●原題:Confessions of a Shopaholic
●ジャンル:コメディ/ロマンス
●上映時間:104min
●製作年:2009年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:P・J・ホーガン
◆出演:アイラ・フィッシャー、ヒュー・ダンシー、クリステン・リッター、ジョーン・キューザック、ジョン・グッドマン、ジョン・リスゴー、クリスティン・スコット・トーマス、フレッド・アーミセン、レスリー・ビブ、ロバート・スタントン、ジュリー・ハガティ、その他大勢
やっぱり今年もカラ梅雨でした。しかし暑いですね。皆さんいかがお過ごしでしょうか?
今回は、コメディ作品です。見方が思いっきりズレてしまいましたが、これでいきます(笑)。
【ストーリー】
アメリカ。自称ジャーナリストのレベッカは、昔からの夢であるファッション雑誌の編集部に就職しようと躍起になっていた。しかし、レベッカは買物中毒という重大な問題を抱えていた。症状と共存しながらも、あるきっかけで経済雑誌の編集部に就くことになるレベッカは、ファッションを経済学に持ち込む記事を書き、世間の注目を浴びるようになる・・・。
【感想と雑談】
最近、コメディをよく観ていますので、本作もそろそろターゲットかなと思っていたところ、take51様の紹介記事から一気に興味が湧いてしまい、優先度が急上昇。手に取ってしまいました。
買いもの中毒(shopaholic)ですか。
冒頭、倹約家の両親をもつ主人公レベッカが、幼少時代に地味な買い物を強いられた境遇から、欲しいものならトコトン買いまくる依存症(買物中毒)に陥るエピソードが描かれます。ちっさいレベッカが羨望の眼差しで見つめるクレジットカードの精算方法が旧式というのが懐かしい(笑)。
そこからの展開はちょっと想像してたのと違いましたが、これが凄く面白かったです。製作がジェリー・ブラッカイマーなんですが、音がデカイとか絵ヅラが煩いとか、そういうこともなく、いつものお笑いサクセスストーリーを基本に楽しめました。
ちょっと経ってから『プラダを着た悪魔』('06)にどことなく似てるなと思いました。ふと『プラダ〜』のパッケージを見てみると、なんだこれ、本作のとデザイン似てるじゃんか。道理で、パッと見アン・ハサウェイに見えてた訳です(笑)。実際、主人公を演じるアイラ・フィッシャーは似ても似つかないですが。
『プラダ〜』は主人公が大問題に挑む、本作は主人公が大問題そのもの、という違いがありますが、どちらも畑違いが新風を吹き込んだり、ファッション界をターゲットにしている辺り、共通点がありますね。
しかし、捻りがあるという点では本作の方がズバ抜けてると思いました。私なりの見方では脚本が随分と練られてるんじゃないかと。登場人物が多い割に、どれもこれもキャラがちゃんと立っているのですね。深掘りがないといえばないですが、その分、テンポがいい。100分そこそこの上映時間で、よくぞここまで上手くまとめましたね。お笑い界の『ダイハード』('88)と呼びたいです。
買いもの中毒を断ちたい&ファッション雑誌に近づきたいレベッカ中心のドタバタですが、そんな彼女が綱渡りな行動をとってく一方で、取り巻く様々な要素が細切れながらも、しっかりと終わりに向かって収束していくところは感心するばかりです。それほどの作品かよ?と思われるのが大半でしょうが、私にはそう見えるんです(笑)。
例えば、レベッカが友人の薦めで依存症を断ち切る自助会に参加するのですが、このエピソードだけでも笑えたし、後まで印象強く関係を持っていくあたり、どんだけツボを押さえてるんだよ、と感服するばかり。レベッカが反省するどころか、「買いものはとっても気持ちがいい♪」と熱弁奮うと、周りの患者らが再発しだして、その後に女性カウンセラーまで大変な目にあうところはとても笑えました。
さて、この様々な要素の中で、ひときわ感心したのが、レベッカの重症度を視覚的に表現する場面。本作のキーアイテムのグリーンスカーフを目にしたレベッカが、店内でウットリするも、なんとか我慢して去ろうとした瞬間、マネキンが話しかけてきます。 重症患者のいわゆる幻覚です。
全身プラスチックの白いマネキンが人間と同じ仕草でレベッカを誘惑する様はCG(コンピュータグラフィックス)の最高峰ともいえましょう。凄いのがCGありきではなく、マネキンと人間の絡みを自然なショットで捉えているところです。カメラの前をスカーフがよぎっても、そのスカーフ越しにマネキンの顔や腕の動きがしっかり描写されてるの。スゲーなこれ。
他でも、ショーウィンドウのマネキンらが、レベッカに商品を進める仕草なんかも、マネキン自体の質感も去ることながら、ガラス越しにカメラワークも交えてそれを表現するという、特上の視覚効果です。要はマネキンが普通に動いているだけなんですが、ありえないことを当たり前のようにやってのけている。クライマックスでのレベッカに対するマネキンらの行動にはグッとくるものがありました。どんだけマネキンに拘ってんだよ自分(笑;)。
エンドクレジットを見てビックリです。マネキン効果を担当した工房が、あのインダストリアルライト&マジック(ILM) なのです。これは納得。ジョージ・ルーカスがスターウォーズの時に設立し、その後のエンタテイメントのみならずテクノロジーまで牽引するまでになった老舗工房です。ミニチュアワークとオプチカル合成にコンピュータ制御という、70年代当時から職人技に頼った工房はいくつか存在していましたが、海外ではILMこそNo1の特撮工房であると、勝手に思っています。
時代の波で、ILMもコンピュータによる映像開発を中心としているようですが、やはり匠のごとく風格があります。新手のデジタル工房が無数に立ち上がってきて、おそらく低コストで特殊効果を担っている昨今ですが、コンピュータ技術だけがバックボーンの工房は、やはりそれなりの映像でしかありません。デジタルドメインやWETAデジタル辺りが後続の素晴らしい工房かと思いますが、ILMの前には当然霞んでしまいます。
リアルな描写をミニチュアワークの精神から築いてきた特撮工房であるからこそ、どんな架空の撮影対象であっても、それを空気のごとく映像に馴染ませることができるんじゃなかと思います。しかし、ホント久々にILMのいい仕事を堪能できました。まさかこの手の作品に参加してるとは思ってもいなかったので、いいサプライズになりました。たぶん最近だと、『アベンジャーズ2』『ジュラシック・ワールド』辺りを担当していそうですが、そんなド派手なファンタジーよりも、本作のマネキンみたいに、さり気ないけど効果バツグンな映像が、ILMの真骨頂ではないでしょうか。本気出すと恐ろしい特撮工房です。
買いもの中毒の作品で、どんだけ特撮を語ってんだよ。話を戻します。
ああ、話を戻しても、浮かぶのは、あの登場人物達がどんな素晴らしいオチを迎えたかに尽きますね。レベッカが関わってきた人物全てに投げかけがあって、それが全て返ってくる展開には、それを意識せずとも作品にどこか魅力を感じる要因になってるんじゃないでしょうか。とにかく脚本には執念を感じます(笑)。
レベッカから広告がダサイとか特売をやればいいとか言われた銀行の頭取が眼から鱗になる場面は、畑違いが起こすハプニングとして映画の王道になっていますが、実際そういう思い切った行動やアイデアへの励みにもなる楽しさがありますね。こういうとこ非常に米国的ではありますが。
レベッカは買いもの中毒であることを中途半端に偽りながら爆進しますが、結局は借金取りによって公開処刑されてしまいます。息の根を止められた形ですが、後に世間から救済を受けることになり、サクセスストーリー王道の道を歩むことになります。買いもの中毒は畑違いを加速させる有効アイテムでしたが、やっぱりクレジットカードは悪!ハサミで真っ二つ!と治療を施す自助会が一番リアルなところですね。
エンドクレジットに入っても、しばらくレベッカのその後が流れますが、その中でフィンランド人とファッション誌のライバル女のオチ、そして愛する両親への微笑ましい繋がりが描かれていたのは感動でした。ちょっと大事にしたい作品が追加されました。
ところで、本作を日本語吹替えで見直したら、ますます『プラダ〜』臭を感じました。調べてみたら、本作のアイラ・フィッシャーも、『プラダ〜』のアン・ハサウェイも、声優の小松由佳さんが担当していたのでした。いい声されてますね。
名作『マネキン』('87)もILMがやっていれば。
(C)Touchstone Pictures and Jerry Bruckheimer, Inc. All Rights Reserved.
【出典】『カリフォルニア・ドールズ』/ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント
2015年7月28日火曜日
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こんばんは!
返信削除熱い記事でびっくりです!(^.^)
あのマネキンは印象深いシーンでしたが、
ここまで掘り下げて書かれるとは・・・
流石です!!(^^♪
ILMという素晴らしいチームによって作られたんですね!
顔のパーツがはっきりしてないのに、あの表現力は凄いですよね。
「最近のCGは凄いな~」くらいにしか思えなかった
自分が辛いです(笑)
>とにかく脚本には執念を感じます(笑)。
そう言われると色んな話が最後は収束してますね!
あまりにぶっ飛んだ話で単に「ありえんやろ」と
笑ってた自分がちょっと残念でした、、、(^▽^;)
とりあえずumetramanさんのお気に入りとなる
映画の出会いのきっかけとなれて良かったです!!(^^♪
あ、確かにプラダと相当かぶりますね(笑)
どこか憎めないチャーミングな主人公に凸!!(^.^)
>take51様
返信削除ズレまくりの観点で熱くなってしまいました。
この手の作品でILMに発注するから私の餌食になってしまうのです(笑)。
ILMは、「スターウォーズ」から発足して以来、エンタテイメントを牽引し続けている唯一無二の特撮工房とも言えます。「ターミネーター2」の液体金属と、「ジュラシックパーク」の恐竜が、ILM映像技術の最大の転換期でした。
特撮好きで常に映像面で感動を得たかったりするので、マネキンだけでこんな偏った記事になってしまいます(笑)。CGが当たり前のツールになってる現在、驚きや感動が少なくなってるのが寂しいですね。90年辺りが相当凄い時代だったんだと思います。
脚本なんですが、時間差で色んなエピソードを配置しておきながら、夫々が散漫にならずキッチリしたオチを迎えてるんですね。グリーンスカーフを中心に、友人、借金取り、フィンランド、ライバル女、両親、社長、自助会、など沢山の要素が出てくるのに、どれも上手く絡めて仕上げてる感じ。
中盤で主人公が妙なダンスをしますが、その理由をラストでさらりと明かすところはニクかったですね。
アン・ハサウェイに見えた(笑)アイラ・フィッシャーですが、たしかにチャーミングですよね。借金取りから電話がかかってきた時、どう逃げるか弁明するのに大慌てで病人顔するところがブサ可愛かったです(笑)。
素晴らしい作品の紹介と応援コメントありがとうございました♪