2012年10月21日日曜日

映画『トロール・ハンター』 ・・・「ダウンタウンのごっつええ感じ」を思い出します

●原題:Trolljegeren
●ジャンル:ファンタジー/ホラー
●上映時間:90min
●製作年:2010年
●製作国:ノルウェー
●言語:ノルウェー語/英語
●カラー:カラー
◆監督:アンドレ・ウーヴレダル
◆出演:オットー・イェスパーセン、グレン・エルランド・トスタード、ヨハンナ・モールク、トーマス・アルフ・ラーセン、ハンス・モーテン・ハンセン、その他小勢

 今年もあと2ヶ月ちょっとですね。とにかく、できるだけ色んな作品を観るのと、体を動かすように(笑)したいです。

【ストーリー】
 ノルウェーの山間。大学生のトーマス、ヨハンナ、カッレは、研究課題として熊ハンターの取材を行なっていた。ある日のこと、密漁者ハンスの存在を知り、彼に密着取材の許可を得ようとするが、速攻拒否されてしまう。それでも諦めない一行は、夜な夜な山に出向くハンスを追跡することにする・・・。



【感想と雑談】
 トロールハンターです。トロールを狩る人。ストレートなタイトルですね。一応、ファンタジーにジャンル分けされていますが、内容は現代のノルウェーを舞台に一般人が伝説の怪物と対峙する、というものです。こういう作品を待っていました。架空の舞台に剣や魔法というファンタジーはもういいです。
 
 開始早々、「あるフィルムが発見され、検証した結果、本物であると断定した。」というテロップが表示されます。なんだこれ、もう廃れたと思っていたPOV(Point of View:一人称視点)形式かよ。3人の大学生によって撮影されたトロールハントの一部始終の映像を、まんま映画にしたという設定なんですな。観る人によっては酔ってしまいそう。
 
 映像が始まってまず目に付くのが、風光明媚な山間の景色です。撮影時期にあえて選んだのか、暫くはどんよりした暗い雨空が続きますが、記録映像という体裁から目の前に広がる山続きの大自然が生々しく映えていて、これから起きることへの期待度も加速します。この大自然の素晴らしさ。さすがだぜ、ノルウェー。


 
 大学生トーマスらに突撃取材をされ、一言「失せろ」と吐く密猟者ハンスが燻し銀でカッコいいです。一瞬ビク付くトーマスですが、諦めずにハンスを追跡します。この後も、何度か取材を試みるもハンスの態度は変わらず。そんなハンスが一匹狼すぎて、段々と可笑しく見えてきます。やがて、山中でトーマスは何かに肩を噛まれ、ハンスはトロールの仕業であることを匂わせます。
 
 ハンスから取材の許可を得たトーマスらは、やがてトロールに遭遇します。この深夜の森、不気味な咆哮と木々のざわめきが近づいてくる辺り、まさに幼少の頃に抱いた恐怖がそこにありました。この緊張感はなかなかくるものがありました。遂に森の開けた場所に姿を現したトロール。頭が3つ付いています。なんだコイツ。

 トロールとはノルウェーに古くから伝わる妖精であり、一種のマスコット的存在なのだそうです。小型、大型、3つ頭、など様々なタイプがあるそうですが、基本的にブサイクなヒューマノイド怪獣です。

 ハンスの攻撃によってトロールは仕留められます。実はトロールの存在は政府ぐるみで隠蔽されており、ハンスはその唯一のハンターとして、ノルウェー中の山を巡っていたのです。処理後の場所には政府が駆けつけ、熊の仕業であるように偽装しますが、市民への「ロシアの熊がフィンランドとスウェーデンを越えてきたのです。心配すな。」という説明にだんだん無理が生じてきます。


 
 常に眉間に皺をよせるハンスは、日ごろの鬱憤を晴らす為、トロールの存在を取材を通して世間に暴露することにします。疲れてるみたいです。そんな、世間から非常に浮いた孤高のハンス。彼を追えば追うほど、先にも書きましたが、可笑しい空気が漂ってきます。なんかこのノリってどこかで見た気がする・・・。
 
 次のトロール退治では血液採取もすることになったハンス。突然、全身ブリキのロボットみたいな姿で登場し「いやな仕事だぜ」と呟き、巨大な注射器を持って一人突進します。そして、トロールに投げ飛ばされ、かじられ、地面に叩きつけられるハンス。駆けつけたトーマスらに「うー・・・少し体が痛むぜ」。死ぬだろ普通。そして「赤いボタンには触るなよ」と意味不明なことを言い、再度トロールに突進します。おかしいだろ!
 
 このノリ、思い出しました。松本人志です。昔のバラエティ番組「ダウンタウンのごっつええ感じ」で度々やってた、本人演じる様々な変人に、一般人やマスコミが巻き込まれていく不条理なコント。そして、本人が監督・主演した『大日本人』('07)なんかもそうです。まさにあのノリをビンビン感じてしまったのです。きっと、本作の作り手は、リスペクト松本人志であるに違いありません。
 
 作りものの記録映像を本物だと言い切り流し続ける本作は、伝説の妖精と孤高のハンターを題材にし、クソ真面目に描いたことで、観る人によってはただのフェイク作品だけでなくギャグ作品にも昇華するという、裏ワザを秘めた力作であると思います。私はブリキロボットのハンス登場で大笑いし、見事昇華しました(笑)。


 
 肝心のトロールの描写ですが、リアルなCGに、手ぶれ映像に同期したハメ込みもされていて、十分見られる映像になっていました。クライマックスに登場するトロールは必見です(笑)。
 
 やるじゃん、ノルウェー。
 

(C) 2010 FILMKAMERATENE AS ALLE RETTIGHETER FORBEHOLDES. ALL RIGHTS RESERVED.
【出典】『トロール・ハンター』/ワーナー・ホーム・ビデオ

にほんブログ村 映画ブログへにほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログパーツ

2012年10月8日月曜日

映画『エターナル 奇蹟の出会い』 ・・・カラオケを歌うミラ・ジョボビッチとロシア版少林サッカーです

●原題:Lucky Trouble
●ジャンル:コメディ/ロマンス/スポーツ
●上映時間:90min
●製作年:2011年
●製作国:ロシア
●言語:ロシア語
●カラー:カラー
◆監督:レベン・ガブリアーゼ
◆出演:ミラ・ジョボビッチ、コンスタンチン・ハゲンスキー、イバン・アーガント、ウラジミール・メニショフ、ガリーナ・ジョボビッチ、ローマン・マディアノフ、その他大勢

 10月に突入していました。衣替えですな。で、体育の日込みの3連休、皆さんいかがお過ごしでしょうか?全国的に天気もよさそうで、行楽三昧なのでしょうね。勿論、ここはインドア三昧。

【ストーリー】
 ロシア。小説家を夢見る教師のスラヴァは、ある日のこと車に轢かれるが、運転していたナージャに速攻で一目惚れ。付き合うことになった二人は、やがて婚約しモスクワで結婚式を迎えることになるが、スラヴァは式の前日に校長の策略によって足止めを食らってしまう。それは、少年サッカーチームの監督となり大会に出場するというものであった。一刻も早く結婚式に向かいたいスラヴァは、適当に少年らを集め、初戦での敗退を目論むが・・・。



【感想と雑談】
 パッケージ写真がなんとなく、ダイアン・レインっぽく見えなくもないですが、正真正銘、ミラ・ジョボビッチなのです。
 
 ミラ・ジョボビッチといえば、バイオハザードを中心に、SF、ホラー、アクション、サスペンス、そしてエロス、という殆ど気の抜けない作品ばっかに出演され、どこか痛々しい非現実的なヒロイン像だったのです。が、本作のパッケージを見た時、今まで無かった彼女のイメージに、期待が一気に膨らんでしまいました。紹介写真の全てにおいて、実にいい表情を見せていたからです。血肉もオッパイも皆無のこの自然な空気。これはイケると思いました。
 
 貧相なツラの教師スラヴァが横断歩道を渡っていると、信号無視の車が突っ込んできます。思い切り衝突され吹っ飛ぶスラヴァ。慌てて駆け寄り覗き込む女性ナージャが、スラヴァのボヤけた視点で映され、徐々に焦点が合ってくると、いましたそこにジョボビッチ。相変わらず美人だなこの人。


 
 一目惚れしたスラヴァは自分に過失があったと警官に言い張り、ナージャを無実にします。そんなスラヴァが気になったナージャは、同乗していたゲスな恋人ダーニャを放っぽって、病院へ直行。いい仲になった二人は、その後のオープニングタイトルとともに、はっちゃけたデートを繰り広げ、すっかり親密な関係になり、婚約までしてしまいます。
 
 オープニングで既にそんな展開かよ。むむむ、ちょっと想像していたのと違いました。事故るタイミングはそれでいいですが、二人の関係は紆余曲折を経て、せめて中盤あたりから互いが気になり出すようにして欲しかったですね。これだと、9割方の残りの時間をどーすんだよ、と心配してしまいます。が、実はこの作品、本筋はこの二人だけではなかったのです。

 なんだよこれは、ロシア版少林サッカーかよ。
 
 東の町パリチキで教師に就くスラヴァは、モスクワでの結婚生活をするべく学校に退職願いを出すも、お局校長は簡単に受理してくれません。スラヴァに残って欲しい校長は、少年サッカー大会の壮行会で、彼が地元チームの監督であると嘘をついてしまいます。更にはパスポート没収までされ、頭がテンパったスラヴァは、適当にホームレス少年を集めチームを結成し、ライバル監督の入れ知恵でわざと負け(笑)、さっさとモスクワへ旅立とうとします。


 
 しかし、路上を厳しく生き抜いてきた少年らに隙はありませんでした。相手を翻弄する動きとチームワークで大会を勝ち進んでいき、スラヴァのモスクワ行きはどんどん伸びていきます。そんなことは黙っておきたいスラヴァは、激しいウソを付きモスクワ到着が遅れることを都度ナージャに連絡。結婚式や披露宴を引き伸ばそうとナージャも大変忙しくなります。カラオケ歌ったりして。ここで何日も式場に足止めを食らってる来客がシュールで笑えます。
 
 少年サッカーチームとスラヴァのギクシャクした関係がドタバタ交えて改善していく辺り、どこかで見たような作風で新鮮味はあまりないですが、合間で一人奮闘するナージャを愛らしく演じるミラ・ジョボビッチが拝めたので全てヨシとします。ついでにナージャの母親役がミラの実の母親ガリーナ・ジョボビッチというのもポイントにしておきます。母親も女優だったとは知らなんだ。
 
 少林サッカー並のテクニックや少年らとの交流も見ていて楽しいので、あまり欲張らずにミラ・ジョボビッチと少年サッカーは分離して、どちらかに絞ってもよかったですね。
 
 それにしても、ミラ・ジョボビッチはお綺麗ですなあ。たしか、結婚して子供もいるのですよね。なのにこの美貌と体型だもんな。バイオハザードでのゾンビ退治もいいですが、これからは本作のような役柄をもっとやっていって欲しいと思います。


 
 そういえば、製作総指揮がティムール・ベクマンベトフなんですね。監督作の『ウォンテッド』('08)くらいしか観ていませんが、サッカー試合中の独特な映像センスは彼ならではなのでしょう。
 
(C) Ltd."Tabbak" all rights reserved.
【出典】『エターナル 奇蹟の出会い』/ファインフィルムズ

にほんブログ村 映画ブログへにほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
ブログパーツ