2011年12月30日金曜日

映画『刑事マルティン・ベック』 ・・・スウェーデン産の激渋な刑事ドラマです

●原題:Mannen på taket
●ジャンル:アクション/犯罪/ドラマ/スリラー
●上映時間:110min
●製作年:1976年
●製作国:スウェーデン
●言語:スウェーデン語
●カラー:カラー
◆監督:ボー・ヴィデルベルイ
◆出演:カール・グスタフ・リンドステット、スヴェン・ヴォルテル、トーマス・ヘルベルク、ホーカン・セルネル、ビルギッタ・ヴァルベルイ、その他大勢

 今年も終わりですね。色々と大変な年でありましたが、そんな年の最後を飾るのに選んだ作品がコレです。前回の記事は『刑事ジョン・ブック』でした。で、今回は『刑事マルティン・ベック』。おお、”刑事”と”ック”繋がりじゃないか、とプチ感動してますが、別に狙った訳ではないです。偶然です、偶然。

【ストーリー】
 スウェーデンはストックホルム。ある病院で患者が惨殺される事件が発生。殺人課のベテラン刑事マルティン・ベックは、被害者が同業のニーマン警部であることに動揺しつつも、彼が大勢から恨みを買うような人物だったことから、犯人の動機が復讐心にあることを確信する。やがて、地道な捜査から犯人を絞り込み、事件も解決かと思われた矢先、ストックホルム市内で大乱射事件が発生したとの連絡がベック刑事に入る・・・。
 


【感想と雑談】

 レンタル屋でふと目に入った作品。パッケージのデザインが、いい感じのレトロ具合。スウェーデン産の刑事ドラマです。ハリウッド産の同様のジャンルは腐るほど観てきましたが、ヨーロッパ産といえば『ダーティ・デカ まかりとおる』('77)というイタリア作品くらいしか観たことがありません。因みにこの『ダーティ・デカ~』は半端なくヘボかった記憶しかないです。
 
 さて、今回の刑事ドラマ。開始早々、夜の病院です。入院中のオッサンがふと横に目をやると、窓越しの暗闇に人間の目が浮かびます。オッサンをじーっと見てるの。くっきりと目だけが。おいぃぃ。このカットやたらと怖い。ここでオッサンよせばいいのに窓に近寄ると、飛び込んできた犯人に銃剣でメッタ刺しにされます。血の量も多くて生々しい描写。ヘタなホラーよりも恐ろしい展開です。因みにこの時の撮影、豚の血液を使ったのだとか。やたら色合いや固まり具合がリアルだったのも納得です。
 
 事件発生ということで主人公の刑事マルティン・ベックの登場です。若くてイケメンな刑事を想像していたのですが、これが見事にベテランのオッサン刑事。殺人課の他の刑事らも皆オッサン領域だったりします。そんな刑事らが腰を据え聞き込み調査を行なう様を、さり気ない動作を交えながら、警察内の人間関係を含めじっくり淡々と描いていきます。
 
 どちらかというと日本のサスペンスドラマに近いノリかな。まあそれよりも上をいく感じで、冒頭の刑事らの日常勤務にホンモノの麻薬常習犯を登場させたり(ちゃんと台詞あり)、警察署含め殆どをロケで撮影してたりと、現実性を追求した空気で充満しきっています。華も殆どないし。ヨーロッパ産特有の空気もあるのでしょうが、実際どこの国でも捜査状況ってこんな感じなんだろうなと思いますね。ところで、刑事の一人が下半身丸出しで登場し妻と合体するシーンがあったのですが、これぞスウェーデンってやつなんでしょうね。ボカシもバッチリだし。



 終始こんなペースかと思っていると突然、一発の銃声が鳴り響いて急展開に。犯人がストックホルム市内のビルの屋上から大乱射をおっ始めます。凄い緩急の付け方ですね。二部構成かよと思えるくらい。まさに静と動。静かだったカメラワークも刑事らの動向に合せて慌しくなります。この時の俯瞰で捕らえたストックホルムの町並みがカラフルで美しいこと。誰が見てもヨーロッパ作品であることがわかります。
 
 大勢の警官らが射殺され、ヘリコプターまで撃ち落されたりと、結構手に汗握る展開になりますが、ラストは意外にあっけない締めくくりに感じました。え、事件はそれで終わり?そしてベック刑事のその後は?詳しくは書きませんが、ヘタに盛り上げるよりも、こいうバッサリ感なラストを持ってくるのも、本作の魅力の一つなのかもしれません。
 
 これ原作は有名なシリーズ小説なんですね。作者はスウェーデンのマイ・シューヴァルとペール・ヴァールーの夫妻。他の映画化作品では『マシンガン・パニック』('73)もそうなんですね。これも面白かったな。昔から自分との接点があったんだと感慨深くなりました。って単なる勉強不足なだけか。
 
 70年代のスウェーデン作品は初体験でしたが、丁寧な刑事ドラマが味わい深くて、また大群衆パニックに実物のヘリコプターを落としたりするスペクタクルな見せ場まで押さえていて、意外な拾い物でありました。DVDには特典が付いていて、まだチラ見しかしていないので、今度じっくり観てみようと思います。


 
 さて、本記事で今年は最後となります。更新をもっと伸ばしたかったのですが、これはまた来年の目標にしようかと思います。
 今年も訪問頂いた皆様どうもありがとうございました。来年は皆様にとって良い年となりますように。


(C)1976 AB Svensk Filmindustri
【出典】『刑事マルティン・ベック』/紀伊國屋書店

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2011年12月17日土曜日

イタズラ vs イタズラ動画が笑えます


 たまたま見つけた動画なんですが、久々に笑えたのでちょっと紹介したいと思います。
 
 アメリカのカップルがお互いイタズラし合うだけのプライベート動画なんですが、シリーズ化とか結構凝った作りになっています。スポンサーでも付いているのかな。
 
 しかしまあ、そのイタズラの内容(笑)。豪勢な一戸建の中で同居してるっぽいカップルが、ハンディカムで隠し撮り、もしくは目の前でダイレクトに撮りながら、割と過激なイタズラ合戦やってるの。
 
 タイトルは『PRANK VS PRANK』。略してPVP(笑)。この二人、あんなにやり合って疑心暗鬼に陥らないのかな、とちょっと心配にもなりますが、まあ笑えるし楽しいのでどうでもいいです。

 (以下の動画は人によっては不快な気持ちになるかもです。一応ご注意下さい。)

『Chick Eats Wasabi Sandwich- Prank』
 彼女へのワサビと酢を使ったイタズラ。酢のところで盛大に笑ってしまいました。


『Surprise Haircut on Girlfriend』
 彼女への髪の毛を使ったイタズラ。ぶちキレるもイタズラと判明した時の反応がとても愛らしいです。


 その他、彼女による彼氏へのイタズラも半端でなかったりします。イタズラの域を超えてる気もしますが、エンターテイメントと割りきって笑ってあげましょう。

 幽霊の出ない『パラノーマル・アクティビティ』ですね(違。
 

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2011年12月11日日曜日

映画『刑事ジョン・ブック 目撃者』 ・・・ハリソン・フォードがアーミッシュと触れ合い、恋に堕ちます

●原題:Witness
●ジャンル:ドラマ/ロマンス/スリラー
●上映時間:112min
●製作年:1985年
●製作国:アメリカ
●言語:英語/ドイツ語
●カラー:カラー
◆監督:ピーター・ウィアー
◆出演:ハリソン・フォード、ケリー・マクギリス、アレキサンダー・ゴドノフ、ダニー・グローバー、ジョセフ・ソマー、ルーカス・ハース、ヴィゴ・モーテンセン、その他大勢

 なんと2ヶ月間も空けてしまいました。11月は完全スルーしちゃったな(汗)。せっかくの年末だしね、アホ画像で終わらせるのもあれなんで、久々に映画ネタで更新したいと思います。しかし、今年ももうクリスマスなんだ。早いよ時間経つの。

【ストーリー】
 アメリカはペンシルベニア州のアーミッシュ。夫を亡くしたレイチェルは息子のサミュエルと共にボルチモアの姉のもとへ出かける。途中とある駅のトイレで殺人事件を目撃してしまうサミュエル。担当することになった刑事ジョンは、レイチェルとサミュエル親子を証人として強引に連れまわし、事件の核心に迫る。それは警察内の麻薬汚職に絡む犯行であった。やがて犯人に襲われ大怪我を負ってしまったジョンは、親子をアーミッシュへ送り返したところで力尽きてしまう。レイチェルの必死の看病によって助けられたジョンは、暫くアーミッシュに身を隠すことにするが・・・。



【感想と雑談】

 初めてテレビ放映で観た時、もの静かな展開にただ見入ってしまったのを覚えています。一人の刑事とアーミッシュの女性が恋に堕ちて行くだけなんですが、このアーミッシュというのがミソだったようです。今回、DVDで見直すことにしました。初の完全版の鑑賞。
 
 改めて実感。地味ですが、とにかく素晴らしい作品。

 冒頭からの自然溢れる大地に黒尽くめの男女が現れる静かなシーンはアーミッシュの質素な生活様式を表したもので、やがて旅立つ親子の乗る馬車がトロいため途中からトラックや乗用車らが後ろに登場するところで、未だ現代文明からかけ離れたコミュニティーであることがわかります。
 
 暫くして刑事ジョン役ハリソン・フォードの登場。ここ最近、爺な姿しか見ていなかったので(笑)、その若々しさにちょっと感動。この頃だと『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』('84年)あたりがカッチョよかったよなあ。そんなイメージがあるから凄く頼もしく見えるのですが、残念なことにすぐ撃たれて死にそうになる刑事だったりします。まあ、そんなハリソン・フォードも悪くないし、倒れることで後の素晴らしい展開に繋がっていく訳です。


(まだ居心地悪そうな刑事ジョンとアーミッシュ女性レイチェル)
 
 押収した麻薬を着服する汚職刑事の一人をダニー・グローバーが演じているのですが、彼はなんと言っても『リーサル・ウェポン』シリーズのマータフ警部じゃないですか。それが目ひん剥いてナイフ振り回したりするから衝撃。どう見ても悪人に見えない。でもこういう意外性もウリの一つとして挙げられるのかも。この汚職刑事の銃弾にジョンは倒れてしまいます。

 怪我を負ったジョンは、レイチェル一家の世話を受けることになります。アーミッシュでの生活の始まり。アーミッシュとは、元々ドイツで迫害されアメリカに渡ってきたキリスト教一派の民族で、聖書の教えを純粋に守ることから必要最低限の文明のみ受け入れ質素な生活を営むコミュニティーのことであり、いたる州に存在しているそうです。本作を観て始めてアーミッシュを知ったのですが、その特異な存在が本作を最も印象付ける要素となっています。

 アーミッシュの未亡人でもあり母親レイチェル役を演じるのはケリー・マクギリス。特別美人でもないんだけど、そのリアルさや落ち着き具合。表情から伝わる心の微妙な変化。この女優さん、最高です。これ以外の出演作(『トップガン』('86年)とか)は未見なのですが、本作の彼女だけで十分な気がします。


(狙ったのか偶然かは不明ですが、アーミッシュとジェット雲の対比が印象深いカット)
 
 アーミッシュでは元々、そんなレイチェルに思いを寄せる一人の男がいるのですが、それを演じるのがアレキサンダー・ゴドノフ。大好きな『ダイハード』('88年)でテロリストのNo2役を演じていたので、またもやここでイメージ違いの配役が(笑)。本作では陰からレイチェルとサミュエルを見守る心優しい男で、ジョンがやってきてからの複雑な心境がジワジワと伝わってきます。
 
 アーミッシュでの一大イベントとして、大勢の男らによってある納屋作りが行なわれますが、ジョンもそれに借り出されてしまいます。大工が得意という設定で要領よく作業をする姿は、実際ハリソン・フォードが元々大工だったことが脚本に生かされてるようです。で、この納屋というのが共同利用の為とかでなく、ある新婚夫婦の為に作られたということで、ここでもアーミッシュの隣人を愛するという生活様式の一部が描かれてる訳ですね。そうそう、この納屋作りのシーンにヴィゴ・モーテンセンを発見。出てたのかよアラゴルン。また若いんだなこれが。


(インディ、アラゴルン、テロリスト、夢の三大共演)
 
 自分と息子を命をかけて守ってくれただけでなく、自由からくる楽しさまで伝えてくるジョンに、レイチェルは惹かれていきます。自動車のラジオから流れる音楽に合わせ、二人が手を取り歌い踊るシーンは印象的で、その後にジョンもレイチェルを完全に意識してしまうのですが、安易な流れにならないところが実にニクイです。二人が無言で見つめ合うところは圧巻といえましょう。
 
 どうすんだこの二人と思っていると、先の汚職刑事ら3人がジョンの居所を突き止め、口封じにやってきます。ダニー・グローバーはやっぱり悪人に見えませんが(笑)。ジョンは機転を利かせながら3人を逆に追い詰めていきます。

 事件も解決し、アーミッシュに留まる理由もなくなったジョンは、最後の決断を迫られます。ラストにレイチェルのことをどう思いどう行動するのかは、観てのお楽しみとしておきましょう。だいたい想像つくかと思いますけどね。とにかくラストのラストまで、いいシーンの連続だったなと思います。

 調べてみれば高評価で、ずいぶん愛されてる作品というのがわかりました。ただ肝心のアーミッシュには必ずしも好意的には取られていないそうです。仕方ないかもですね。しかし、このご時世、アーミッシュのような生活様式をちょっとは見習うべき時期がきているのかもしれません。
 

(C)1985
【出典】『刑事ジョン・ブック 目撃者』/パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン

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