2015年7月28日火曜日

映画『お買いもの中毒な私!』 ・・・買いもの中毒女が経済界に旋風を巻き起こします

●原題:Confessions of a Shopaholic
●ジャンル:コメディ/ロマンス
●上映時間:104min
●製作年:2009年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:P・J・ホーガン
◆出演:アイラ・フィッシャー、ヒュー・ダンシー、クリステン・リッター、ジョーン・キューザック、ジョン・グッドマン、ジョン・リスゴー、クリスティン・スコット・トーマス、フレッド・アーミセン、レスリー・ビブ、ロバート・スタントン、ジュリー・ハガティ、その他大勢

 やっぱり今年もカラ梅雨でした。しかし暑いですね。皆さんいかがお過ごしでしょうか?
 今回は、コメディ作品です。見方が思いっきりズレてしまいましたが、これでいきます(笑)。

【ストーリー】
 アメリカ。自称ジャーナリストのレベッカは、昔からの夢であるファッション雑誌の編集部に就職しようと躍起になっていた。しかし、レベッカは買物中毒という重大な問題を抱えていた。症状と共存しながらも、あるきっかけで経済雑誌の編集部に就くことになるレベッカは、ファッションを経済学に持ち込む記事を書き、世間の注目を浴びるようになる・・・。



【感想と雑談】
 最近、コメディをよく観ていますので、本作もそろそろターゲットかなと思っていたところ、take51様の紹介記事から一気に興味が湧いてしまい、優先度が急上昇。手に取ってしまいました。

 買いもの中毒(shopaholic)ですか。

 冒頭、倹約家の両親をもつ主人公レベッカが、幼少時代に地味な買い物を強いられた境遇から、欲しいものならトコトン買いまくる依存症(買物中毒)に陥るエピソードが描かれます。ちっさいレベッカが羨望の眼差しで見つめるクレジットカードの精算方法が旧式というのが懐かしい(笑)。

 そこからの展開はちょっと想像してたのと違いましたが、これが凄く面白かったです。製作がジェリー・ブラッカイマーなんですが、音がデカイとか絵ヅラが煩いとか、そういうこともなく、いつものお笑いサクセスストーリーを基本に楽しめました。

 ちょっと経ってから『プラダを着た悪魔』('06)にどことなく似てるなと思いました。ふと『プラダ〜』のパッケージを見てみると、なんだこれ、本作のとデザイン似てるじゃんか。道理で、パッと見アン・ハサウェイに見えてた訳です(笑)。実際、主人公を演じるアイラ・フィッシャーは似ても似つかないですが。

 『プラダ〜』は主人公が大問題に挑む、本作は主人公が大問題そのもの、という違いがありますが、どちらも畑違いが新風を吹き込んだり、ファッション界をターゲットにしている辺り、共通点がありますね。

 しかし、捻りがあるという点では本作の方がズバ抜けてると思いました。私なりの見方では脚本が随分と練られてるんじゃないかと。登場人物が多い割に、どれもこれもキャラがちゃんと立っているのですね。深掘りがないといえばないですが、その分、テンポがいい。100分そこそこの上映時間で、よくぞここまで上手くまとめましたね。お笑い界の『ダイハード』('88)と呼びたいです。

 買いもの中毒を断ちたい&ファッション雑誌に近づきたいレベッカ中心のドタバタですが、そんな彼女が綱渡りな行動をとってく一方で、取り巻く様々な要素が細切れながらも、しっかりと終わりに向かって収束していくところは感心するばかりです。それほどの作品かよ?と思われるのが大半でしょうが、私にはそう見えるんです(笑)。



 例えば、レベッカが友人の薦めで依存症を断ち切る自助会に参加するのですが、このエピソードだけでも笑えたし、後まで印象強く関係を持っていくあたり、どんだけツボを押さえてるんだよ、と感服するばかり。レベッカが反省するどころか、「買いものはとっても気持ちがいい♪」と熱弁奮うと、周りの患者らが再発しだして、その後に女性カウンセラーまで大変な目にあうところはとても笑えました。

 さて、この様々な要素の中で、ひときわ感心したのが、レベッカの重症度を視覚的に表現する場面。本作のキーアイテムのグリーンスカーフを目にしたレベッカが、店内でウットリするも、なんとか我慢して去ろうとした瞬間、マネキンが話しかけてきます。 重症患者のいわゆる幻覚です。

 全身プラスチックの白いマネキンが人間と同じ仕草でレベッカを誘惑する様はCG(コンピュータグラフィックス)の最高峰ともいえましょう。凄いのがCGありきではなく、マネキンと人間の絡みを自然なショットで捉えているところです。カメラの前をスカーフがよぎっても、そのスカーフ越しにマネキンの顔や腕の動きがしっかり描写されてるの。スゲーなこれ。

 他でも、ショーウィンドウのマネキンらが、レベッカに商品を進める仕草なんかも、マネキン自体の質感も去ることながら、ガラス越しにカメラワークも交えてそれを表現するという、特上の視覚効果です。要はマネキンが普通に動いているだけなんですが、ありえないことを当たり前のようにやってのけている。クライマックスでのレベッカに対するマネキンらの行動にはグッとくるものがありました。どんだけマネキンに拘ってんだよ自分(笑;)。

 エンドクレジットを見てビックリです。マネキン効果を担当した工房が、あのインダストリアルライト&マジック(ILM) なのです。これは納得。ジョージ・ルーカスがスターウォーズの時に設立し、その後のエンタテイメントのみならずテクノロジーまで牽引するまでになった老舗工房です。ミニチュアワークとオプチカル合成にコンピュータ制御という、70年代当時から職人技に頼った工房はいくつか存在していましたが、海外ではILMこそNo1の特撮工房であると、勝手に思っています。

 時代の波で、ILMもコンピュータによる映像開発を中心としているようですが、やはり匠のごとく風格があります。新手のデジタル工房が無数に立ち上がってきて、おそらく低コストで特殊効果を担っている昨今ですが、コンピュータ技術だけがバックボーンの工房は、やはりそれなりの映像でしかありません。デジタルドメインやWETAデジタル辺りが後続の素晴らしい工房かと思いますが、ILMの前には当然霞んでしまいます。



 リアルな描写をミニチュアワークの精神から築いてきた特撮工房であるからこそ、どんな架空の撮影対象であっても、それを空気のごとく映像に馴染ませることができるんじゃなかと思います。しかし、ホント久々にILMのいい仕事を堪能できました。まさかこの手の作品に参加してるとは思ってもいなかったので、いいサプライズになりました。たぶん最近だと、『アベンジャーズ2』『ジュラシック・ワールド』辺りを担当していそうですが、そんなド派手なファンタジーよりも、本作のマネキンみたいに、さり気ないけど効果バツグンな映像が、ILMの真骨頂ではないでしょうか。本気出すと恐ろしい特撮工房です。

 買いもの中毒の作品で、どんだけ特撮を語ってんだよ。話を戻します。

 ああ、話を戻しても、浮かぶのは、あの登場人物達がどんな素晴らしいオチを迎えたかに尽きますね。レベッカが関わってきた人物全てに投げかけがあって、それが全て返ってくる展開には、それを意識せずとも作品にどこか魅力を感じる要因になってるんじゃないでしょうか。とにかく脚本には執念を感じます(笑)。

 レベッカから広告がダサイとか特売をやればいいとか言われた銀行の頭取が眼から鱗になる場面は、畑違いが起こすハプニングとして映画の王道になっていますが、実際そういう思い切った行動やアイデアへの励みにもなる楽しさがありますね。こういうとこ非常に米国的ではありますが。

 レベッカは買いもの中毒であることを中途半端に偽りながら爆進しますが、結局は借金取りによって公開処刑されてしまいます。息の根を止められた形ですが、後に世間から救済を受けることになり、サクセスストーリー王道の道を歩むことになります。買いもの中毒は畑違いを加速させる有効アイテムでしたが、やっぱりクレジットカードは悪!ハサミで真っ二つ!と治療を施す自助会が一番リアルなところですね。

 エンドクレジットに入っても、しばらくレベッカのその後が流れますが、その中でフィンランド人とファッション誌のライバル女のオチ、そして愛する両親への微笑ましい繋がりが描かれていたのは感動でした。ちょっと大事にしたい作品が追加されました。

 ところで、本作を日本語吹替えで見直したら、ますます『プラダ〜』臭を感じました。調べてみたら、本作のアイラ・フィッシャーも、『プラダ〜』のアン・ハサウェイも、声優の小松由佳さんが担当していたのでした。いい声されてますね。


 名作『マネキン』('87)もILMがやっていれば。


(C)Touchstone Pictures and Jerry Bruckheimer, Inc. All Rights Reserved.
【出典】『カリフォルニア・ドールズ』/ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント

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2015年7月12日日曜日

映画『カリフォルニア・ドールズ』 ・・・女子プロレスでアメリカンドリームを目指します

●原題:...All the Marbles
●ジャンル:アクション/コメディ/ドラマ/ロマンス/スポーツ
●上映時間:113min
●製作年:1981年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ロバート・アルドリッチ
◆出演:ピーター・フォーク、ヴィッキー・フレデリック、ローレン・ランドン、バート・ヤング、トレイシー・リード、アーサリン・ブライアント、リチャード・ジャッケル、ミミ萩原、ジャンボ堀、その他観客大勢

 いきなり暑いですね。皆さんいかがお過ごしでしょうか?7月も中旬あたりでそろそろ夏休みの準備でしょうか(笑)。
 今回は、古いですが、なかなか侮れないスポーツ作品の紹介です。

【ストーリー】
 アメリカ。美貌の女子プロレスコンビ、カリフォルニア・ドールズのアイリスとモリーは今日もマネージャのハリーと共に安い興行で汗を流していた。上を目指したいのに泣かず飛ばずの二人だったが、ひょんなことからある試合に勝ってしまい、世間の注目を集めることになる。そして、全米人気の一大プロレス興行にも呼ばれるようになり・・・。



【感想と雑談】
 80年代初頭の作品です。散々テレビ放映されてたと思うのですが、当時はこの手のジャンルは興味がなかったのか観た覚えがありません。ロバート・アルドリッチ監督といえば、その他の作品はテレビで何本か見ていましたが、男気溢れる骨太な作風の印象でした。

 本作では女子プロレスを題材にしていますが、監督にかかれば、骨太な世界に変わりはなかったようです。女社会ではあるけども、一般の女性観は排除して、ハードスポーツに生きる女性らを引き気味に痛快に描いてます。マネージャ男との細かな関係があったりしても、いつまでもグズグズせず、どんどん切り捨てていく感じ。

 冒頭、ミミ萩原とジャンボ堀との対戦後に意味深な日本人が現れたりもしますが、当然その場しのぎの単なるイベントです。主人公らの道を阻むライバルや悪徳プロモーターらの本筋となる存在も、ヘタなドラマを生むことなく、一貫しているのが潔い。噂に聞いていた通りの面白さでした。



 さて、女性同士の格闘といえばキャットファイトです。しかも女子プロレスとくれば、究極のキャットファイト です。主人公カリフォルニア・ドールズのアイリスとモリーを演じるヴィッキー・フレデリックとローレン・ランドンによる、ホントに女優なのかと疑わざるを得ない格闘レベルは、まさにキャットファイトの至高ともいえましょう。

 映画的な演出をせず、リングの様子を引き気味に撮っています。まるで観客かテレビの視聴者が淡々と目撃していくような視点になっていて、誤魔化しがありません。観客の声援、マネージャの怒号、レフェリーの行動も含め、ホンモノの女子プロレスの空気になっています。

 全米放映される一大イベントのクライマックス。因縁のライバルチームとの試合を、試合時間の30分とほぼ同じ尺で描いていて、これがまた手に汗握ったりします。それまでの主人公らを巡る様々な要素がいっきに集約されていて、要はイカサマ行為が乱発されるのですが、それがどう決着するのか気になって仕方ないです。



 押され気味のカリフォルニア・ドールズが、一瞬でイカサマ行為とライバルチームをひっくり返すところは、あまりに急転すぎる痛快さで爆笑してしまいました。あれは凄かった(笑)。これがアルドリッチ監督の真骨頂か。心のガッツポーズも発動しまくりです。

 マネージャのハリーを演じるのはピーター・フォークなんですが、刑事コロンボの印象がどうしても強いので(笑)、後先考えない図太いキャラというのは新鮮でした。また、途中トラブルからブチ切れてプロモーターの高級車をバットで破壊するところは、そういう描写の走りなんじゃないかな、とふと思いました。どうなんだろう。

 クライマックスの試合後、因縁のライバルチームがカリフォルニア・ドールズに取る行動には、とても感動しました。あれだけの関係であっても、スポーツの原点に戻って、潔い考えに触れたアルドリッチ監督、ホントにグッドジョブです。

 そういえば、同監督の『ロンゲスト・ヤード』('74)も刑務所の男社会でアメフト試合を痛快にこなす作品でしたが、こちらも最後に看守の囚人に対する敬意がさらりと描かれていて、子供心にも感銘を受けた思い出があります。アルドリッチ監督の遺作となった本作は非常に趣深い作品だと思います。

 そうそう、ソフト化にはなんと昔のテレビ放映時の吹替えも入っています。力いっぱい昭和な(笑)吹替えで鑑賞するのも一興でしょう。


 泥レス試合のオッパイぽろりは究極のオマケ。


(C)1981 by Metro-Goldwyn-mayer Film Co.and SLM Entertainment,Ltd.
【出典】『カリフォルニア・ドールズ』/ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
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2015年7月6日月曜日

映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』・・・ シャーリーズ・セロン最強伝説

●原題:Mad Max: Fury Road
●ジャンル:アクション/アドベンチャー/SF
●上映時間:120min
●製作年:2015年
●製作国:オーストラリア/アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:ジョージ・ミラー
◆出演:トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、ヒュー・キーズ・バイアン、ゾーイ・クラビッツ、ロージー・ハンティントン・ホワイトリー、リリー・コウ、アビー・リー、コートニー・イートン、その他狂った人大勢

 7月に入ってました。皆さんいかがお過ごしでしょうか?
 今回は、もの凄く久々に劇場新作の記事で更新したいと思います。

【ストーリー】
 核戦争によって砂漠と化した世界。暴力組織の内輪もめに巻き込まれた旅人マックスは、組織を裏切り良き社会を目指す女戦士フュリオサに合流し、タンクローリーで追手の暴走族を蹴散らす・・・。



【感想と雑談】
 面白かったです。久々のシリーズ作品なので、ダレてたら困るなと思ってましたが、そんな心配は消し飛びました。

 このテンションの張り具合は、ジョージ・ミラーの功績が一番でしょうが、周りを固めるスタッフ陣と役者陣らのシリーズへの理解度も相当なものだったのでしょうね。『マッドマックス2』(’82)から続く世界観のようですが、2はまだ現実的だったのに対して、本作はかなり病状が進行した毒世界になってます。

 放射能によってか、見た目がいかにもフリークスかミュータントかってくらいのイカれた連中が、暴力装置をもって弱者らを支配してるのね。なんだか『インディジョーンズ/魔宮の伝説』('84)の邪教集団みたい。で、トム・ハーディ演じるマックスが、強いんだか弱いんだかわからんうちに拉致されるの。なにこの世界、と思ってしまいましたが、それも数分のうち。

 シャーリーズ・セロン演じる女戦士フュリオサが登場するや、タンクローリーを爆走し始めるところから、完全に虜になってしまいました。しかし、シャーリーズはワケありキャラであれば何でもこなしますよね。筋の通った強い女がお似合いでしょうか。CGでゴツイ義手を付けてたけど、体の線は細くてきれいでした(笑)。

 フュリオサ以外にも女性キャラが結構出てきて砂漠のオアシスになってるとこは、異常すぎる世界には眩しい存在。でも、危なっかしい世界でセクシーな格好は、見ていてハラハラします。逆にまだまともに見える2の世界では、こうも女キャラは出てこなかったような。無口なアマゾネス風の女戦士はいたけども。

 この感動は『デス・レース』('09)に通じるものがありました。あちらは70年代のSF珍作のリメイクでしたが、そのパワフルさに終始笑いが絶えなかった傑作でしたが、今回もそんな感じで見ることができました。そもそも『デス・レース』も武装したタンクローリーが大バカなオチを持って退場する盛り上がりっぷりでしたが、あれはきっと『マッドマックス2』へのオマージュだったのでしょうね。

 今回はジョージ・ミラーが変わらず監督した正真正銘シリーズの後継作品ですからね。とにかく、シリーズ失速の法則がいっさい当てはまらずの勢い。真の主役ともいえる改造車のオンパレードぶりは笑わずにはいられません。

 最高なのが、戦闘集団の中にBGM担当のトラックがいたこと。戦闘時に士気を上げるのに、火を吹くギターをギュイーンと弾いて、数人が太鼓をドンドンドンドン叩いてるの。単なる移動中にもドンドン叩いてた気がしますが、一番大変な役割なんじゃないかと思いました。一応、アホか、といっておきます。

 トム・ハーディはメル・ギブソンほど眼光やカリスマ性はないですが、新たなマックス像として活躍していたと思います。鎖が繋がった状態でフュリオサ陣と格闘したり、タンクローリーを巡って様々な活躍をするところは、パワフルすぎてコントに見えるくらいの迫力でした。

 延々、心のガッツポーズ状態の傑作でした。

 2015年7月6日現在、imdb評価が8.5ポイントという、世界中が大好き状態です。


 終始タンクローリーで引っ張る潔さに感服。


(C)2014 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED
【出典】『マッドマックス 怒りのデス・ロード』/ワーナー・ブラザーズ

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