっています。オープニングからして宇宙の映像が抽象的なイメージに変化すると、そこから蟻の生態を超接写で延々映し出していきます。多くの有名作品のデザインも手がけている氏の威力を確かにガッツリ感じるオープニングです。当時のガキンチョには何のことやらでしたが。
何かとインパクトある画作りしている本作ですが、肝心の蟻は突然変異といっても姿形は普通のままです。思考能力が異様に発達する様を、超接写とたぶんピンセットで無理矢理ポーズを取らせた演出(笑)、そして砂漠に作り上げる幾何学的なモニュメントをもって、その異様さと神秘性を表現しているのです。
砂漠の研究施設を舞台に、科学者二人が周辺で猛威を奮う蟻軍団の生態を調査します。どこか狂気じみた執念で蟻を見下す英国人ハッブスと、純粋に蟻との交信を解析する米国人レスコ。彼らと蟻が行動する様を、交互に淡々とドキュメント風に描いています。そして、そこにひょんなことで転がり込んでくる地元の娘ケンドラ。このケンドラ演じるリン・フレデリックがもの凄い美人で砂漠のオアシスすぎます。
蟻によって発電機を破壊され、激怒したハッブスがこの野郎と毒薬を噴射すると、蟻はさっそく抗体を持った新種へと変異。そして、研究施設を囲むように、鏡面化したモニュメントを一夜で作り上げます。反射させられた太陽光を浴び、その後にエアコンまで破壊された研究施設はやがて蒸し風呂になります。これはもう、蟻が逆に人類を見下し制圧しようとする構図です。
タイトルにあるフェイズとは蟻軍団との局面を段階的に移行していくことを意味していて、フェイズⅢとテロップされた時点で人類は変異した蟻に太刀打ちできない局面を迎えることになります。では、次のフェイズⅣではどんな局面が待っているのか。公的機関によるプロジェクトなので、研究施設のたった二人の科学者と娘の顛末だけで事が進むというのは実際無理があるのですが、ひとつの可能性として、とても興味深い終末感とどこか安堵感のある局面(結末)だったと思います。ドアップで映し出す日の出も印象的でした。
後発のSF作品に何らかの影響を及ぼしているんじゃないでしょうか。驚いたのが、草原を真円の中に正方形を残す形で刈り取ったモニュメントが登場するところ。これってミステリーサークルじゃないか。本作は70年代前半の製作だよな。ミステリーサークルが世界的に話題になったのは80年代に入ってからだけど、実は前からニュース沙汰になっていたのか?そうでなければ、これを創作したのは凄いことなんじゃないかな。しれっと描いてるからビックリしました。
また、本作自身、あるSF作品からインスパイアされたんじゃないかと思えるところもありました。マイケル・クライトンの小説『アンドロメダ病原体』の映画化『アンドロメダ・・・』('71)です。こちらもアリゾナの砂漠を舞台に、墜落した人工衛星に付着した未知のバクテリアを研究施設で調査するというものでした。
『アンドロメダ・・・』では、これも宇宙の脅威が発端となった様をドキュメント風に描いていて、多方面の活動が局面を迎えるごとに日時と場所をテロップします。アリゾナ砂漠の地下に建設された研究施設でバクテリアを光学顕微鏡で走査し解析画像をモニタ表示するところは、本作の蟻の超接写と交信の解析結果を表示する場面に通じます。また、防護服に身を包んで遺体を調査するところなどもそうです。『アンドロメダ・・・』大ファンの自分にとって、どうしても脱ぐえない疑念ですが、別にそれが悪いとは思いません。本作『フェイズⅣ』は、確固たる作家性をもって昇華している作品だと思います。両作に精通されてる方はどんな思いをお持ちでしょうか。
もうひとつ両作の共通点として、紅一点が登場しているのですが、これについては前述の通り本作のケンドラ嬢に軍配が上がりすぎて優勝クラスとなっています。『アンドロメダ・・・』の方はなあ・・・(笑;)。
<追記>
『アンドロメダ・・・』の紅一点とはメインの科学者グループ内のことで、研究施設内には女性スタッフは大勢いました。
と、こんな記事になっていますが、古い作品でテーマも辛辣だし、映像もさすがにガサついているので、観る人を選ぶのかな、とは思います。動物パニックものなら、今どきのメガものシリーズを観た方が幸せになれるかもしれません。
海外RPGゲームの名作『Fallout3』に登場する巨大蟻の開発者レスコ博士は、本作からの引用ですね、きっと。
【出典】『フェイズIV 戦慄!昆虫パニック』/パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
2014年10月13日月曜日
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