2010年12月25日土曜日

映画『アバター・オブ・マーズ』 ・・・例の3D超大作のパチもんかと思いきや

●原題:Princess of Mars
●ジャンル:SF/スリラー/戦争
●上映時間:93min
●製作年:2009年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:マーク・アトキンス
◆出演:アントニオ・サバトJr、トレイシー・ローズ、マット・ラスキー、チャコ・ヴァダケス、その他大勢

 クリスマスですね。皆さん盛り上がっているのでしょうか?今回は前々から気になってたSFファンタジー作品です。クリスマスとは100%無縁です。出演陣を見てビビビときた人は大正解です。

【ストーリー】
 現代。アメリカ軍特殊部隊のジョン・カーターは中東のどっかで任務中、仲間の裏切りから重傷を負ってしまう。かろうじて意識のあるジョンにアメリカ軍が告げたのは火星探索の命令。地球の代替惑星の探索に躍起になっていたアメリカ軍は、担ぎこまれたジョンに白羽の矢を立てたのだ。やがて謎の技術で体外離脱したジョンは火星に降り立つ。しかし、そこでジョンが目にしたのは、覇権争い真っ最中のヘリウム王国とサーク族の二大勢力であった・・・。



【感想と雑談】
 これ、実はちゃんとした原作が存在してるんですね。原題は『Princess of Mars(火星のプリンセス)』。1911年の作品だそうで、かなり年季が入っています。日本がデザインした小説の挿絵が海外でも人気とか、色々と歴史は深いようですね。でも、映画化作品が配給によってこんなタイトルとデザインにされては、どう見てもパチもんの王様です。実はリリース時から気になってましたが、旧作扱いになるまで待ちました(笑)。

 火星で空気製造の重要性を訴えるヘリウム王国と単に覇権欲しさで野蛮な行動をとるサーク族の争いに、地球から体外離脱してきた主人公が巻き込まれるという展開は、なんだか例の3D超大作を思わせるものがあります。原作の立場からするとこれはパチもん大逆転になるのでしょうか。やったぜ『アバター・オブ・マーズ』。

 と、心のガッツポーズをかましたかったのですが、残念ながら本作は色々と負けてしまってます。とにかくスカスカです。

 雪山を空撮から捉えた壮大なオープニングにワクワク度が急上昇するも、本編に入ると残念度が一気に急上昇。中東のどっかの暑そうな砂漠で特殊部隊の主人公ジョンが登場します。オープニングの雪山は一体なんだったのか。作戦上、隠密行動をとるジョンですが、あまりにも人気を感じない隙間だらけの展開です。オープニングから期待できる展開との激しい落差。主人公ジョンを演じるのは『ビッグヒット』('98)で殺し屋チームの色男を演じたアントニオ・サバトJr。本作でも抑揚のない色男ぶりを発揮。

 ジョンはどうやって火星に移動するのか。例の3D超大作でも科学的な説明は無いものの見せ場としては十分成り立っていましたが、本作でもある意味負けてはいません。暗闇の中、大怪我したジョンの目の前でライトアップされた上司が言います。「火星を調査して欲しい。キミはじきに死ぬが、この16GBのUSBメモリを使って再構築するから安心したまえ。」。秋葉原で投げ売りしてそうなUSBメモリ。こんなんで宇宙を行き来できるのか。


(お約束のCGモンスターも登場します。それと野次馬が二人)

 そんなこんなで、たぶんUSBメモリでデータ化されたジョンは、あっと言う間に飛ばされてしまいます。で、気が付いたら火星の砂漠。どうやって体を再構築したのか。そんなことはお構いなしに、バツグンの跳躍力が付いたジョンは30mくらいをひとっ飛び。この下半身に関する変化も、例の3D超大作にありましたね。

 さて、肝心の火星のプリンセスです。実は本作を見るきっかけとなったのがこの配役でした(笑)。ヘリウム王国のプリンセスにして絶世の美女、デジャー・ソリス姫を演じるのが、あのトレイシー・ローズなのです。出ました。ポルノ絶好調の時に年齢詐称の問題で業界を去った伝説の女優です。その後は一般女優として再出発し、様々な作品に出演されてます。

 プリンセス役をやるには貫禄が付き過ぎという問題もトレイシー・ローズなら許せます。結構な歳なんですがストライクゾーンにします。トレイシー・ローズの今の姿が拝めるだけでもヨシとしなければなりません。本作を観た後にジョン・ウォーターズ監督の『シリアルママ』('94)を観たのですが、これにもトレイシーは出演してました。この頃は若くて可愛かったですが、本作でもなかなかのものです。B級女優になってる気がしないでもないですが、いいんですトレイシー・ローズなら。

 作り手がトレイシー・ローズに舞い上がったせいか、本作はヘッポコ演出の特盛り状態です。例えばプリンセスを乗せた飛空挺を発見するや即攻撃に移るサーク族。遠方から吹き矢みたいなライフルでペコペコ撃ちます。3人くらいで。飛空挺は飛空挺で頑丈そうなのに火を吹いてヤバイ状態に陥ります。それを見たサーク族のリーダーは「よし、フックを投げろ!」と手下に命令。飛空挺に向けてブン投げられたフックは、思い切り届きませんでした。コントかよ。全体的にローテク文明なので人手に頼る点が多しです。


(どっかで見た形の飛空挺。本作はスターウォーズ/EP6の香りが漂ってます)

 また、サーク族に捕まったプリンセスは拷問にかけられます。仰向けにされたプリンセスのヘソの上にゴボゴボ煙を吐くフラスコをかかげる拷問係(露出度の高い女)。フラスコをよく見るとドライアイスの塊が数個。拷問係は中身をブチまけることなく体をウネウネしてるだけ。やがて助っ人の乱入で救出されるプリンセス。フラスコは一体なんだったのか。

 色々と問題を抱える作品ですが、実はところどころでハッとするシーンもあったりします。先に挙げたプリンセスを乗せた飛空挺が登場するところや、空気製造設備を遠方から捉えた構図なんかは、私のお気に入りです。どっかで見た気がするのは、それが『スターウォーズ/EP6』とそっくりだからでしょうか。でもパクリ元かと思わせるその『スターウォーズ/EP6』も、この火星のプリンセスに影響を受けていたという事実。

 クライマックスは空気製造設備で迎えることになります。あまりカタルシスは得られませんでしたが、その後のジョンとプリンセスの関係があの様に締めくくられるのはちょっと意外で、心に残る結果となりました。

 とは言っても、全体的に格安イメージなので、期待度ワクワクで観た人は体を壊すかもしれません。いないかそんな人。原作ファンの人はどうなんでしょうか。なんでも今度ディズニーも映画化に着手するそうです。ゴージャス度が急上昇しそうですが、勿論プリンセス役にはトレイシー・ローズを希望します。起用して下さい。ディズニーならやってくれます。きっと。

 という訳で、トレイシー・ローズの最近のお姿です。懐かしい人、挙手。

 トレイシー・ローズ
 最も目にされてる一般作品は『ブレイド』('98)なんじゃないでしょうか。ビッチなバンパイア役がハマってました。一時、歌手としても活躍されていました。


 今年最後の記事になるかな。訪問、応援コメント頂いた皆様、どうもありがとうございました。来年もこんな感じで続けていきたいと思いますので、またよろしくお願いしますね。

 それでは皆様、良いお年をお迎え下さい♪

(C) 2009 The Global Asylum Inc.
【出典】『アバター・オブ・マーズ』/アルバトロス株式会社

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2010年12月11日土曜日

忘年会の時期ということで、またまたAtomik Harmonikです

年末のこの時期といえば忘年会ですね。皆さん酒をしこたま飲んで楽しんでおられるかと思います。私も先日、そんな一時を過ごして参りました(酒強くないんですけどね)。

 ということで、そんな時期に相応しい曲を紹介したいと思います。それはスロベニアが誇る(またかよ)音楽ユニットAtomik Harmonikの『Pivo mi Dej』という曲。PVは雪山を舞台にいつものお色気コントが爆進してますが、テーマはどうやら"ビール”のようです。曲名の意味は直訳で「ビールは私の家具」あたりになるようですが(笑)、これはきっと「ビールも家具同様に生活する上でとても大事なもの♪」というビール好きの思いを表しているのでしょうね。ヨーロッパならではだと思います。
 
 PVでは常連と思われる二枚目オッサンが、ゲレンデや山小屋で女の子らに絡むいつものパターンですが、メンバーのアコーディオン担当が変わっていたり、寒々とした雪山を舞台にしているあたり、やけに新鮮に感じるのでした。彼らはいつもポカポカ陽気の春っぽいイメージだったからなあ(笑)。
『ATOMIK HARMONIK - Pivo mi dej.wmv 』

  
 んで、同じ曲にビール!な画像が並べられた動画も紹介しておきます。これってスロベニア?ドイツ?しかし、ホント楽しそうだよなあ。いっぺんあちらで飲んでみたいもんです。あんなデカいジョッキで飲んだら一発な気もするけど(笑;)。
『Pivo mi dej ATOMIK HARMONIK』

 
 最近、こんなネタが多い気がしますが、あまり気にしないことにします。皆さん、飲みすぎには注意しましょうね。
 次はクリスマスか・・・。

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2010年12月5日日曜日

映画『ノウイング』 ・・・地球の一大事にニコラスが右往左往します

●原題:Knowing
●ジャンル:SF/ドラマ/ミステリー/スリラー
●上映時間:121min
●製作年:2009年
●製作国:アメリカ
●言語:英語
●カラー:カラー
◆監督:アレックス・プロヤス
◆出演:ニコラス・ケイジ、チャンドラー・カンタベリー、ローズ・バーン、ララ・ロビンソン、ベン・メンデルソーン、その他大勢

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 気が付いたら12月に入ってました。クリスマスもあっという間に来るんでしょうかね。それにしても1年経つのが早いよなあ。
 さて、今回は昨年の割と新作になります。ある意味凄かったので記事にすることにしました。

【ストーリー】
 アメリカ。マサチューセッツ州のある小学校で50年前に埋められたタイムカプセルがお披露目される。中身は当時の生徒らが未来に託した絵画であった。当時担当した元教師のババアがウハウハ絵画を収めた封筒をバラまく。大盛り上がりの中、生徒の一人ケイラムはやっと封筒を手にすることができたが、中身は絵画ではなく一面に数字の羅列が書き綴られた紙切れであった。ケイラムが持ち帰った紙切れを父親の物理学教授ジョンが何気に調べてみると、数字の一部が過去に起きた大事件の日付や被害者の数と一致してしまう。他の数字も同様であった。やがて数字が未来のある日付を差していることに気付くジョン。50年前に埋められた数字の羅列が未来の事件を予言していたことに大混乱するジョンであったが、その後に息子ケイラムを巻き込む大事件まで起きることなど知る由もなかった・・・。



【感想と雑談】
 昨年のド派手な『2012』('09)とやたら被ってた印象がありますが、蓋を開けてみたらこっちもドえらい作品でした。

 一応、デザスター作品の部類に入っているようですが、どう見ても他の要素が占める割合がデカくなってます。デザスターものって、自然災害や天変地異が何らかの形で前面に描かれると思うんですが、本作はそんな気配はこれっぽっちもなくて、いきなり登場するのが顔色の悪い少女。しかも、夜中の学校の地下室に閉じこもって「囁きを止めて」とか言ってる。血だらけになって。ホラーかよ。

 主人公が物理学の教授なので、どことなくデザスター要素を思わせたりしますが、コイツがまた暗い。これっぽっちも笑わない。生徒に質問を投げかけておいて勝手に妄想にふけったりします。実は、ある事件で妻を失ってしまい、それが影響して人生どうでもいい性格に変わってしまったようです。また、その子供が耳が悪くて、最近やたらと妙な雑音が聞こえるとか言ってます。とにかく不安だらけのファミリーです。

 この物理学教授のジョン、先の少女がタイムカプセルに封印した紙切れに振り回されっぱなしです。振り回されプレイ。50年前に書かれた数字が未来に起きる数々の大事件を示していることが判明した時、ジョンはその数字の中に数日後の日付が幾つかあることに気付きます。ヤベえとばかりに行動に移りますが、予兆がある訳でもなく、紙切れ一枚の単なる数字ごときに周囲の人達は耳を貸したりしません。やがて、数字が示した通りの大事故が発生します。

 中盤の見せ場として、2つの大事故が描かれますが、この描写は実に見事でした。1つは旅客機の墜落事故。ワンカットの長回しとCGの組合せで、実に臨場感ある映像になってます。せっかく脱出できたのに爆炎に包まれる乗客達。爆発ですっ飛んでくる破片。本当に墜落させたんじゃないかと思える程の生々しさです。もう1つの事故は伏せておきますが、とにかく阿鼻叫喚の現場には嫌な気分に浸れること必至です。たぶん『ダイハード3』('95)をリメイクするとこうなると思います。


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 しかし、肝心の見せ場も偶発事故にしか見えずデザスターものには結びつかない印象です。実は太陽フレアの異常発生が後に判明するので、この影響で電子機器が暴走したという設定なのかもしれませんが、殆どそんなことには触れていません。結局、数字から直近に起きる事件を予見したにも関わらず、ジョンはそれを止めることもできず、ただ呆然と見守り立ち尽くすだけ。それにしても少女に数字の羅列を書かせた意味はいったい何だったのか。

 どうすんだよこの展開・・・とか思っていると、突然とんでもない方向に向かいだします。冒頭の奇怪な少女からして嫌な予感全開だったのですが、中盤にジョンが謎の男と対峙する場面で、終わったことがはっきりしました。ただの自然崩壊に向かう作品ではなかったのです。いったい何が始まるのか・・・これも伏せておきたいと思います。(って、他では散々ネタばらしされてるようですが)

 デザスターものには「地球自体の脅威」と「地球外からの脅威」の大きく2つの脅威があって、本作を当てはめるとすれば後者に入ると思うのですが、こんな展開にするなら初っ端から豪快な人類脱出計画でも立てて地球外からの脅威に対抗する方がよかったです。『2012』との差別化もあったのかもしれませんが。東宝の『妖星ゴラス』('62)では地球外からの脅威に対抗する為、巨大ジェットで地球を動かすという荒業をやってましたが、正直これのリメイクをやったらガッツリ応援できると思っております。スペクタクルな展開にはワクワクーですよ。

 ニコラス・ケイジ演じる物理学教授ジョンが、我々は目的があっての産物なのか、それともただの偶然の産物なのか、と問う場面があります。本人は偶然の産物だと言い切りますが、本作はまさにそんな視点で地球の存在価値を描いた作品なんだと思います。アレックス・プロヤス監督のセンスは面白いと思いますが、今回はさすがに面白すぎて開いた口が塞がらない結末となるのでした。




 たぶんこれが本作の元ネタになってるんだと思います。


 ニコラス・ケイジはいいヤツだと思います。


(C) 2009 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
【出典】『ノウイング』/ポニーキャニオン

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